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胸中の手記

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感覚に集中しようとして生きると人はどうなるのかという実験をしている人の生活を描いている日記風小説。
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記事一覧

胸中の手記 5月21日 わたしの親友皮膚の中

胸中の手記 5月21日 わたしの親友皮膚の中

5月21日 火曜日 曇り

26時間ほど、食べるのも忘れて、自らの指針というものをはっきりさせたく、考えていたら、どうなったと思う?どうなったと思う?

人間は、食べないと、お腹が減って、変な音が鳴るのよ。別の生き物が中から呼んでいるみたいな音がするのよ。

やっと鳥の肝を煮て、多めに御飯を食べて、安心していたら今度はね、胃がびっくりしたんでしょうね。痛くて痛くて何も出来ない。

胃散を飲むと唾が

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胸中の手記 5月20日 芸達者の武士

胸中の手記 5月20日 芸達者の武士

5月20日 月曜日 雨

少しずつ、昨日の夜から雨が降っていた。
見えないで、音もしないで、ただ濡れるから、わたしは喜んでいなかった。
朝、雨はもっと降っていた。
仕事が長引いて、帰れなくなった。
その間に恋の告白などあった。
わたしは芸達者の武士を慕って
告白をお断りして、後輩の手伝いをした。
後輩は「あとはお任せください。先に帰れますよ。」と言った。
残っていた仕事をしなくてよい連絡があって、

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胸中の手記 5月19日 楽しみ親しみ

胸中の手記 5月19日 楽しみ親しみ

5月19日 日曜日 雨

コインは言いました。
「心から喜んで、人とも親しみなさい。自分のすることを心から喜んで。」
おお、弾く弦から美しい音が出るといいよね。
紡いでいる言葉から、人とわたしの同じ喜びが浮かび上がるといいよね。

雨が降った。わたしは何でも頭を下げる。
道を渡る間少し待ってくれた人、塞っている道を開けてくれた人。
だからわたしも待って、わたしも道を開ける。

コインはこんなことも

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胸中の手記 5月17日 思い切り

胸中の手記 5月17日 思い切り

5月17日 金曜日 晴れ

ちょっと面白い曲(面白いのではなくて、変わっているというのでしょうか)を作ったから、聴いてもらいに行った。仕事をしている方々に。今日のわたしは自己採点が低い。
練習時に完全集中したときとは、明らかに精神状態が違うのです。
結果どうあれ、完全集中のあの気分の良さと納得の仕方が欲しかったというわけです。

しかし完全に目の前の人達を無視してもいいものか、完全に集中してしまっ

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胸中の手記 5月16日 オセロ

胸中の手記 5月16日 オセロ

5月16日 木曜日 曇りと強い風

目が覚めて顔を洗ってパッパと化粧して割り箸と遊んでいるわたしの子どもの代理と遊んで服を着替えて洗濯機を回して鍵と財布と支払いの紙を二枚持って、
玄関を出て階段を下りて道を走って風に当たって立ち止まって空を見た。

「大丈夫だわたしの中には、わたし以外の人もいる。」

コンビニに行って支払って、郵便局に行って、行く途中の公園のベンチで熱心に本を読んでいる日焼けして

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胸中の手記 5月15日 たんぽぽの綿毛

胸中の手記 5月15日 たんぽぽの綿毛

5月15日 水曜日 晴れ

さあ、怒られたり貶されたりして、謝って反省して、本当に願っていることを、自分を慰めながら、諦めることまでは先延ばししてきたけれど、今日も、明日も何とかして、試験をまた受けに行こう。

とても恐い(手書きでは怒られたりが恐られたりに間違っているから、余程恐い)、とても恐いけれど、行ってきます。
自分が何に感じ入っているのか、もっとよく、わかりますように。

胸中の手記 5月14日 現実的な夢と現の間

胸中の手記 5月14日 現実的な夢と現の間

5月14日 火曜日 曇り

夢と現の間にいたことはありますか。
寝入り端だったのだと思う。わたしは生活の中で、一心不乱に進めない時があって、それは望むようになれない自分より、人の何かの意思が介入してきたと思って、どうにかそれを振り払うのに目を閉じて、気にしない気にしない。さあわたしは何を求めているの?誰を大切にしたいの?どこに進みたいの?と問いかけて、自分の意思のほうを確認していると、眠りかけて、

