season3 18話 ポケモン×この世界の片隅にクロスオーバー(ポケモンAYG)
18.『カーフの組帯』
冒頭、ナッペ山ジムから下って見物搭へ。
タクシーで一旦学校に戻って休むと、クラベルと会う。
「ヨーコさんのご活躍は、友人から伺っていますよ」
「友人? どちら様てす?」
「……ふふふ。さて、どなたでしょうね」
髪型について聞かれ、クラスの男子の会話を思いだし、
「ツーブロック? て言うとったような」
「なるほど……? 確かに男子生徒さんでそのような頭にされている方をたまに見かけますね」
考え込むクラベル。
「もしかして、リーゼントはちょっと古いのですかね……? カツラを変えた方がいい……?」
「……先生?」
「あ、いえ、なんでもありません。ヨーコさんのご意見、とても参考になりました」
*
ということでいつもの夏服姿に戻り出かけるヨーコ。見物搭までタクシーで行き北1番エリアのポケモンセンターへ。
ぴっかりさんとしばらく歩いて竹林。キタカミを思い出しながら進んでいく。全部すんだら甚兵衛着てのんびりしたい。
その中のポケモンセンターで一旦休憩。目の前にアジト。わっぷるさんも出てきて、3人で足を進めると電話が。
「カシオペアさん?」
『ああ。……5つめのアジトに近づいてきたな』
「ええ」
『その先に最後のチームがいる。よくここまで戦ってくれた。ヨーコ、ありがとう』
「お礼なんて……。相棒の落とし前つける機会をもらったもんじゃけ、お礼を言うのはこっちの方です。それに色々考えさせられたし」
と、後ろから、
「ヨーコ! カシオペア!」
ネルケが来た。
「ネルケさん」
『ネルケも来てくれたか』
「クライマックスのアジトだからな」
髪型を整えながら言うネルケ。
『ネルケの働きにも礼を言いたい。最初あなたを疑っていた。本当にすまない……』
「……いいってこと。このアジトが終われば、スターダスト大作戦は完了かい?」
『いや、スター団真の黒幕、マジボスが残っている』
「そいつの足取りは?」
『すべてのボスが引退すれば、姿を見せるだろう』
「……そうか」
『……終わりは近い。くれぐれも頼んだぞ』
電話切れる。少し間を開け、ネルケ口を開く、
「──カシオペアさんの通信は、……切れましたかね」
少し驚くヨーコ。ネルケ、ヨーコを見て、
「ヨーコさんのおかげで、スター団を少しずつ理解できました。私がなすべきこと……、そしてくだすべき決断も……」
「ネルケさん……」
ネルケ、いつもの口調に少し戻り、
「ヨーコさんには感謝してるぜ。くれぐれもお気をつけろですよ! ……若者言葉にはなれませんね」
先に進んでいくネルケ。
「ありがとうございます。先生」
小さくお礼を言うヨーコ。ぴっかりさんとわっぷるさんに小さくうなずいて進んでいく。
果たしてアジトのゲート前に来ると、
「……なかなか筋がいい。わたしのポケモンの攻撃を退けるなんてね」
ネルケがいかついプロレスメイクの女の子と対峙していた。
「そちらもな……。名前はビワっていったか? 研ぎ澄まされた技だ」
ネルケ、一息つき、
「しかし、ボスみずから門の見張りとはな……。仲間のしたっぱたちを信じていないということか?」
「……黙りなさい」
低い声で否定するビワ。
「わたしはわたし以外、誰も傷ついてほしくないだけよ」
「──優しいボスさん、……勝負再開といこうか!」
「っ! たんま!」
ヨーコ達駆けつける!
