ハウマッチ
新年度に入り、大学とアルバイトを繰り返す、実に単調な暮らしを送っている。
退屈に少しでも抗うために、自分にいくつかのルールを課した。
一つは、「週に一度、友人と会う」だ。
これはすごく精神衛生に役立っている。
「毎日noteを更新する」も、日常にアクセントをつけるためのルールだ。
そして、もう一つ大事にしているルールが、
「食べたこと・飲んだことがないものに手を伸ばす」だ。
ただでさえ生活が単調なのだから、せめて体に取り込むものくらいは変化に富んだ方がいいだろうという考えで始めた。
出先で飲み物を買う時などが顕著だ。
「よく目にはするけど買ったことはないな」というものを意識的に買うようにしている。
この習慣を意識すると、今まで自分が惰性的に商品を選んでいたことを理解できる。
商品棚が広く感じる。
今までは気にも留めなかったレモンティーが、こちらに目配せを送ってきたり、グレーアウトしていた乳酸菌飲料が途端に色彩を放ったり。
おかげで、いい出会いもあった。
烏龍茶。
烏龍茶、めっちゃ美味しい。
こんなに美味しかったか?
おいしすぎる。
烏龍茶にハマってしまった。
最近は烏龍茶しか買っていない。
惰性のループから抜け出したと思ったらまた、烏龍の沼にはまってしまった。
全く、
本当に全く関係のない話だが、最近トイレが近い。
「烏龍茶 カフェイン 利尿作用」とかで調べれば一発なのだが、知りたくないので調べていない。
チャレンジは飲み物に限らない。
コンビニでおにぎりを買う時も、食べたことがないものを積極的に選んでいる。
いきなり残骸を見せてしまい申し訳ない。
セブンイレブンで販売していた、「弁当おむすび のり弁(270円)」だ。
大ぶりのおむすびで、のり弁をギュッと一つにまとめた面白い商品だ。
ボリュームもあり、満足感のある商品だったのだが、一つ問題がある。
私はこれを定価で買った。
270円。
よく見てほしい。
20%引きと書いてある。
店員は何も操作を加えず、私はただ270円を支払った。
私は静かに怒っている。
そもそも、270円のおむすびってなんだ。
一昔前なら、おにぎり2つ買ってもお釣りが来たぞ。
明治30年の大卒の初任給は月8円だったぞ。
これはあんまり比較に適さない。
270円。高すぎる。
もちろん、普通のよりも大きいし、具材も色々入っているので、仕方ない部分はある。
だが、270円は高い。
いくら目新しくても手が出せない。
定価なら。
20%引きは大きい!
実際はnanacoポイントが5%付与されたりもするのだが、この際、これは無視できるものとする。
270円の20%引き。
270×0.8=216円
216円なら買ってもいいだろう。
自分の中で、弁当おむすび のり弁に対して、
「230円より安かったら買ってもいいかな」
という判断があったことは確かだ。
そしたら、お会計が270円。
ピッッッッッッッッタリ定価。
20%引きだったりポイントが付与されたりしてるってことは、このおむすびはちょっと古い。
俺は、ちょっと古いのり弁むすびをピッタリ定価で買った。
どこに行けば補償されますか?
第一、セブンの仕組みからして悪辣だ。
半分セルフの仕組み。
なんだ、あれは。
みんな困ってます。過渡期すぎて。
こっちには「270円」とだけ表示されて、「お支払い方法を選択してください」とぬかしよる。
まだ、270円という数字に納得がいっていないのに。
割り引かれるはずだった金額は54円。
あなたは、54円のために、店員に言えるだろうか。
「このおむすび古いやつだから安くしてよ」と。
私は言えない。
54円がギリ言えないラインだ。
この問題は非常に複雑だ。
たとえば、定価200円の商品を購入したとして、ミスで254円を請求されたならば、「これ、値段間違ってますよ」とは言える。
だが、割引となると話は別だ。
こちらにも卑しい気持ちがある。
店側が、割引によってインセンティブを与えている以上、「俺は別に。あいつが誘ってきたんだ」と強弁する権利は一応ある。
しかし、安く買おうという浅ましさが私になかったと言えば嘘になる。
そういう恥を捨て、店員とのコミュニケーションを乗り越えてまで拾いにいくべき54円ではないと、私は即断した。
セブンを出るなり食べた。
急いで食べた。
小さなタイムスリップを起こしたかった。
実際に購入したのは18:00ごろだったが、12:00に買ったのだと、自分の記憶を改竄したかった。
私はこれを12:00に買ったのだ。だから定価だったのだと。
定価に納得できるシナリオはそれしかなかった。
だから、「弁当おむすび のり弁」を過去に送るため、光よりも速く食べた。
このおむすびはいくらですか?
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