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【詩】センチメンタルな自然チャネル

個体に沈んだ瑪瑙色の雫
遠い記憶の涙のように乾いてはいても
網膜 鼓膜 鼻腔 舌下 味蕾 他
あらゆる粘膜の湿り気にさえ
沈黙の時間を割り付ける

梢をわたる風の音が
グラスの中の炭酸水の
沸き立つ泡にこだまする
こことは違う別の方法しかたがあったのだろうか
私たちは 風に
風景に溶け出せたのだろうか

文字のひとつひとつの
直線や曲線が欲望を纏った時
その温度や粘度が
足の親指の指先
右手中指の第一関節
身体の境界線の際で
溶け出し 流れ出す通過点となる

私たちは私たち以上の私たちではない
私たち以外の私たちではないはずなのに
自然に染み出してゆく
自然が染み込んでくる

腕とも
足とも
眼とも
言いがたい
心とも

長い夜が
微熱の中に閉じてゆく

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