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【月次更新】デジタル証券(ST)市場のファクトデータ図解を公開します(24年4月)

こんにちは、プログラマブルな信頼を共創したい、Progmat(プログマ)の齊藤です。

2024年は、年次の解説ではまとめきれないレベルでのST市場急成長が予想されるため、2024年1月より、最新状況を月次でまとめて解説しています。
noteでの解説に加え、一連のスライドについてもお手元で参照できるよう、全公開しています。

ということで、通算21回目の本記事のテーマは「【月次更新】デジタル証券(ST)市場のファクトデータ図解を公開します(24年4月)」です。

※当然ながら、個別案件の投資勧誘等を行うものではありませんので、ご留意ください


サマリ

2024年4月に公開(ローンチ=有価証券届出書提出)されたST案件は、全部で3案件でした。

  • 【不動産ST】三井物産のデジタル証券~浅草・まちなか旅館~ (譲渡制限付)

    • AuM32億円

    • 運用期間5年

    • 三井物産デジタル・アセットマネジメント(MDM) & 三菱UFJ信託銀行 & Progmat

  • 【不動産ST】トーセイ・プロパティ・ファンド(シリーズ3)市ヶ谷(デジタル名義書換方式)

    • AuM37.5億円

    • 運用期間5年

    • トーセイ & 東海東京証券 & 三菱UFJ信託銀行 & Progmat(トーセイ×東海東京としては初の「受益証券発行信託スキーム」案件!

  • 【不動産ST】いちご・レジデンス・トークン-西麻布・代々木・八丁堀・上野・門前仲町・阿佐ヶ谷・金町-(デジタル名義書換方式)

    • AuM31.5億円

    • 運用期間4.8年

    • いちご & SBI証券 & 三菱UFJ信託銀行 & Progmat

「ST案件一覧」情報はこちら☟(今回から本文&リンク先スライドに掲載

不動産ST案件一覧
債券ST案件一覧
金銭債権ST案件一覧

「ST銘柄」情報はこちらから☟(CoinDesk JAPANさん特設サイト)

ファクトデータ図解のスライド全量はこちらで公開していますので、リンクを置いておきます☟


ST市場全体

アクティブ案件(ローンチ後~償還前)の総額は、2,451億円を突破する見込みです。

ST案件規模の推移

24年3月ローンチ済み(発行は24年5月/6月予定)の2件に加え、24年4月ローンチ(発行はいずれも24年5月)の「不動産ST」+3件により、今年度1ヵ月目で新規ST案件は100億円を突破見込みです。

新規ST金額内訳

今月は、動きのあった「不動産ST市場」についてアップデートします。


不動産ST市場

発行体別分析

4月は、既存のMDM&トーセイ&いちごで1件ずつプラスとなっています。

不動産ST|発行体別|新規件数

新規組成規模としては、いずれも30億円台の案件、3案件合計で100億円程度ですが、FY2024の1ヵ月目として順調な滑り出しとなっています。

不動産ST|発行体別|新規組成額

MDMは不動産ST組成件数が12件となり、初めて最古参であるケネディクスを件数ベースでは超過しました。(金額ベースではケネディクスは不動のトップ)

不動産ST|発行体別|受託態勢

MDMで三菱UFJ信託銀行に+1件(9件目)、いちごで三菱UFJ信託銀行に+1件(4件目)、トーセイで三菱UFJ信託銀行に+1件(初協業)、新たな信託組成を委託しています。
(これにより、三菱UFJ信託銀行が受託で入っていないのは、”製造/管理一体モデル”のりそな銀行のみ)

ここで、トーセイのグラフに注目いただきたいのですが、4件のうち3件は「他(GK-TK等)」(グレー色)となっています。

過去記事でも解説のとおり、ST化する際に用いるSPV(Special Purpose Vehicle、法的な器)にはいくつかの種類があります。
「権利移転の法的安定性」と「個人投資家の経済合理性」の観点で「特定受益証券発行信託(特定JS)」が比較優位なため、三菱UFJ信託銀行(当時のProgmatチーム)がこの手法を用いた「不動産ST」を開発してから一貫してこの手法が主流です。

