ささき にと

【詩】と称して投稿しています。 また、フィルマークスでは“かっつう“名で映画、ドラマの…

ささき にと

【詩】と称して投稿しています。 また、フィルマークスでは“かっつう“名で映画、ドラマの感想をほんの少し。 お時間があれば。

記事一覧

【詩】とらまえる はなす

右の「あ」 が 左脚に乗って 上手い感じに腰もひねれて 声を出さない肩 一度バラバラにして 組み直す 左腕に 「お」 を残す きれいごとの予防には 「お」 がぴったり …

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【詩】勤めて通う

朝、 櫻蔭の女子高生が定理のページに ため息を漏らし 膝の見えるダメージジーンズの娘 妊婦の隣に座る 焼け過ぎソーセージのインスタで笑えば 欲望のスニーカーで歩き回る…

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【詩】センチメンタルな自然チャネル

個体に沈んだ瑪瑙色の雫 遠い記憶の涙のように乾いてはいても 網膜 鼓膜 鼻腔 舌下 味蕾 他 あらゆる粘膜の湿り気にさえ 沈黙の時間を割り付ける 梢をわたる風の音が…

ささき にと
2週間前
24

【詩】カベ

壁の前に立っている ぴったりと背中をつけると 背中から熱が奪われていく 陽は西から当たり むしろ背後には 途方もない空間が広がっているようだ 陽はわたしを暖めるが わ…

ささき にと
1か月前
30

【詩】別れ

私は恥辱の果実の先端となり 手のひらに包まれ 持ち上げ 握り潰されて 想いの彼方 恣意の働かないところで 「こと」が進んでいる証となる 多くの場合それは身体の中での…

ささき にと
1か月前
23

【詩】日常

拒絶するように描かれた 白線の横断歩道を渡って 道の向こうへ渡ろうとしている 信号が変わるのを待っている 底には川が流れているだろ 人の血も どっくんどっくん 電車の…

ささき にと
1か月前
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【詩】アンビバレンス

一日が滑り去った後 私たちは戻って行く 星のように 風のように 人が直線を作る悲しみを 記憶の化石にするならば 「同時」という不可思議や 施した悪や罪のため 全ての母…

ささき にと
2か月前
29

【詩】30秒

冷めたコーヒーを 電子レンジに入れ 30秒ほどあたためる デジタルの数字が 減っていくのを見詰めている 小さな事でいい わたしには 何故?と問うための時間が必要 たとえ…

ささき にと
2か月前
32

【詩】ドラマ

例えば 道で人とすれ違う時 相手を見てしまうと そこにドラマが生まれる 心が引きづり出されてしまうような それは とても疲れてしまうので やはり 顔を上げられない …

ささき にと
2か月前
26

【詩】始まりと終わり

わたしの投擲した 心臓ほどの大きさの石が 今 水底へ向けて 音もなく沈んでゆく 静寂のなかに 沈黙の逃走を準備して 訳知り顔で振り返ると 死んでしまった言葉の遺体が …

ささき にと
2か月前
26

【詩】濃密な花束

石井裕子 小笠原聡 立花里奈 雨の日は傘が必要でしょうか しかし そうとも限らない 松田皐月 石渡修 あと ひとり だけ 少年少女 そのことの脅威 誰でもない共犯者とし…

ささき にと
3か月前
20

【詩】気配(けはい)

しわだらけの欲が歩いている 凍える寒さに吐き出された息の中を 噂話で満ちた外耳道の淵を ときどき よろけたりもして グレーの濃い部分があり 光のかげんによっては白く…

ささき にと
3か月前
24

【詩】犬たちのとまどい

犬たちがとまどっている 同じような音声を発する 動物を見るが その姿形はまるで違う それぞれが異なる図体 異なる体毛の色 異なる足の長さや尾の長さで 各々が鳴いてみて…

ささき にと
3か月前
25

【詩】人生礼賛

乳白色の薄膜に 光を当て、 砂時計の中のつむじ風と 波頭の爪弾きのリズムで集う時 幾千日の眼底の鼓動音さえ これを懲らしめるための頬のふくらみ 血のような 潮のような …

ささき にと
4か月前
32

【詩】鏡の向こうの部屋

恋愛論も感情論も 当たり障りのない脳の洪水 首を絞めてみて 手でよりも その紐で 上手くいったら 声高にあやとりしてる 紐の行方を追いかけて はずした時間 私が 指先で…

ささき にと
4か月前
30

【詩】清澄白河から歩いた

清澄白河から歩いた 高い天井の建物から出て 街のラーメン屋でも探そうかと 晴天の休日 妻と 東京にも 興味深い地名が多くある 「清澄白河」、 「箱崎」や 日本橋でも「…

