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「あえて」という選択

column vol.1197

2023年5月8日コロナが2類から5類に移行され、あれから1年が経ちました。

もちろん、コロナは未だこの世界に存在しており、それは忘れてはいけないものの、アフターコロナの世界が広がってきています。

メディアでも一周年ということもあってか、様々なコロナ関連のニュースを報道。

その中にはビジネスに関するものも散見されます。

個人的に注目したのが、京都にある「綿善旅館」のおかみ・小野雅世さんへのインタビュー記事。

〈Wedge / 2024年4月24日〉

創業して194年という老舗旅館ですが、実に革新的な発想でコロナ禍を走り抜けたのです。

それは、一般常識に囚われない「あえて」の選択

この記事に刺激を受けたので、本日はその内容を共有しつつ、「あえて」を感じるその他のビジネス事例をお届けして参りたいと思います。

ぜひ、最後までお付き合いくださいませ。


“逆張り” でピンチをチャンスに

小野さんは、大学卒業後、三井住友銀行に勤務し、11年春に家業に入り、数々の壁を乗り越えていらっしゃいます。

凄いと思ったのが

●従業員1人当たりの年収を1000万円にする
●上位下達の旧来型組織をなくす

など、そうした理想を明言できる力。

そして、従業員の皆さんに対しても、最初は心の距離があったものの、努力の甲斐あって縮めることに成功。

まさに、“スーパーおかみ” というお人柄なのです。

そんな小野さんに2020年、襲ってきたコロナという試練

「宿泊客がいなくなったのですから、売り上げがありません

と、動揺する従業員の皆さんに対し、旅館のキャッシュフローの状況を丁寧に説明

まずは安心感を与えます。

その上で “逆張り” の一手を打ったのです。

な、なんと、コロナの不安が広がる状況において、積極的な人財採用を実施…

“従業員数を増やす” という選択をとったのです…(汗)

その理由について、小野さんは

「コロナ禍であっても、私には『お客様は必ず戻ってくる』という自信がありました。綿善旅館の創業は1830年、天保元年ですが、直後には天保の大飢饉がありました。それ以降も、幕末維新の動乱戦争など、いくつもの危機を経験してきました。戦争による影響で旅館の経営が苦しかった時には、祖父母らの知恵で、大学生の下宿として旅館を活用していたこともあったそうです」

と、これまでの旅館の歩みを挙げています。

過去のデータから未来を予測

まさに金融の世界で生きてきた実績を発揮したというわけですね。

結果、コロナ禍で人員削減したため、需要が戻った今になって困っている業種・業界が多い中、綿善旅館の “逆張り” 判断「吉」と出ました。

そして、他にも様々な策を編み出しながら、コロナの3年間を乗り切った小野さんは

「終わってみれば、めちゃくちゃ楽しいコロナ禍でした」

と振り返っています。

改めて勇気前向きな気持ちが大切だと感じますね。

優秀な営業担当にあえて「売らせない」

経営の神様と呼ばれた稲盛和夫さん

大胆さと細心さをあわせもつ

その重要性を語っていらっしゃいました。

小野さんの勇気のある選択にも、そうした緻密な計算がベースがある。

こうした事例として、もう1つお届けしたいのが、今、飛ぶ鳥を落とす勢いで売上を伸ばしている不動産会社「オープンハウス」の選択です。

同社では、優秀な営業担当に、あえて「売らせない」努力を行っていることをご存知でしょうか?

〈ITmediaビジネスオンライン / 2023年12月4日〉

2023年9月期決算で「売上高1兆円」を突破し、「営業力最強」のイメージを獲得したオープンハウスですが

…ゆ、ゆ…優秀な営業担当に売らせない…とは、…ど、どういうこと…?

…と疑問が生じてしまいます…😅

もちろん、優秀な営業担当の方が活躍しながらも、いわゆる「属人的な仕事」にならないように同社は努めているのです。

不動産業界は、「個人の成績」が重視されり、社内での競争意識が強い傾向にあります。

もちろん、そうした面の良さもありますが、一方で社員が個人プレーを重視し、お客さんやノウハウを囲ってしまうというデメリットもあります。

そこで、オープンハウスが行っているのが「チーム制」

これは、マネジャー3人ほどの営業担当を抱え、チームで売り上げを追うというカタチ。

つまり、チームみんなの成果の総和が評価されるということです。

そして、そのチーム制を支えるのが営業支援ツールの「SFA(Sales Force Automation)」

各社員はSFAには

●いつアポイントメントが取れたか
●どんな物件を案内してどういう反応を得られたか

など、詳細な情報を登録しています。

これをチーム内で共有し、営業の精度を高めていっているのです。

データ営業担当の知見が集約されるから、自ずと「売れる家」が見えてくる

オープンハウスは製販一体なので、データや知見が商品づくりにも活かされるわけです。

これらにより、営業担当の能力に依存せず、会社全体として売れる仕組みを築き上げていく

「売上高1兆円」は、そうして生まれているのです。

業界の常識を打ち砕く大胆な経営方針緻密な設計あってこそ、ということが伝わってきますね。

「長時間居座る客」をあえて歓迎

業界の常識に囚われない経営を行っている企業ということでいえば、スターバックスが有名です。

一般的に飲食店は、お店の回転率を上げて利益を出したいわけですが、スタバでは、あえて長居を歓迎

むしろ、コンセント無料Wi-Fiなど、長時間過ごせる設備が整えられています。

〈PRESIDENT Online / 2024年3月13日〉

では、なぜスタバはこのような選択をしているのでしょうか?

その答えは

「私たちは空腹を満たす仕事をしているのではない。 魂を満たす仕事をしているのだ」

という哲学にあります。

つまり、喉やお腹を満たす以上に「心を満たす」

商品を提供することが目的ではなく、商品という手段を通して感動を提供する。

だからこそ、常識に囚われることなく

「居心地のよい時間」

という価値にふさわしい選択肢を選べるのです。

もちろん、ビジネスですから、ちゃんと利益を生み出すことも大切。

そこでポイントになるのが、ピーター・ドラッカーさんが提唱する「最小利益」という考え方です。

これは、企業が生存し継続的に成長するために必要な最低限の利益のこと。

企業は単に利益を最大化するだけでなく

継続的な投資と革新のために必要な資金を確保する最小限の利益を稼ぐべきだ

という考え方を重視する。

これにより、企業は市場の変動や競争の激化に対しても柔軟に対応し、長期的な生存と成長を目指すことができます。

スタバは理想を軸に経営を最適化できている。

まさにブランディングのお手本という事例ですね😊

〜ということで、本日は一般的な常識ではなく、あえて違う選択肢をとっている事例をご紹介して参りました。

その裏には、考え尽くされた “思考のスパーク痕” が見られます。

ビジネスを推進する上で、大いなるヒントになりそうです〜

本日も最後まで読んでいただき、誠にありがとうございます。

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