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「今・ここ」

夢の中にシリーズものがある。【命にかかわる虐待編】と呼ぶ。
恐いゆめ、気味の悪い夢にもいろいろある。すぐ浮かぶのは、ほぼ見なくなったが「略奪者」の夢。

 生きとし生ける者はすべて、略奪者がいることを学ばねばなりません。これを知らずしては、女性は自分自身の森の中でとって食われてしまうこともなく無事にやって行くことができなくなります。略奪者の存在を理解すれば、無邪気さや経験不足や愚かさのせいで餌食になることのない、成熟した動物になれるのです。                    65ページ

『狼と駈ける女たち 「野性の女」原型の神話と物語』
クラリッサ・ピンコラ・エステス
原 真佐子/植松みどり訳
新潮社(1998年)

「略奪者」の夢は本当に恐ろしかったが、『狼と駈ける女たち』が教えてくれた略奪者とわかっていたので、だんだん恐さは薄れて、内面への注意を促してくれるお知らせになっていった。
【命にかかわる虐待編】シリーズはこの「略奪者」の夢とは異質で、後味の悪さが尾を引いた。テーマは一つ。表現はさまざま。
そのときの身体感覚、そのときの感情、そのときの思考はバラバラにされてあちこちに隠された。断片がまとまって夢になることはなく、ドラマや映画を見ている立場だったり、自分が体験していたり、知り合いの体験になっていたり、知らない子の体験になっていたり、実に同じものはなかった。どの夢も消耗したが、自分が体験しているのが、当たり前だけど比較にならない苦しさで、夢の中で覚醒して、夢を止めた。頭がおかしくなると思って必死に止めた。
そんなシリーズもほとんど見なくなってゆき、夢の方でも省エネ志向らしくて、もうあなたこれでわかりますもんねって、提示の仕方を簡素化していったから、たまーに出てきても、動揺することもなくなった。

『身体はトラウマを記録する 脳・心・体のつながりと回復のための手法』
ベッセル・ヴァン・デア・コーク
柴田裕之訳
紀伊國屋書店

数日前、目が覚める間際に【命にかかわる虐待編】が総集編のようにサーッと流れた。速い速い。で、

そういうことがありました。はい、それだけ。

って。プツンって、テレビ消えたよ、みたいになって目が覚めた。
よくわからないけど、とにかく終わったんだな、と思った。
まだ数日しか経ってないから様子見てる。


この本は二度旅に出た。

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