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虹が象徴する物語

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虹が象徴する物語6

虹が象徴する物語6

キャンプ場に止めたバンの中で、ステッカーのデザインを考えてヘイゼルを手伝ったあと、リズをフラットまで送ってくれた。シートベルトをはずしてヘイゼルにお礼を言う。
「今日はありがとう。一週間後に行くかどうかはまた考えるね」
「わかった。いつでもバックレていいからね。なんかあったらチャットで送って。じゃあね」
リズが車から降りると、ヘイゼルは手を振って帰っていった。

リズはフラットの階段を重い足取りで

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虹が象徴する物語5

虹が象徴する物語5

前回までのあらすじ

ODをやめるため、いとこのヘイゼルに誘われて精神科を受診した大学生のリズ。二人は薬をもらい、ヘイゼルのバンでダンプステーションを目指してクリニックをあとにする。

本当にこれでよかったのだろうか。ヘイゼルが運転するバンの中で、リズはまたしてもめんどくさいことから逃げてしまったのではないかと考えていた。ODをやめたいのなら他人とか物質とかに短絡的に頼るんじゃなくて、自分の捉え方

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虹が象徴する物語4

虹が象徴する物語4

前回までのあらすじ

いとこのヘイゼルに勧められて市販薬のODを始めたリズ。
しかしそれを繰り返すのは体に良くないと思い、以前ヘイゼルが通っていた精神科クリニックに二人で来た。問診票を書き終え考え事をしていると、診察室のドアが開いた。

診察室から出てきた女性が二人の受付番号を読み上げ、二人一緒に中に入るか尋ねた。ヘイゼルがうん、と答え、リズはヘイゼルの後に続いて診察室に入った。精神科医は見た目で

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虹が象徴する物語3

虹が象徴する物語3

リズはヘイゼルと出かけることになって楽しみだった。大学でデザインを専攻するリズと違い、ヘイゼルは自らキャンピングカー風に改造した虹色のバンに一人で住み、絵をかいたり作品を作ったり(ODしたり)して過ごしている。収入はネットショップで売るスティッカーやスライムや雑貨、作品の売上金だが、決して多くはない。そんな自由な生活を送るヘイゼルはとてもユニークで、リズはヘイゼルのことが大好きだ。

精神科に行く

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虹が象徴する物語2

虹が象徴する物語2

リズが初めて市販薬のODをしてから3か月がたった。ふとしたことがきっかけであの思考をして、リズの冷静さがめちゃくちゃになるたびに、リズはODをした。普段はあんなにケミカルを摂取することを避け、食品添加物からシャンプー、コスメまで無添加のものにこだわるリズが、かれこれ5,6回も大量に化学物質を摂取するようになった。ヘイゼルが言っていた、「生き延びる」っていうのはこういうことなのかもしれないと思った。

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虹が象徴する物語

虹が象徴する物語

「もらいにいこ、ザナックス。また前の薬くださいって言えばくれると思うから、あの医者なら。リズもついてきてよ。」
ヘイゼルが言う。たしかにザナックスならodすれば楽しそうだ。試して見る価値はある。こうして私たちは、依存性が高い薬をためらわず出すことで有名な、近所の精神科のクリニックに行くことになった。

3か月前のことだった。いとこのヘイゼルが、リズに市販の鎮痛剤のODを勧めたのだ。リズは将来のこと

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虹が象徴する物語 7

虹が象徴する物語 7

前回までのあらすじ
ODや不安の発作に悩むリズは、大学のスクールカウンセリングで相談しようと思い、予約した。今日はその初めてのカウンセリングの日だ。

トラムに揺られながら、リズはドイツ語でアガサクリスティーの伝記を読んでいた。課題のためだが、なかなか面白い。今日の大学の授業は午後から一コマとスクールカウンセリングだけ。リズは早起きをしたので、モールに寄って一休みしてから大学に行くことにしたのだ。

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