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虹が象徴する物語4

前回までのあらすじ

いとこのヘイゼルに勧められて市販薬のODを始めたリズ。
しかしそれを繰り返すのは体に良くないと思い、以前ヘイゼルが通っていた精神科クリニックに二人で来た。問診票を書き終え考え事をしていると、診察室のドアが開いた。


診察室から出てきた女性が二人の受付番号を読み上げ、二人一緒に中に入るか尋ねた。ヘイゼルがうん、と答え、リズはヘイゼルの後に続いて診察室に入った。精神科医は見た目では性別が分からなかったが、リズはそんな事どうでもいいと思った。ヘイゼルもきっと同じことを思っている。ヘイゼルが欲しいのは相手の性別に関する情報ではなく、薬だけだ。
二人が椅子に座ると、医師はまずヘイゼルに「久しぶり、調子はどう?前と同じ薬がほしくて来たの?」と尋ねた。「久しぶり。調子は…例えるならイギリスの天気って感じ。薬は前と同じようなものなら何でもいい。」「わかった。それともう一人の君は…エリザベスだね。よろしく。君が困っていることは?」医師がリズに尋ねる。医師の目は添加物と砂糖たっぷりの非フェアトレードチョコレートのような明るい茶色だとリズは思った。「初めまして。リズって呼んでください。わたしは市販の鎮痛剤をODするよりも、精神科の薬を少し飲むほうが健康にとってはましだと思ってここにきました。」「確かにそうね。わかった、ヘイゼルと同じのを少量処方するよ。また1週間後に来て。」医師がそう言うと、もう一人の女性スタッフがドアを開け、二人に待合室で待っているよう促した。ちなみにリズは非フェアトレードチョコレートは口にしない。搾取されるのもするのもできる限りやめたいからだ。添加物やケミカルを避けるのは、地球環境やほかの人の健康のためでもある。少しでも世界を良い場所に変えられるなら、持続可能な選択をしないよりもしたほうがましだ。

ヘイゼルの気分がイギリスの天気のようーつまり曇ってばかりってことーだってことは知らなかった。ヘイゼルの着ているオーバーオールの、晴れ渡った空の模様とは真逆だ。ヘイゼルは何かの象徴のためにこの服を選んだのかもしれないし、そんなこと考えていないかもしれない。決めつけや思い込みはよくない。悩みの大半は思い込みからくるものだって10代のためのメンタルケアの本に書いてあったけど、思い込まずにはいられないのだ。だってそのほうが楽じゃない?

会計に呼ばれ薬を受け取とり、二人はバンに乗り込んだ。ヘイゼルはアプリを開いて近くのダンプステーションを調べている。「ここから10分のところにダンプステーションがあるから、とりあえずそこまで行って、それからのことは後で考えよう」そういうとヘイゼルは車のエンジンをかけたので、リズは慌ててシートベルトをした。事故はゼロにはできないけど、損傷のリスクは減らせる。

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