見出し画像

【詩】カベ

壁の前に立っている
ぴったりと背中をつけると
背中から熱が奪われていく
陽は西から当たり
むしろ背後には
途方もない空間が広がっているようだ
陽はわたしを暖めるが
わたしは暖まらず
行き場のない空間は恐怖で満ちる
壁からは
小さな欠片かけらがカラカラと
しずくのように落ちてくる
かすかな大勢の声

助走のように
奪われたのは
人間としての
穴という穴

隣には気配があった
影かもしれない
余命のように
静かに佇んでいる

ひれ伏す自分もいた
幻視のように

瞼の裏が眩しい

壁が背後にあるからこそ
前に進むことができない

道はすでにふさがれていたのだ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?