ささき にと
5か月前
29
【詩】とらまえる はなす

【詩】とらまえる はなす

右の「あ」 が
左脚に乗って
上手い感じに腰もひねれて
声を出さない肩
一度バラバラにして
組み直す

左腕に
「お」 を残す
きれいごとの予防には
「お」 がぴったり

次に「く」 が
音を削り
鼓膜を剥がしながら
息も絶え絶えに
横になる
他の文字にならないよう
辻褄合わせの結論は
「ね」に任せるべきか

「き」も良い
風が吹き
陽が輝っている
すでに広がっている
薄い膜

わたしの中の誰かが

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 【詩】勤めて通う

【詩】勤めて通う

朝、
櫻蔭の女子高生が定理のページに
ため息を漏らし
膝の見えるダメージジーンズの娘
妊婦の隣に座る
焼け過ぎソーセージのインスタで笑えば
欲望のスニーカーで歩き回るサニーサイド
ためにも膨らました乳房と赤ん坊と
そこには透けない丸い時間が
女の一生のようにそろっている

エンジェルパイのエンジェルを崇拝する
役にも立たない御託を並べ
室内プールの白波のごとき
立ち上がる空間で走る電車道に
行方不

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【詩】センチメンタルな自然チャネル

【詩】センチメンタルな自然チャネル

個体に沈んだ瑪瑙色の雫
遠い記憶の涙のように乾いてはいても
網膜 鼓膜 鼻腔 舌下 味蕾 他
あらゆる粘膜の湿り気にさえ
沈黙の時間を割り付ける

梢をわたる風の音が
グラスの中の炭酸水の
沸き立つ泡にこだまする
こことは違う別の方法があったのだろうか
私たちは 風に
風景に溶け出せたのだろうか

文字のひとつひとつの
直線や曲線が欲望を纏った時
その温度や粘度が
足の親指の指先
右手中指の第一関

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【詩】カベ

【詩】カベ

壁の前に立っている
ぴったりと背中をつけると
背中から熱が奪われていく
陽は西から当たり
むしろ背後には
途方もない空間が広がっているようだ
陽はわたしを暖めるが
わたしは暖まらず
行き場のない空間は恐怖で満ちる
壁からは
小さな欠片がカラカラと
しずくのように落ちてくる
かすかな大勢の声

助走のように
奪われたのは
人間としての
穴という穴

隣には気配があった
影かもしれない
余命のように

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【詩】別れ

【詩】別れ

私は恥辱の果実の先端となり
手のひらに包まれ
持ち上げ 握り潰されて
想いの彼方 恣意の働かないところで
「こと」が進んでいる証となる

多くの場合それは身体の中でのことであり
多くの場合それは私からは遠く離れている

波を探しに渚に向かう
受信するだけになってしまった携帯電話を
練り込まれた悲報の理由にするべきだった
あなたの涙のように
枯れ果てるまでは言葉の湿度に
頼れたかもしれないけれど

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【詩】日常

【詩】日常

拒絶するように描かれた
白線の横断歩道を渡って
道の向こうへ渡ろうとしている
信号が変わるのを待っている
底には川が流れているだろ
人の血も
どっくんどっくん
電車のドアには確かに書いてある
「引き込まれないよう ご注意ください」
誰だって逃げ出したい
今という待ち時間から
引き込まれないように 注意深く

そんなものがないことに
すぐに気づく
だから ないものをねだることも
あり過ぎて嫌なことも

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【詩】アンビバレンス

【詩】アンビバレンス

一日が滑り去った後
私たちは戻って行く
星のように
風のように

人が直線を作る悲しみを
記憶の化石にするならば
「同時」という不可思議や
施した悪や罪のため
全ての母の羊水の
漏れ出た先の残滓に過ぎない
そのことを嘆いても
悲しみは喜ばないだろう

葉の裏側を見せるために
風が吹く
永遠を遠ざけるために
星が瞬く

そのことは私たちの希望でもあり
絶望でもあった

わたしが
わたしの外に出るまで

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【詩】30秒

【詩】30秒

冷めたコーヒーを
電子レンジに入れ
30秒ほどあたためる

デジタルの数字が
減っていくのを見詰めている

小さな事でいい
わたしには
何故?と問うための時間が必要
たとえ その答えがなくとも
自らが問いとなる時間が

その時になって やっと
人生が一瞬だったと
確信できる

あえて焦点を合わせずに
惚けたように
時を過ごしたまま
風の行先を追う

わたしと交換できる時間は
そんなに多くなくて良い

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【詩】ドラマ

【詩】ドラマ

例えば 道で人とすれ違う時
相手を見てしまうと
そこにドラマが生まれる
心が引きづり出されてしまうような
それは とても疲れてしまうので
やはり 顔を上げられない