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胸中の手記 5月13日 ごめんなさいと三回口走って枕の血を洗った

胸中の手記 5月13日 ごめんなさいと三回口走って枕の血を洗った

5月13日 月曜日 雨

夜中、蚊の飛んでいる音が漂ってきてね、この音が聞こえると、刺されたかどうかもわからないのに痒いような気がしてきたからあちこち掻いて、聞こえるたびに耳を叩いていたんですよ。

寝るのを諦めて薄暗いところで起き上がって借りものの布団を見ていたら、消しゴムの消しカスみたいなものが二つ落ちていて、電気を点けたらね、枕に、直径4ミリくらいの血の滴が落ちていて、その横に蚊が倒れてた。

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胸中の手記 5月12日 狂乱の宴の中

胸中の手記 5月12日 狂乱の宴の中

5月12日 日曜日 曇り

狂乱の宴のようなものを、人々が繰り広げている間、真面目に振る舞い続けると、人々は親しみ込めていう。
「君が最も狂っている」
一瞬たりとも気を緩めずに、狂乱の中を踊り続けて、人々が文字も数字も忘れている時間。
あとでわたしはそれを字にして数字にする。
親友は人生に時たま現れる。
愛しき人は常に現れて夢の中にも外にもいる。
追いかけずに狂乱の中も真面目に踊って真面目に胸の中

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胸中の手記 5月11日 負けるなお人好し

胸中の手記 5月11日 負けるなお人好し

5月11日 土曜日 晴れ、強い風

練習とは?練習とは何の練習をしているのか?(自問自答)
真っ直ぐかつ心地よい、イメージが伝わるような表現を自分で、せめて自分でできていると確信が持てるようになるまでやってみている。
ということは、出来ていないと思っているところがあるわけです。

だけどわたしが出来ないでいるのは(一番に)挑戦です。
人の好さばかり誉められて、腕を認めてもらうことは、近ごろ少しあっ

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胸中の手記 5月10日 眠気よ明日死ぬなら

胸中の手記 5月10日 眠気よ明日死ぬなら

5月10日 金曜日 晴れ

練習中に、眠くて仕方がない。
書こうとするときも、眠くて仕方がない。
眠れないほど胸が痛んだ夜に、わたしを自由にしてくれたのは、歌うことと、書くことだった。
だけどやろうとすると、眠くて仕方がない。
労働も、家事も、するときは眠気がない。
楽しいお話の時間も、眠気がない。
すると落ち着いてしまうのでしょうか。
それだけではない。勇気が必要だからだと思う。いつもと同じに、

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 胸中の手記 5月9日 いないクリスマスローズ

 胸中の手記 5月9日 いないクリスマスローズ

5月9日 木曜日 曇り

目が覚めたとき、自分のいない自分で歌って、自分のいない言葉が書けないだろうか。
できるなら、そうしたいと思った。
自分がいないときの方が、感触がいい。
そんな気がする。
本当にいないわけではないけれど、どう思われるかを忘れてしまう。
忘れてしまったほうがわたしにはずっといい。
そんな気がする。

道で、まだ乾いていないアスファルトを踏んで、靴の裏がペトペトした。
コールタ

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胸中の手記 5月8日 体の外に出たくなる

胸中の手記 5月8日 体の外に出たくなる

5月8日 水曜日 曇りと雨

寝ている間に体の外に出る方法があるということを小耳に挟んで、体の外に出てみようかと試してみたけれど、体から出ようとしたら体も一緒に体から出ようとしたから、結局わたしは体とぴったり一緒でした。
夢の中で自分の好きなように動けたこともない。夢の中でするより、現実でできると自分を信じるために、まず夢の中で確信を持って見ようかと思ったけれど、いつも夢の出来事に驚いて、反応して

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胸中の手記 5月7日 時間が変わる

胸中の手記 5月7日 時間が変わる

5月7日 火曜日 風と霧雨

お元気ですか。なぜかわたしの周りでは、体調を崩して仕事を続けられなくなった人が何人もいます。
一昨日、心に何かを決めてから、どんな風にそれを為せばいいのかと悩んで、一番良かった答えは、わたしの場合は、真っ直ぐにやることでした。
真っ直ぐが取り柄ということなのかなと思います。

気付けば日記の中で、一昨日と書いていることが何回もあって、字も、日記も書いていられないくらい

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