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リコーダーの世界を垣間見る

このところ、本を読むより音楽を聴きに行くことの方が多い。知人友人に誘われてオーケストラを聴きに行ったり、お気に入りのアーティストのライブに行ったりしている。家で一人で録音を聴くのとは違い、ある程度の広さの空間で周りの人と一緒に聴く、というのも楽しい。

なかでも印象的なのは、リコーダーのコンサートだ。

リコーダー。小学校で習う、プラスチックのあれ。あれはコンサートをするような楽器なのか…?実際に聴きに行くまでは私もそう思っていた。しかも、世の中には「プロのリコーダー奏者」という人達がいるというのだから、なおのこと驚いた。そしてどうやら、本来は色々な種類の木で作られるものらしい。
ともあれ、友人に紹介されて、六義園近くの今井館という内村鑑三関連の施設にトリオによるアンサンブルのコンサートを聴きに行ったのが昨年の10月のこと。まったくの素手で聴きに行くわけにもいかないので、多少の予習として何枚かリコーダー奏者のCDを聴くなどしてから出かけた。
当日演奏される曲目についてはほとんど調べずにいたのだが、受付でもらったプログラムを見ると、どうやらルネサンスやバロックあたりの曲が多めらしい。キリスト教に縁のある施設で西洋の古楽を聴くのも楽しそうだ…などとぼんやり考えているうちに、コンサートが始まる。
もう、1曲目から聴き入ってしまった。恥ずかしながら私は音楽を表する知識も言葉も持ち合わせていないので月並みな表現になってしまうが、「こんなに伸びやかで豊かな音色なんだ」というのがはじめに浮かんだ正直な感想である。息を吹き込んで鳴らす楽器なこともあり、息による空気の震えが直接耳に届く感覚も新鮮だった。

そんな初体験を経て、それ以降今まで10回近くリコーダーの演奏を聴きに行っている。
知らなかった世界を垣間見るのは楽しい。楽器自体の音色の豊かさだけではなく、世の中にこれだけリコーダーの奏者や聴衆がいて、コンサートが開かれていることも知らなかったし、プライベートホールという篤志家による施設があることも知らなかった。余談だが、デジタル端末にBluetoothで接続して使える譜めくりペダルがあることも知らなかった。

先日は、東戸塚にあるSala MASAKAというプライベートホールで行われた配信コンサートを観た。1日目がリコーダーの先生(プロ奏者)とその生徒さんたちによる発表会、2日目がプロ奏者3人によるトリオのアンサンブルという構成。実は2日目は、私が10月に聴きに行ったコンサートの(ほぼ)再演、といったプログラムだ。
1日目も「たかが発表会」と侮るなかれ。明らかにレベルが高い。先生がすべての曲に参加しているのもすごいが、生徒さんたちも真剣に取り組んでいるのがとてもよく伝わってくる。そして、曲間に挟まれるお話の時間で、リコーダーの歴史や種類を説明してくれて、たいへん勉強になる。その説明を聴いてから2日目を聴くと、より楽しめるはずだ。私としては、「リコーダーは、教育楽器と古楽器という2つの側面が両立している、稀有な存在」という話が特に興味深かった。
2日目は演奏が良いのはもちろんだが、最後の「アフタートーク」コーナーがまた良い。プロの3人がリラックスした雰囲気で視聴者からの質問に答えるのだが、「基礎練習はどんなことをしているか?」「ソロとアンサンブルでは感覚に違いがあるか?」など、おそらくリコーダー以外の楽器を演奏する人にとっても聞いてためになる話をしてくれている。

そんな充実の配信コンサートだったわけだが、これらは3月10日までアーカイブを公開しているとのこと。誰かとこの楽しさを分かち合いたいので、よろしければぜひ視聴してみていただきたい(プレビューできるYouTubeリンクを貼ると、なぜか動画の途中から始まってしまうことがあり、その場合はお手数ですが巻き戻してご覧ください…)。

【1日目 中村リコーダー倶楽部 オンライン発表会】

〈説明ページ〉

〈YouTubeリンク〉

【2日目 リコーダーアンサンブル トリオ・シークレイン オンラインコンサート】

〈説明ページ〉

〈YouTubeリンク〉


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