「……誰」
にらむビワ。しかしヨーコ引き下がらない。
「ヨーコ! ピカチュウとウェーニバルも、来てくれたのか!」
「ネルケさん、一体……」
「団員らしき生徒がいたんでちょっと話しかけたんだが、いきなり襲われてひと勝負してたところだ」
と、アジトから人が。
「ビワちゃん! やっぱりここにいた!」
したっぱ姿の褐色肌の女の子が。
「タナカちゃん……!」
驚くビワ。
「ちょっと大丈夫!? ケガしてない!?」
「大丈夫だから……! タナカちゃんは安全な場所へ!」
しかしタナカ、ヨーコ達に向き直り、
「ここは引き受ける! ビワちゃんはアジトへ戻って!」
「……引かない。……引けない!」
食い下がるビワ。
「ビワちゃん! もうやめて!」
「マジボスが戻るまで……、かくとう組チーム・カーフを……、スター団を守らないと……」
構えるビワ。しかしタナカ頭を振り、
「だったら、なおさら戻って少しでも休むの!」
「ボスのわたしが……、引くわけには……」
「ビワちゃんお願いよ! 友達の言うこと聞いて!」
必死の願いに、ついにうなずくビワ。
「──わかった……。タナカちゃん、ごめんなさい!」
「もう! 違うでしょ! お疲れ様でスターでしょ!」
「お……、お疲れさまでスター!」
ポーズをとり、アジトへ速やかに戻るビワ。それを見届け、タナカ向き直る。
「ここからはわたしが相手! ふたりまとめてかかってきなさい!」
「……ヨーコ」
ネルケ囁く。
「さっきの勝負で、オレもポケモンもふらふらだ……。悪いが、ここは頼んでもいいか?」
「ええ、もちろんです」
「ピカピカ!」
「バルブ!」
「……すまない、ここは見守らせてもらう!」
「ビワちゃんはわたしが守る。覚悟はいいわね!」
「はい!」
「では、参ります!」
ヨーコ、わっぷるさんにうなずき返し、一旦ボールに戻す。
位置につき、勝負開始! タナカ、グレッグル出す! こちらぴっかりさん。
先攻であなをほるも、どくどくで毒をあびる。苦しみつつそのまま地中から攻撃! ワンパン。
2匹目、オコリザル対わっぷるさん。
アクアステップですばやさ上げるも、インファイトをくらう。しかしアクロバットで切り返し勝利!
「ようやった、わっぷるさん」
「バル!」
タナカ、オコリザルをボールに戻し、
「わたしは、負けてもいいの」
ヨーコを見る。
「ひと時でもビワちゃんが休めたなら、わたしは満足。役目は果たしたし、わたしも戻るわ! お疲れ様でスター!」
ポーズをとり速やかに戻るタナカ。
入れ替わりに電話が。
「カシオペアさん?」
『……見張りに対処できたか』
「はい」
『そのアジトを拠点としているのは、スター団かくとう組……、チーフ・カーフ。ボスのビワは格闘技の選手であり、みんなの戦闘指南役だ。
スター団への宣戦布告に一番警戒しているだろう。侵入者をつぶすため、先陣で勝負をしかけてくる可能性がある』
「ええ、おっしゃる通りでした」
『やはり……! どうなったんだ!?』
いきさつを話すヨーコ。
『あのビワ姉が逃げた……!?』
驚愕するカシオペア。
「逃げたというよりは、退避したと言うた方がええかもです」
ヨーコの言葉ですぐに落ち着きを取り戻したのか、
『……となると、やはり正攻法でアジトを攻略するしかないな。準備が出来たらゴングを鳴らして大作戦開始! チーム・カーフにカチこんでくれ』
電話切れる。ぴっかりさんにモモンの実を食べさせ応急手当した後、ポケセンで回復。
最初の3匹にぴっかりさんとヒナじろう、わっぷるさんを選び、
「行くで!」
うなずく3匹。ゲートに戻りゴングを鳴らす。
鳴り響くスピーカー。
『ひとつひとつの星は小さくとも、みんなで光れば星座となる! われらスター団最後の砦! 負けるわけにはいかないぞ! 10分以内にオレたちのポケモン30匹倒せたら、ボスをお呼びしてやるよ!』
なかなかの手練れを倒しつつ進む!
「強い。さすがじゃ……!」
しかし最後のルチャブルをぴっかりさんが倒し終了!
「ボス……、わたしたち、もうダメかも……」
スターモービル、登場。上にはビワ。
羽織っていた上着を脱ぎ捨て、ヨーコに対峙。
「……うん、大丈夫」
深呼吸するビワ。
「誰であれ何であれ、スター団を狙うなら砕くだけ! もう背中は見せない……」
鬨を上げるビワ!
「ウォオオオーーーッ!!!」
構え、受けて立つヨーコ!
*
ビワ、ドクロッグ出す!
