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映画「ミンボーの女」の感想

オススメ度🌟🌟🌟🌟
総合採点 3.7

日々ヤクザ達のたまり場となり彼らからゆすりと恐喝の格好のカモになってしまったホテルヨーロッパ。状況打開の為に経理部の鈴木とベルボーイの若杉をヤクザ達への対処班にするがヤクザ達と戦う為の知識も力もない2人は彼らに太刀打ち出来ず…そこに民事介入暴力の事案を専門とする女性弁護士の井上まひるが現れる。

伊丹十三監督による暴力団対策マニュアル件痛快エンターテイメント。映画の中のヤクザっていうと「仁義なき戦い」の様な荒々しく血なまぐさい世界で生きるヤクザ達を一種のヒーローにした様な作品の方が印象強い中で彼らを徹底的な悪として描き暴力団の社会に対する有害性を描いたと言うのは今の時代で考えても中々に斬新なんじゃないでしょうか?弱い物達から徹底的に搾取して強いものには媚びへつらう。自分達の言い分が通らなければ怒鳴る脅すは当たり前。終いにはあの手この手で嫌がらせをするばかりか敵対者の命まで狙いだす。暴力団を排除する法律が厳しくなった今の時代では考えられない事ばっかりですがこういう事が普通な時代だったんでしょうね。ハッキリ言っちゃうと自分はヤクザ映画がそんなに好きじゃないと言うか見ていてあんまり感情移入が出来なくて苦手なんですがこの映画を見ていてなんで自分がヤクザ映画を好きになれないのかわかってしまった分序盤でホテル側がやりたい放題される下りは見ていてちょっとしんどかったですね。子供の頃通ってた銭湯に刺青を入れた怖い叔父さん達がたくさんいてそこで一方的に語られる武勇伝が子供ながらに嫌で嫌で仕方なくて。あんたらかっこつけとるけど様は弱いものいじめしてただけやんって子供ながらに思ってたんですよね「笑」

そういう怖いおっさん達にも屈せず法律を武器にホテルを守るために戦う女弁護士井上まひるを演じる宮本信子さんの生き生きとした演技の爽快さに心が救われていく中盤。脅しや言葉の暴力で攻めてくるヤクザ達に対して正しい知識と言葉を武器にヤクザ達を追い払いホテルに取っての救いの女神になる彼女と彼女の力を借りて自分達も強く成長していくホテル側の姿を通し現実の暴力団に対する対処マニュアルとしての映画の側面が後半になるにつれ色濃くなっていきますがこの辺りの社会問題とエンタメの的合力は流石の伊丹十三監督だと思いました。

これを取る事で実際に伊丹監督自身も本物の暴力団から報復を受けたと聞きましたが奇しくも終盤で語られるまひるさんの過去がそんな監督の姿とだぶって見えて監督の「この映画を作れるなら自分は死んでも良い」って言う覚悟を直に感じた気がしました。今よりも暴力団の力も影響も強い時代の中で暴力に屈せず映画監督としての誇りと信念を貫いた監督の生き様にリスペクトと敬意を表したい。 

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