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胸中の手記 5月13日 ごめんなさいと三回口走って枕の血を洗った

5月13日 月曜日 雨

夜中、蚊の飛んでいる音が漂ってきてね、この音が聞こえると、刺されたかどうかもわからないのに痒いような気がしてきたからあちこち掻いて、聞こえるたびに耳を叩いていたんですよ。

寝るのを諦めて薄暗いところで起き上がって借りものの布団を見ていたら、消しゴムの消しカスみたいなものが二つ落ちていて、電気を点けたらね、枕に、直径4ミリくらいの血の滴が落ちていて、その横に蚊が倒れてた。

瞬間を捕まえた。二重の複雑な気持ち。
わたし、蚊も打ち落とすほど速く動けるのかと、少し自分に安心した。それにしたって、蚊が吸ったにしては血の滴が大きかった。
蚊をじっと見ていたら、悲しくなった。
彼女は頑張って血を集めていたんでしょう。
旦那さんは花の蜜を吸ってね、彼女は子を産むのに血が必要で、集めていたのに、今わたしに打ち落とされてしまったんだ。
可哀想でしょう。
それでわたしはごめんなさいと三回口走って枕の血を洗った。

帰り道、雨に濡れた烏が、ゴミ置き場の隣で、じっとゴミを見て、何か考えているようだった。
わたしが近付いても、ぼんやりして立ち尽くしていた。目がとても虚ろで、少しもわたしに気付かなかった。

燕がビルの中から何羽も飛び出してきて、ビルと外を行ったり来たり慌ただしく飛んでいた。
飛行能力の落ちた虫を急いで捕まえていたんだとあとで知った。

違う空では大きな鳥が何羽か一緒に飛んでいる影が見えて、空からアヒルみたいな声がした。
首が長くて、お腹の大きな鳥の影だった。(本当にアヒルが飛んでいるんだろうかと思ったけど、アヒルはあんなに空高くを飛ばないとどこかで聞いたから、アヒルではないんだ。)

これが今日の印象的だったことです。

難しいです……。