「ここはわたしたちの場所。これ以上荒らさせはしない!!」
「──ほうかね。でも……、うちも本当のこと知りたいんじゃ!」
ぴっかりさん登場! すかさずどくづきが放たれるがあなをほるでかわして攻撃! 効果抜群でワンパン!
2匹目、ナゲツケザル。エレキボールくらわすも、インファイトくらい倒れるぴっかりさん。
「ぴっかりさん!」
「叩いたら叩き返す!! 最後まで立っていた者が勝つ!!」
「それなら……、頼んだまんじゅう!」
まんじゅう登場。インファイトくらうも効果今一つで助かる。下がったところを狙ってどくづき。しかし倒れない。
「なら!」
じしんでゆらし、落ちてバタンキューなナゲツケザル。
3匹目、コノヨザル対わっぷるさん。
ヨーコ回想。
*
『わっぷるさん。最後のとこじゃけ、本当ならあんたを真打ちにさたいところじゃけど、絶対に負けられん。他に回るけど……。ええ?』
『バルブ』
構わない、とうなずくわっぷるさん。
『……ありがとう。絶対勝とう。そして、本当のことを一緒に知ろう』
*
わっぷるさん、ひとりで静かにうなずく。アクアステップですばやさ上げる! インファイトくらうがこらえてアクロバット。倒す。
4匹目、ルカリオ対わっぷるさん。ローキックで効果抜群。でも倒れず。はどうだんくらい、倒れかけるがこらえてアクロバット! ルカリオ倒れる。
ついに登場ブロロローム!
「わたしは……、負けない。だから……、力を貸して」
ブロロロームもといカーフ・スターモービル、雄叫びで答える。
体力ギリギリながらも、最後の力を振り絞りアクアステップ。が、スターモービル特性じきゅうりょくで防御上がる。
10まんばりきくらってもなお立つわっぷるさん。うなずくわっぷるさんの覚悟を受けとるヨーコ。最後のアクアステップ! ファイトアクセルでついに倒れるわっぷるさん。しかし満足げな笑み。
「──ありがとう」
今回の真打ち、ヒナじろう登場。
「──ヒナじろう、テラスタル!」
ヒナじろう、テラスタル!
ホイールスピンくらうも、踏ん張って必殺ルミナコリジョン! ワンパン!
白目を向き、膝をつくビワ。
胸を撫で下ろすヨーコ。
「──みんな……。ごめんなさい……」
ビワ回想。
*
「がんばった……、けど……、ダメだった……、わたし……」
ヨーコの元に来ながらつぶやくビワ。しかし首を横に振り、
「あなた、強かった。掟ってこともあるけど、これ、もらってほしい」
バッジをくれるビワ。握手の代わりに腕組み合わせる。
「ありがとうございました、ビワさん」
「わたしのポリシーみたいな技も、ぜひ使ってほしいな」
インファイトのわざマシンくれる。
「ありがとうございます」
黙りこくるビワ。少しして、
「──スターダスト大作戦のヨーコさん」
「は、はい」
ぴしっ、となるヨーコ。
「戦ってわかったけど、あなた、いやな人じゃないよね」
「え……」
「あなたのポケモンたちが、あなたを見る目でわかったんだ」
倒れる直前に微笑むわっぷるさんを思い出す。
「……」
思わず涙をこらえるヨーコ。
「──ただ、少しの間、わたしのこと、見ないでほしい。──ちょっと、辛くて」
嗚咽を上げるビワ。
「……ウウッ」
踵を返し駆け出す。慟哭する。
「ウォオオオーーーッ!!!」
足音聞こえて顔を上げるヨーコ。ネルケとタナカがやってきた。
「……終わったようだな、ヨーコ」
「……はい」
「ビワちゃん……」
タナカ、ビワの背中を見つめる。
「こん方は……」
「ゲート前で戦った団員だ。話をしたくて来てもらった」
「……話っていうのは?」
「あんた、ほかのしたっぱとはボスに対する接し方が違う。その理由、教えてくれないか?」
「目ざといわね。……いいわ。話すわ」
ため息をつき、話し出すタナカ。
「──わたし、ビワちゃんをうとましく思っていたの」
「え……」
ヨーコ、目を見開く。
「美人でスポーツ万能、ポケモントレーナーとしても優秀。入学してすぐ、ビワちゃんはアカデミーの人気者になった。それまで1番人気だったわたしを追い越して……」
「それで、嫌がらせを……?」
問うネルケ。
