#152 想定外の出来事
入居している宿舎の敷地内に
直径2mほどの井戸が備え付けられています。
とはいえ、入居当初からコンクリートの蓋で
覆われたままでした。
宿舎で生活を始めたものの
断水が続くことに悩まされていたところ
この井戸を使えるようにできないか、
管理人さんに相談してみました。
すると、「先ずは調べてみる」とのこと。
調べてみるといっても、
まさか人が入るわけではないし、
調べるための特別な機械を
持っているようには思えません。
ところが自信満々の管理人。
どんなことをするのか任せてみました。
■
数日後、屈強な若者3人が
管理人と一緒に宿舎にやってきました。
井戸の蓋を外し、その横の木の杭を
調整し始めました。
そして、杭に鉄製の円筒状の器具を取付け、
巻き付けてあった縄に大きな砂袋結び付け、
円筒状の器具を回しながら砂袋を
井戸の中に下ろしていきました。
井戸の底に砂袋が着き縄が緩んだ長さから、
井戸の深度が50mほどと分かりました。
すると、おもむろに屈強な若者の一人が
服を脱ぎ始めました。
まさか井戸の中に入る気なのか、
と思いながら見ていると、
そのまさかでした。
縄に木の棒を括り付け、
それにまたがると、
慣れた様子で持ち手に合図し、
スマートフォンを片手に
井戸の底へ下りていきました。
■
井戸の底へ到達すると
ガサガサ動く音が聞こえるのみ。
途中で音が聞こえなくなると
動けなくなったのかと想像して
落ち着きませんでした。
暫くすると井戸底から合図があると
持ち手が一気に器具を回し始めました。
そして、無事井戸底から
屈強な男が返ってきました。
男が撮影したスマホ動画を
見せてもらったのですが、
井戸の底には砂やゴミがあるだけ。
水はありませんでした。
しかし、井戸底の中央には
小さなパイプが立ち上がっていて
その中には水があるとのこと。
ただ、小さなパイプある水だけでは、
汲み上げられる量も知れたもの。
この井戸に関しては
利用できそうもない結果となりました。
■
日本では、このような場合
特殊な機械で調べるのが一般的。
安全を考慮して、井戸の中に
人が直接入ることは通常ありません。
しかし、ここはアフリカの地方都市。
日本のように特殊な機械がありませんが、
代わりに慣習的な方法があります。
ただ、それには危険が伴うこともあります。
想定外のことに対峙したとき、
その人の思いや考え方が見えてきます。
今回の場合、他に安全な方法はなかったか。
暫く悩むことになりそうです。
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