ST化に用いるSPV比較(再掲)

より具体的には、「GK-TK」を用いたST化では、STの移転に際してプラットフォーム(≒電子情報処理組織としてのブロックチェーン)上の記録のみでは「第三者対抗要件」を満たすことができないため、別途公証役場で確定日付を取得したうえで発行者宛の通知等が必要であり、かつ配当金課税や譲渡損益課税が「総合課税」のため、一定の所得金額以上の個人投資家にとっては「申告分離課税」よりも不利になる等、「特定JS」と比較すると相対的に非効率/不利な内容となっています。

前述の図表「不動産ST|発行体別|受託態勢」のとおり、他AMは1案件目から「特定JS」であった一方、トーセイのこれまでの案件はいずれも「他(GK-TK等)」でしたが、4月にローンチした三菱UFJ信託銀行との協業案件により、全AMが「特定JS」スキームを採用したことになります。

不動産ST|発行体別|販売態勢

4月は、MDMが自社で+1件(7件目)新たなST案件販売を実施し、いちごがSBI証券に+1件(4件目)、トーセイが東海東京証券に+1件(4件目)新たなST案件販売を委託しています。

KDXがST取引実績のある証券会社(販路)を拡大している一方、MDM≒製販一体、いちご≒SBI証券、トーセイ≒東海東京証券、と特定の協業/販売パターンで成熟化している傾向も見て取れます。

受託者別分析

4月は、三菱UFJ信託銀行が+3件、新規受託しています。
1ヵ月の間で3件同時にローンチ前後の案件組成/受託事務を執行可能といえ、量産化態勢も成熟化してきているといえそうです。

不動産ST|受託者別|受託件数

4月は、三菱UFJ信託銀行が+101億円、新規受託しています。
FY2023では、みずほ信託銀行/三井住友信託銀行/りそな銀行が1件当たりの受託規模が非常に大きい案件によりシェアを伸長していましたが、三菱UFJ信託銀行は金額多寡問わず受託実績を積み重ねているといえそうです。

不動産ST|受託者別|受託金額

仲介者別分析

4月は、SBI証券が1件、東海東京証券が1件、MDMが1件、新規で取扱しています。

不動産ST|仲介者別|取扱件数

4月は、SBI証券が単独で+31.5億円、東海東京証券が単独で+37.5億円、MDMが単独で+32億円、新規で取扱しています。

不動産ST|仲介者別|取扱金額


プラットフォーム

4月は、Progmatで+3件(いずれも不動産ST)、新規ST案件の取扱が増加しました。Progmatの取扱件数は26件で、最大規模を維持しています。

プラットフォーム|アセットタイプ別取扱件数

4月は、Progmat×SBI証券が+1件で大和証券と並んで最大の8件、Progmat×MDMが+1件で大和証券/SBI証券に次ぐ6件、これまでADDXやHashDasHを利用していた東海東京証券のProgmat利用が先月に続き+1件で全2件と急速に伸長し、証券会社の色や特定の募集形態の縛りがない、万遍なく利用されるネットワークを維持しています。

プラットフォーム|仲介者別利用件数


おわりに

今回も淡々とファクトをまとめているので、スライド中心にサラッと読めたのではないかと思います。今回からグラフだけでなく「ST案件一覧」も掲載してみたので、よりお役に立てると嬉しいです。

翌月以降も動きがある限り継続しますので、毎月はじめに現状をクイックにおさえる一助になりましたら、幸いです!

テキストではなく音声でのやさしい(?)解説は、CoinDesk JAPANさんの「CoinDesk JAPAN Talk」(月次のRWA回)で語りますので、聴いていただければと思います。(リアタイだけでなく、アーカイブ録音も公開されます!)

第1回のアーカイブ

https://twitter.com/i/spaces/1gqxvQMbkXQJB?s=20

第2回のアーカイブ

https://twitter.com/i/spaces/1ypJdkAnlygGW

第3回のアーカイブ ←New

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