「ええ、クラスメイトに呼びかけて、いろいろと……。本当にバカだった。
でもしょせん、子供の遊びよね。飽きたら次の刺激が欲しくなる。すぐにクラスのいじめのターゲットがわたしに変わった」
自嘲し、うつむくタナカ。
「……因果応報よね。でも、そんなバカなわたしに、ビワちゃんは手をさしのべてくれた。居場所がないとしんどいよねって、わたしをスター団に誘ってくれたの」
「いじめてた本人を……。すごい女性だな」
「ええ」
感嘆するネルケ、うなずくヨーコ。
「……本当に、そう思う。団に入ってからは楽しかった」
顔を上げるタナカ。
「スター団が、いじめをしているといううわさもあるが……」
「今の話を聞いても、そんなふうに思うの?」
ピシャリと言うタナカ。
「いや、それは……」
言葉に詰まるネルケ。墓荒らしのような連中はほんの一部だったのだと思うヨーコ。
「今のわたしがあるのは、ビワちゃんとスター団のおかげ」
唇を噛み締めるタナカ。
「──わたしたちの大事な宝物、……取らないで」
ビワの元へと行くタナカ。黙って見送り、去るヨーコとネルケ。
*
ゲートを出ると、電話が。
『……ヨーコ』
「カシオペアさん」
『ビワからボスの証、ダンバッジをもらったようだな』
「はい。わざマシンと一緒に」
画面にかざすヨーコ。
『これでボスがいなくなったチーム・カーフは解散に近づいた。
──ビワ……』
カシオペア、向こうでため息をつき、
『これですべてのチームボスを引退させることができた。ボスの座を降りた5人は、遅かれ早かれ団を脱退するだろう。じきに不登校をやめてアカデミーに戻るはずだ』
と、ネルケが遅れて来た。
「お疲れだったな、ヨーコ」
「ネルケさんも、ありがとうございました」
『その声は、ネルケか』
「カシオペアもお疲れさんだ」
『ああ……、約束の報酬だ。ヨーコのスマホにLPをチャージしておこう』
20000LP振り込まれ、わざマのデータももらう。
「……おっと! そういえば、今回はオレが補給班もやるんだっけか?」
『ああ。ヨーコに追加報酬を渡してくれ』
ポケモンのおとしもの渡される。
『いよいよスターダスト大作戦は最終段階に入った。残る仕事はあと1つ。……マジボスを倒して、スター団を解散させる!』
「どこにおるんです?」
『……安心してくれ。マジボスを探す必要はない。真の黒幕、ヤツの正体は……』
一呼吸置き、
『このわたしだ』
「えっ」
「なっ……」
絶句するヨーコとネルケ。
『……すまない。隠し続ける気もなかったんだが言い出すタイミングもなくてな』
カシオペア、話し出す。
『──スター団を結成したのはわたし。団のみんなは仲間で、わたしのかけがえのない宝だった。
──だが今のスター団は、みんなを不幸にするだけ。だからあきらめがつくよう、掟に従って解散させたいんだ』
声色が真剣になる。
『……ヨーコ、深夜に学校のグラウンドで待つ。ネルケもいてくれると助かる』
「はい」
「わかった」
うなずくふたり。
『……では、待っている』
切れる電話。
「──まさかとは思っていましたが、カシオペアがマジボスだったとは……」
顔を横に向けるネルケ。
「そして、おそらくその正体は……」
「ネルケさん?」
ネルケ、はぐらかす。
「待ち合わせ場所は夜、アカデミーのグラウンドにて。……準備して落ち合いましょう」
「……はい」
去っていくネルケ。ヨーコ、そのまま見送る。
ポケセンで回復させ、竹林の池の近く、労うピクニックで聞いた話をぴっかりさんとわっぷるさんに再話するヨーコ。下手をすれば自分もあちら側だったと語る。
「うちは知っとったはずなんに。正義なんてすぐどっか行くもんじゃて」
と、ぴっかりさんが小突いてくる。しっかりしなさい、という顔。
「うん、ありがとう」
とにかく真実を知るべく、タクシーでテーブルシティに戻るといつの間にか夜。
急いでぴっかりさんと階段を駆け上がり玄関へ向かうと、扉の前にネルケがいて……。
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