【3分で読める】「窓を開けて/CIEL」を聴いて小説のワンシーンを想像した。【映画大好きポンポさん】

【あらすじ】
今日も地元の映画館は、賑わっている様子だ。
五十人程しか入らないない小規模な映画館だが、音響施設が充実していて評判は高い。それに何より、大きなスクリーンを間近で観られることが魅力的なのだ。

映画を観た後、私は形容し難い感覚に襲われる。
強いて言うなら、「生きていて良かった」がそれに最も近い。
この作品と出会う為に、私は生まれてきたんだとすら思わされる。
だから映画が大好きなんだ。

昔から「眼鏡っ娘」と揶揄われるのが嫌いだった。
PCやテレビモニターの見過ぎで、幼い頃から視力は悪かった。小学生に入る前から眼鏡が必要だったから、きっと親からの遺伝も関係しているはずだ。

オシャレアイテムとして眼鏡をかけている人がイマイチ理解出来ない。わざわざ度の入っていない眼鏡をつけて、何が楽しいのだろうか?装着感が好き、という意見も聞いたことがあるが、邪魔なだけだと気づかないのだろうか。

生まれつき小さな目が、もっと小さく見える。
顔を拭こうとする時、フレームが邪魔。
常に持ち歩かなくてはならないし、荷物が嵩張る。

いいことなんて一つもない。本当はすぐにでもコンタクトレンズを変えたかったけれど、レンズを目に入れる行為がなんとなく不安で、未だチャレンジしたことはない。


…眼鏡を嫌いな理由を延々と語ったけれど、そんな私でも唯一、眼鏡を好きになれる瞬間がある。それは、”映画”を見ている時だ。

映像の細部の描写の作り込みを、より楽しむことが出来る。
色味のグラデーションや、艶やかな光を識別することができる。
時にフィクションの世界は、現実よりもリアルで美しい空間に変わる。
それを体験するためのツールとしては、この上ない味方になってくれる。

今日もいつものように映画館を訪れた。既に一度観たことのあるタイトルだったが、映画館の良質なスピーカーでもう一度楽しみたいと思ったのだ。

座席に座る。この空間には、他の観客達の期待とキャラメルの薫りが漂っている。
右手側にはカルピス。左手にはポップコーン。
よしっ、これで準備万端だ。

映画を観た後は、決まって形容し難い感覚に包まれる。
「誰かと感想を共有したい」ではない。
「明日からも頑張ろう!」でもない。
「生きていて良かった」がそれに最も近い。
この作品と出会う為に、私は生まれてきたんだとすら思わされる。

改札前で誰かを待つ若い学生。
日中の雨で出来た水溜り。
遅延して到着した電車のブレーキ音。
ホームに鳴り響く電子的なメロディ。

普段は全く意識しない事柄が、なんだかとても愛おしく感じられるようになる。そして私は、その感覚を求めて何度も映画を観る。

少し曇ったレンズを磨いて、再び眼鏡をかけ直す。
照明は暗くなり、今日も開演のブザーが鳴った。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
最近上映されている「映画大好きポンポさん」に触発されて、こちらのワンシーンを執筆してみました。シナリオもさることながら、曲や演出、声優さんの演技が素晴らしい作品です。
(既に二度、劇場に足を運びましたが、もう一度観に行こうか迷っています。)

皆さんは、映画や小説、音楽が好きだと思う理由を考えたことはありますか?「なんとなく楽しいから」僕はそれが最も純粋で、幸せな動機だと思っています。だけど、少し深く考察してみるのも、それはそれで楽しかったりします。

民奈涼介


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