見出し画像

春の息吹

春が息吹けば息吹くほど
 
前途の寂寞せきばくさいなまれ
 
過ごした時間が名残惜しい

梅が蕾をふくらまし頃
 
僕たちは大忙しに
 
最後の時を紡いでく
 
風景の写真は程々に
 
刻んでおきたい友との記憶
 
全員で集まる機会は最後かな?

友人たちと集まるたびに

心によぎる未来の寂寞せきばく

この寂寞せきばくとは一過性

新たな日々が埋めていく

寂寞せきばくを感じた事実こそ

心に閉まっておきたいと思わせる

桜が蕾をふくらまし頃

最後の別れが近づきて

眩しい晴天の真下にて

僕は学生でなくなった

卒業式を終えた後

友人と酒を交わして飲みあって

千鳥足にてカラオケに

時は既に深夜2時

友が3月9日を歌いだす

音と青春が流れゆく

なけなしの金握りしめ

降り立つ先は梅田の地下街

カウンター席のみの居酒屋で

チビチビ飲んだ焼酎の味

始まりは決まって午後二時半

ハメを外して終電帰り

財布の中はすっからかん

大阪から京都への帰り道

火照った頬を車窓に押しつけ

揺れる街を見つめ続ける

馬鹿と無駄に満ち溢れ

今なお覚えるあの青春

感傷でずぶ濡れにならぬよう

マイク奪って歌い出す

僕の十八番「ガッツだぜ」

友人たちと肩組んで

揺れて歌って馬鹿騒ぎ

閉店までは1時間

変わらず肩組み揺れて大合唱

人の肩にぶら下り

時より下を向いていた

まさに新年を迎えるよう

希望と寂しさ織り混じる

跳躍する気分は減っていき

寂しさだけは増していく

誤魔化し叫んだ小一時間

グラスの氷は遠に溶け

鳴り響いた電話音

静かに受話器は戻っていった

大阪の空は曙色あけぼのいろに覆われて

僕は陽に向け背伸びした

いつもより重い右腕振り続け

僕は家路をたどっていった

二日酔いで頭を抱えた新たな朝

覚そうと歩いた近所の川辺

梅は散って桜が咲いた

春が息吹けば息吹くほど

前途の光明こうみょうに胸は高まる

名残惜しさに別れを告げて



僕は出会いより別れのほうが印象深い。

人は別れる為に出会うのではないかと思う。

一期一会は素敵な別れの序章のようなもの。

一昨日、母からLINEのメッセージが届いた。

蕾が開いた梅の花の写真を添えて。

梅の花って桜の前座みたい。

梅は春の訪れを真っ先に知らせ

桜が春を引き継いでいく。

松竹梅、塩梅

中々に燻銀の役割である。

花言葉は「忠実」と「高潔」

目立たずとも忠実に春を知らせる。

高潔な資質を持って、寒い冬の夜を超えて。

桜のような人気者ではなくとも

忠実に高潔に花を咲かせていたい。

あの名残惜しい日々のように

僕が見た梅の花のように

素敵な別れを迎えられるよう。



今週もとらねこさんの文豪へのいざないに参加しました。

テーマは「春の息吹」でした。

春の訪れ時の日光っていつもより
キラキラしている気がします。

アスファルトでさえ、暖かみで照らすというか。
久しぶりの暖かい日光で見え方が変わるのでしょうか。

梅の花、桜などなど自然や生物が動きゆく
春の流れってのも良いものですね。お花見お花見。

皆様に良い春を。

卒業を迎える方はおめでとう。

前回の文章はこちら↓



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?