お化粧最低限の私が箱根で気づいた、美への投資
私は美に投資できない。
きれいにお化粧をほどこしている人を見て、わぁいいなぁと、一瞬興味が湧くけれど、色々購入して比べてみたりするのは億劫になってしまう。
最低限のお化粧だけシャーっとして出かけちゃう。
外にある美しいものが見たい。
光を浴びた木々や、艶めくソースがかかった料理や、現実にはないものを描いた絵画。それらを見るために旅にでる。
目的地は箱根。
箱根登山鉄道が湯本駅に到着し、外国の人ばかりが降りてくる。海外にいるみたいだ。
登山鉄道はスイッチバックしながらゆっくり進むので、強羅に着くまでに40分かかる。バスという手段もあるがずっと乗っていると酔ってしまうので、ゆっくりでも電車が助かる。
強羅から10分ほどバスに乗り、着いたのはポーラ美術館。
来るのは2回目だ。
去年来た時は、梅雨入り前の緑が眩しい時期だった。その頃、「光」をテーマにした展示が行われていてモネの絵を目当てに行った。
バスから降りると、その展示がすでに始まっているように感じた。木々が整備され木陰を作り、その間にかかっている橋が美術館への入口になっている。
光を通すガラスケースのような建物に私は吸い込まれた。
カフェでサンドウィッチをお腹に入れてから、ゆっくりと絵を鑑賞した。
展示室を出ると、ガラス張りの窓からは揺れる緑と陽の光が交互に上映されていて、私は誘われるように外にでた。
ポーラ美術館を囲むようにある森の遊歩道は、ところどころにさりげなく立体の展示物が飾られていた。天然のクーラーみたいにひんやりとした空気が気持ちよくて、どんどん歩けてしまう。葉っぱの擦れる音、木の実が落ちる音、鳥の声、森の息遣いが聞こえた。
しかし、本日は雨と風が舞っている。森の遊歩道を歩くことは楽しみの一つだったので、少し残念な気持ちにもなった。
そうだ、お昼ご飯を食べよう。
ポーラ美術館にはカフェだけでなく、しっかりと食事できるレストランもある。今回は道中が悪天候だったこともあり疲れていたので、後者を選択した。
店内は、ひゅーひゅーと吹き付ける雨風の音は聞こえない、明るくて安心できる場所だった。
あたたかなパンとスープに始まり、メインのお魚料理はしっとり柔らかで心も体も満たされた。食べ終わる頃にはすっかり回復していた。
前回よりさらにじっくり観て回る。ゲルハルト・リヒターの絵の前にベンチが置かれていたので、少し座って鑑賞してみた。
リヒターの絵は、水のメタリックな質感を思い出させてくれた。モネのふんわりとした光とは対照的に、ソリッドな光が描かれている。
絵を描くということは、物理的に見えているものをそのまま描くわけではない。物理的に見た事実を自分の中でもう一度再解釈して表出することだと思う。
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