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外伝01~新婚なのに女一人で歩きお遍路~◎お遍路の切っ掛けと導きの鈴

外伝録01(34)
※2017年の歩きお遍路の記録を書いています。
今回は外伝として 歩きお遍路を始めた切っ掛けと、
祖父の遺した鈴についての記録を書きます。
今までの記事一覧はこちら https://note.com/tasoku/n/n5fb3d70e2eed


◎お遍路の切っ掛け、導きの鈴

【四国一周おへんろの旅】
お遍路とは
弘法大師(空海)にゆかりのある四国の札所、八十八か所を参拝する巡礼のこと。
総距離は1200㎞~1400㎞と言われている。
この巡礼では、様々な意味をもつ装備を身に着ける。
↑ しかし無しで巡っても良い。

ざっくりな前振り

1.金剛杖の鈴

修行僧や巡拝者が持つつえ
金剛杖こんごうじょうと呼ばれている
この杖には
「お大師様(弘法大師)と一緒に巡礼している」
という意味があるらしい

金剛杖には鈴がついていることが多い

鈴の音は煩悩を振り払い
 心を浄化する

とか

思いを込めて鳴らすと
 天に届き神様に伝わる

とか

鈴の音色には
 魔除けの力がある

とか言われている

2.お遍路を知る

幼少期
共働きの両親と
多めの兄弟
祖父母の家にいることもしばしば

祖母とは折り合いが悪く
祖父の畑に行くのが好きだった

畑には食べ物があるから

不純な動機で手伝った畑仕事
祖父は色んな話をしてくれて
自然とおじいちゃん子になっていた

祖父曰くいわく
「日本に残る修行(巡礼)の文化
 巡ったからと
 何かが変わるわけではないが
 一度は全てを見る(経験する)のがいい」

唐突に話し出す「おへんろ」の話
初めて聞いたのは
幼稚園のころだったような…
般若心経も教えてもらったが
全く内容は理解できなかった

「できることなら
 すべてを歩くといい」

四国がどこだかも分からず
距離がどれだけなのかも知らない

「何も変わらないけれど
 何か残ることもある」


あまり具体的な話はなかった気がする
けれど
刷り込まれるように
変わり者のワタシは
いつか歩きお遍路に行くだろう
そう思うようになった

「いつか」
というのは定年後のイメージ
漠然と「いつか」は…
と考えていた

3.お遍路へ導く、祖父の鈴

畑に
ウナギの稚魚取りに
タケノコ堀りに
炭造り
さらに犬のブリーダー

時代もあると思うのだが
堅実な公務員をしながらも
活発自由人の印象があった祖父

ガンで亡くなる2週間前まで
畑で沢山のことを教わった

享年86才
棺には約束していた
納経帳と金剛杖を入れることにした

納経帳は
 功徳を積んだ証
金剛杖は
 道中の厄災を払う
さらに
六文銭(を印刷した紙)で
 三途の河も渡れるように。

よし、完璧

と思ったのだが
金剛杖はNGだという

なんということだ
「木だから燃えるのでは…」

思わず物申してみると
ダメなのは杖ではなく
それについている鈴とのこと

金属は骨にくっついてしまうらしい

では仕方がない
取り外しましょう
そうしましょう

無事に祖父を見送り
じんわりくる感情に浸る私


祖母より突如として
罵声を浴びることとなる

慌てて外した鈴は
私のポケットに入っていた

「その鈴はお前のじゃないでしょ」
「おじいちゃんの物は何1つあげないから!」
「ちょっと畑を手伝っていたからって…」

  ・
  ・
  ・

私は幼い時から
祖母と折り合いが悪い

罵詈雑言ばりぞうごんには慣れたもの
いつもなら時間経過を待つ

まぁ、しかし
気分が良いものではない


「おじいちゃんと約束したから
 お遍路に行ってくる」


完全に勢いで言ってしまった
でも
名案な気がした

「お遍路に行くから
 鈴をお借りします
 おじいちゃんとも約束してたから」

本当は
「いつか行こうと思う」
くらいな話だった気がする
でも
死人に聞くことはできない
だから鈴を渡してもらおう

鈴は既製品の杖についていた
ちょっとメッキが剥げた安物

音もしょぼい(笑)

私以外に価値はないだろう
祖母も持って帰って数年すれば
何の鈴なのか忘れてしまうと思う

だったら私が
お手製の金剛杖に
おじいちゃんの鈴をつけて
巡ってこよう

せっかくお遍路をするなら
ツアーではなく 一人で
バスや電車は使わず 歩きで
途中で帰らず 通しで

1か月以上かかるという
通しの歩きお遍路

宿泊や食事など
そこそこお金もかかる

ふと考える

①私は今年結婚する
 家が遠くなるので
 職場を変えようと思っていた

②大学卒業時の借金(奨学金)は
 気合い入れて6年間で返済できた
 それが去年のことである

③結婚式と新婚旅行費用で
 お金を貯めていたが
 どちらもやらないらしい

これは行くしかないのではないか?

鈴は最後の後押し
祖父が亡くなり
お遍路に行って来いと
言われている気がした


半年後、
私は歩きお遍路を始めた

新婚だけど
旦那は置き去りにして

おじいちゃんの鈴と共に



今回は外伝と言う名の補足です。
本編に関係するけど長すぎる内容は外伝録として書きたいと思います。

「20代でどうして歩きお遍路を?」
私は完全に勢いでってことですね(笑)
安物でボロボロの鈴でも、
思い出と一緒だと特別な宝物になりますよね。

この鈴が、排水溝にポチャンしたら…(;゚Д゚)

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