見出し画像

【詩】ヘイトスピーチ

ある種のハチドリの中には
その体長にくらべ
極端に長いくちばしを持つものもいる
長い舌を隠し持ち
それで食物を摂取するわけだが
いかにも効率の悪いその生き方が
羨ましく思えたり
ネパールにはグルン族という民族がいて
彼女はそこからやってきて
今、ファミマでバイトしている
「おはようございます。元気ですか」と
日本語の勉強をする
だけの挨拶で一日幸福と思える
お前のそういうところが嫌いだ

職場のある渋谷はルソーの熱帯樹林
街頭ビジョンやスマホ電波が同じ
波長の腐敗を忍ばせて
羽田からの空路になったため
旅客機が東急百貨店屋上遊園地の
亡霊の上を通り過ぎる

ランダムにかかるはずの曲が
ほぼ毎日、同じ順番で演奏されたり
PCは訳もなくハードディスクを舐め回す
踏むのが当たり前なのに
竹を踏んでいると
ツボツボツボという凸起に
身体がへこむ
お前のそういうところが嫌いだ

むかし神田には
朝8時から営業しているトルコぶろがあった
と話していると
若い人にトルコぶろはわからない
トルコの風呂じゃないからさ
名札には「ぐるん」と書かれ
ぐるんは今日も泣いているか
ここからこぼれ落ちてしまわないよう
つなぎ止めておきたい生のために

いつかは分かれてゆく
流れ去る水
伝わらない世界で
安易に分かってしまったと思えること
無駄なものだけが輝いて見える

お前のそういうところが嫌いだ


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?