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執念が私を軽くする

理想は軽やかに生きること。

でも、私という人間は軽やかな性格を持ち合わせていない。

執念深い。

常に美味しいものを食べたい。美味しくないものは食べたくない。その執念は誰にも負けないと思うほどに深い。

美味しいものは世の中にたくさんある。売られているもので美味しくないものなんてないのではないかと思うほどに。

ジャンクフード全般、唐揚げ、コンビニのおにぎり、カップ麺、スナック菓子、スイーツ、アイス。

20代まではこれらでお腹いっぱいにすればストレスが解消できて満足していた。

太るのが嫌だから節制することはあったけれど、ドカ食いするのは楽しみでもあった。

体調を崩すこともあったけれど、たくさん寝れば大抵は回復した。

だから自炊の必要性もさほど感じておらず、節約のために自分の労力を払ってすることくらいにしか思っていなかった。

30代に入り数年経った頃、体質がガクッと変わってしまった。寝ても疲れが取れないし、そんなにたくさん食べることができない。

私はその原因を仕事や職場のストレスにしていたけれど、それらを変えても以前のような体調に戻ることはなかった。

あの頃みたいにジャンクなものをたくさん勢いよく食べたい。そうした執念が発動し、私は運動することにした。

運動は好きではない。やらなくていいのならやりたくない。だけど、美味しいものを食べるためならやれた。

ヨガならハードルが低いと思い、早速youtubeを見ながら始めた。毎日10分くらい。ヨガというよりストレッチに近い。でも、硬くなっていた体はほぐれた。

続けていくと、やらない日の翌朝が快調でないことに気づいた。やれば快調なのだからやはり毎日やることにした。

ヨガを毎日やっていることを人に話すと、「毎日!すごいね!」とか「えらいね!」とか言われるけれど、美味しいものを食べるための執念で突き動かされているので自分ではなんとも思わなかった。

ヨガをやるようになって胃の調子はよくなったけれど、やっぱりジャンクフードを美味しく食べられなかった。ヨガをやってスッキリになっている胃をわざわざもたれさせている気分になった。

歳をとることは、こうやって少しずつ失っていくことなのだと寂しい気持ちになった。

だけど私は不屈の執念で立ち直る。

ヨガだけではなくウォーキングも始めることにした。

ただ歩くだけだけど、やらなくていいならやりたくない。だけど私はもう一度ジャンクフードを美味しく食べたいのだと思ったのでやれた。

面倒だが渋々散歩してみると、とても気分が良かった。

自分が住んでいる街のことを何の変哲もないつまらない場所だと思っていたが、それは駅から自宅までの道しか通ってないからだったことに気づいた。

緑もたくさんあるし、公園もいくつかあるし、富士山が見られる絶景スポットも見つけた。20分歩けばいいと思っていたけれど、時間のある時は1時間くらい平気で歩いてしまう。

そして帰ってきた時にはお腹が空いていて、冷蔵庫にあったブロッコリーや先日の残りの鶏ハムや冷凍してあったご飯を食べた。

美味しかった。

こうやって、もっと家で美味しいものが食べたい。

そう思って自炊に力を入れることにした。

今まで見向きもしなかったウェブにある無料のレシピたちを少しずつ試していった。

最初に自炊の喜びを教わったのは今井真実さんのレシピだった。

鶏とじゃがいものソテーや、とうもろこしたっぷりのオムレツ、そしてかぶとじゃこの副菜など。これが食べられるからこのお店に行こうというような料理が自分の手でできる高揚感があった。

体調がいまいちのときは、長谷川あかりさんのレシピで、ノンオイルのものや野菜もタンパク質も両方摂れるあっさりしたお料理を作って整えている。

その時の気分に合わせて自分の食べたいものを作ることが少しずつできるようになって、もっと色々な料理を試してみようという気持ちにもなった。

茶色い世界に光が入って、色づいていくように感じた。

そしてある日、散歩をしている時に気づいた。

ジャンクフード全般、唐揚げ、コンビニのおにぎり、カップ麺、スナック菓子、スイーツ、アイス。

これらを欲していない。

胃袋が受け付けないのではなく、その前段階で欲しない。

ヨガやウォーキングをしたからといって、胃袋の様子が20代の頃に戻るということはなかった。

だけど「常に美味しいものが食べたい」という執念は、体を整え、自分で美味しいものを作れるようにしてくれた。

やらなくていいならやりたくないヨガ。
始める前はズーンと重かったウォーキング。
やる前に面倒だなと思っていた自炊。

しかし今は、全く別のものへと変容を遂げている。

朝起きたら快調。
今日はどんな新しい景色が見れるかな。
今日は何を食べようかな。
と、うきうきしながら日常を歩める。

足取りは軽く、歩いているうちにお腹が空いてくる。

私はどんどん軽くなる。
執念によって。



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