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【創作大賞】頑強戦隊 メガネレンジャー(第9話)

9 さらばキューティ

 
(ナレーション)
【魔怪人を倒したメガネレンジャー! 強いぞ僕らのメガネレンジャー!】

 新たな必殺技の威力もあり、強敵魔怪人を倒したというのにキューティは浮かない顔をして少しうな垂れていた。ピンクが笑顔でキューティに声をかける。
「どうしたのキューティ、新しいメガネ良く似合っているわよ」
キューティは下を向いたまま呟いた。
「いつまで、いつまで、こんな戦いが続くの。倒しても倒しても新しい敵、より強い敵が出てくるばかりで、終わらないじゃない。
 最初はただのバイトだったのに、キロバイトになりメガになり、今度はギガだなんて。次はテラ、それともペタ。アタシもう疲れた。ただのバイトに戻りたい。ううんバイトもしないでお家で内職する。メガネレンジャーでもキューティデビルでもなくて、ただの女性として生きていく」

パーーン!

 空気を裂く音が響き、キューティの体が横に吹っ飛んだ。おそるべしピンクのビンタの威力。
「キューティの弱虫。私たちが戦うことを止めたら、視界の、世界の平和はどうなるの。何を考えているのよ」
「アタシは世界の平和より、静かで温かい家庭を大事にしたい。世界を救うヒーローじゃなくて、普通のお母さんになりたい」
「私たちが戦い続けることで、スポンサーさんの商品が売れて経済が循環するの。商品を作る人売る人、それで生活が成り立つ人がいるの。経済的に安定した生活が平和に繋がるのよ。その人たちをどうするつもり。内職だけじゃ経済波及効果が小さいわ」
ピンクが悲痛な声で訴えた。しかしキューティは静かに首を左右に振った。
「これからはコンタクトにして一人で静かに時を過ごす。アタシはもう飽きたの。あなたたちはまた別な敵を見つけ、戦い続けるといいわ」
キューティの目から涙が溢れてくる。
キューティはメガネを外すとレッドに渡し、4人に背を向け歩き出した。

(ナレーション)
【泣くなキューティ さらばキューティ。
キューティ、メガネレンジャー、そして視界の、世界の未来はどうなるのか。メガネを外したキューティ、視界は不良将来は不安。しかし、何よりも解決しなければならないこと。
 キューティ、メガネ無しで車の運転はできないぞ。どうやって帰るつもりだ。君の運転免許証の条件等には『眼鏡等』と書かれているはずだ】
(第9話 おわり)

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