「この黒は白だ」と言ったり
「この白は黒だ」と言ったりして
多くのドラマは始まるわけだが
わたしの白は黒ではなく
黒も白ではなかった
ずっと
ドラマでないドラマの中で
過ごしている

ひとりの罪の中
「ありがとう」という拒絶の言葉に

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【詩】始まりと終わり

【詩】始まりと終わり

わたしの投擲した
心臓ほどの大きさの石が
今 水底へ向けて
音もなく沈んでゆく

静寂のなかに
沈黙の逃走を準備して
訳知り顔で振り返ると
死んでしまった言葉の遺体が
そこかしこに転がっている

わたしは海の名前を呼んだり
空や風の名前を呼んだりして
消えて無くなってしまわない言葉や
初めから存在しない言葉を
使ってみたくなる

白い画面の
滲んだ黒いシミのようなものか
空気を震わす振動なのか

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【詩】濃密な花束

【詩】濃密な花束

石井裕子
小笠原聡
立花里奈

雨の日は傘が必要でしょうか
しかし
そうとも限らない

松田皐月
石渡修
あと
ひとり
だけ

少年少女 そのことの脅威
誰でもない共犯者として
ボカロが歌うわらべ唄
どこでもないここ
そして
リゾームのようなもの
スマホの中の見えない空間

あとひとりだけ
そんなふうに消えてゆく

匿名の彼らは濃密な花束のように
群れあい 離れあう
それぞれに違う秘密を持ち
同じ

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【詩】気配(けはい)

【詩】気配(けはい)

しわだらけの欲が歩いている
凍える寒さに吐き出された息の中を
噂話で満ちた外耳道の淵を
ときどき よろけたりもして
グレーの濃い部分があり
光のかげんによっては白く見えるところもある
時に見失うこともあるのだが
小さな眼を光らせて
十年前の古びたドライフラワーのようで
いじましくも見え
それは妄想と似ているため
10の下に赤い9が来て
そこで初めて10が黒と知る
空に浮かぶ下弦の月のもと
攻撃的に

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【詩】犬たちのとまどい

【詩】犬たちのとまどい

犬たちがとまどっている
同じような音声を発する
動物を見るが
その姿形はまるで違う
それぞれが異なる図体 異なる体毛の色
異なる足の長さや尾の長さで
各々が鳴いてみて
通じるのか
その声には反応する

こんなに違っているのに
同じ「犬」と呼ばれ
こんなに違った人生なのに
散歩の途中なのだ

どんな風に嗅ぎ合えば
知り合えるのか
訝しげに振る舞う術も
しかし真実とは程遠い
容赦ない姿だ
姿形がどれほ

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【詩】人生礼賛

【詩】人生礼賛

乳白色の薄膜に
光を当て、
砂時計の中のつむじ風と
波頭の爪弾きのリズムで集う時
幾千日の眼底の鼓動音さえ
これを懲らしめるための頬のふくらみ
血のような
潮のような
生臭さの育たない地平の午後
落涙のため費やした時間を
何度も生え替わる剛毛や
卵の殻の無数の見えない気孔の
その数だけを数える日々

瞼の裏で濡れるのは
植物園の夕暮れ
いや 黎明であろうか
しっかりとしたジャンプのための
出来損な

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【詩】鏡の向こうの部屋

【詩】鏡の向こうの部屋

恋愛論も感情論も
当たり障りのない脳の洪水
首を絞めてみて
手でよりも
その紐で

上手くいったら
声高にあやとりしてる

紐の行方を追いかけて
はずした時間
私が
指先で押したあなたの頬は
思っていたよりも柔らかかった
窪みの中に
人間探しを準備して
彷徨って

嘘のように
思えて仕方がないくせに
信じ続けているのは
一人ではなく
二人、あるいはそれ以上に
多く見えてる、ここにいるから
自らの存

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【詩】清澄白河から歩いた

【詩】清澄白河から歩いた

清澄白河から歩いた

高い天井の建物から出て
街のラーメン屋でも探そうかと
晴天の休日
妻と

東京にも
興味深い地名が多くある
「清澄白河」、
「箱崎」や
日本橋でも「蛎殻町」「小網町」「小舟町」…
「虎ノ門」や「神谷町」…

ここは
もう、地じゃないから
地名はないと
妻は言うかもしれない

いつしか隅田川に出て
河岸を下った

特別なことがあったわけでもないのに
記憶に残る時間
青空と風と

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