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醸造文化と殺菌文化

日本には色々な発酵食品がある。
味噌、醤油、酒などを造る麹、糠漬けやすぐき漬けなど漬物、納豆、いしるやしょっつるなど魚醤。

身近にいるナニカが変化させた食品は美味しく、日持ちが良いから重宝されてきた。

もちろん、かつてはナニカが何者かなんて分からなかったはずだ。
けれどその変化が起こる条件を特定していき、知らないうちにナニカを活用していったのが日本食文化だと思う。

手前味噌やミキは造る人や環境によって味は変わる。
手で握ったオニギリもある種の発酵食品だという人もいる。

逆に素手で握ると食中毒の原因になるという人もいる。
これも事実で、黄色ブドウ球菌のような悪さをしやすい常在菌もいるのは確か。

けれどこういう菌が悪さをするのは常在菌のバランスが崩れたときや免疫が落ちたときで、常に害悪な菌ではない。
居なくなると困るから、殺菌した時はいなくなってもそのうち戻って来る。
というより、個人的にはこういう害をもたらす菌の方が劣悪環境に強い気がしている。
こういう菌が棲む場所を確保した頃に、その環境に合う菌が増え、更に他の菌が増え・・・・という感じ。

以前仕事柄こまめに殺菌していたけれど、その頃の手は結構臭かった。
臭いとはどういうことだろう?少なくとも良い菌が増えてる気はしないし、こんな手でオニギリを握ったら食中毒になりやすそうな気がしなくもない。

また手に傷があればそこは黄色ブドウ球菌の住処になるから、そういう時は要注意なのは間違いない。

あと少し話がづれるが、常在菌は肌の健康に関与しているので、殺菌が原因で手が荒れてしまうこともある。

もちろん味噌などを仕込むときに容器は殺菌する。どんな菌がいるかはわからないから。

けれど手は水洗いするだけで殺菌はしない。だけどここ最近、味噌造りに失敗したことはない。

もちろんコツはあるし、酒粕で蓋をすることで表面にカビが生えにくい環境は作っている。けれど手に棲む菌は大豆とともに入り込んでいるだろうが、何かが起きたことはない。

まぁ、塩のおかげかもしれないけれど、無闇に殺菌すればよいという話ではない例だと思う。
そもそも味噌の味が変わる要因の一つは常在菌なのだから、手を殺菌するということは個性を減らしかねない。

今はすぐ殺菌する時代。
衣類に抗菌はあるし、殺菌をうたった洗剤や石鹸もある。

生野菜も殺菌は当たり前。
日本酒や浜納豆、パンなどの室内や容器などに棲む常在菌が大切な役割をする工場などでも、HACCPなどといい除菌、殺菌を徹底しようという話を聞く。

こういう場所に棲む常在菌=野良酵母や野良乳酸菌は醸造物の美味しさにつながる。
パンも長年焼いている工房で焼いたものが美味しいと聞いたことはないだろうか?

なんか菌イコール悪いものという印象が持たれているが、実際には常在菌や野良の菌は大切な役割を果たしている。
いなくなって困るのは殺菌する側である。

今の流れは醸造文化を壊したいからだという人もいるが、そう意識していなくても壊すことにつながっているのは間違いない。

殺菌文化ともいえる今の流れは、今一度考え直したほうが良い気がする。

何となく無意識に殺菌すればよいと思っている人がいそうだが、殺菌するメリットがどれくらいあるのだろう?

もちろん殺菌しないデメリットもある。

そこをきちんと考えたうえで丁寧にするのが、本当に意味のある殺菌ではないのかと思うのは気のせいだろうか?

多分だけど、適当雑把にやる殺菌は害しかないだろうと、個人的には思っている。
いかがだろう?


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