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先日、ロボット×心理学領域で働いている人と、ゆっくり話す機会があった。

Phyco-physics (心理を物理の事象として問いていく学問)を、大学院まで学び、今は、企業のロボット開発エンジニアとして働いている人で。

インターフェイスの違いによる、人間の認識の違いを研究したり。「企業のロゴマークのあるなしが、人の心理的価値をどのように生み出すのか」ということ検証したり。あるいは、ロボットと人とのいい関係を築いていくためには、人への理解が欠かせないし、それには心理学が役立つよね。というアプローチをしている話がとても、面白かった。

ロボット✖️心理学と聞いて。一方的に、ロボットに心を持たせる研究をしていると思っていたが、そうではなかった。でも、話の流れで「ロボットに好奇心をもたせるのは、ものすごく難しい」と言う話を教えてくれた。

例えば、知覚。義足や義手などを通じて人間が「素手で何かに触れている感覚」を持たせて、それを、脳まで届けることは、すでに可能になっている。

あるいは、脳の指示(自分の腕を動かすように)で義足や義手を動かせるようなことも、できるようになっている。人間が感じられる知覚(嗅覚、聴覚、視覚など)は、パーツごとには、ロボットの活躍で機能を満たすことが可能になっている。

ただ、そこから、その知覚を特定の場所に集合させて、意味づけをし、「なぜ」を思いついて、なにかにワクワクするところの仕組みは、ものすごくわかってない。

例えば、ロボットが、目玉焼きを作るとする。

ロボットは、半熟とろりの、パーフェクトな目玉焼きを失敗なく作ることは可能になるが。世界一美味しい目玉焼きは、どうやったらつくれるのかということに、問いを見つけて、探究していく。という「好奇心」をもつことは、難しいそうだ。

世界中の目玉焼きの情報とつながっているけれど、好奇心を持って、自分の情報の中に深く潜り、あるいは、その情報の外側にある「未知なる何か」を見つける旅にでることは、まだできない。

ただ、好奇心がないにしても。
例えば、目玉焼きを食べている人の脳波、拍動、熱、言語を集めて分析しながら、目玉焼きの最適解をリアルタイムマーケティングしながら、その最適化を探り、「最高の目玉焼き」作り上げていくことは、可能になる。それも、個人個人の趣味嗜好に合わせながら。

もし、人間の不思議に答えるのが得意で、好奇心も人間のように持つようなロボットが産まれたら。

性能や能力の文脈でなにひとつ人間が勝てるものはない気もする。ただそうなったとて、世界が平和になる方向にー今までがそうであったようにー進むはずだ。

おかげで月旅行にお気軽に行ける未来が来るかもしれないし。家にいながら、毎日三つ星レストランの食事を文句も言わずにロボットが作ってくれるかもしれない。

あるいは、料理人が必要ないレストランが、三つ星を取る時代もくるかもしれない。

文句も言わずに、アイデアも枯れることなく、好奇心があるロボットが料理を作る。そんな未来がくるかもしれない。ただ、好奇心を持つということは「なぜ、私は料理を、つくらなくてはいけないのだろうか??」という問いも生まれるはずだ。

「あなたは料理をするために、つくられたロボットなのですよ」という、人間の説明に対して。

「なぜですか???」というロボットからの返信に。明確な答えを用意できるのかと言えば、できない気もする。

そうなると、「あなたは、あなたの好きなように生きなさい」とロボットを開放する日が、いつかくるのだろうか。ロボットが好奇心を持ったとしたら、そんな複雑な未来がやってくるのだろうか。

ただ、ロボットの未来がどうなるとしたとて、自分がやること、できることはそんなに変わらない。
人は人で、それぞれの好奇心の探究を進めればよい。ロボットの性能が上がるからといって、人間の好奇心が枯渇するわけではない。

ロボットの性能と関係なく、自分の好奇心に基づく問いのなかで生き抜いていくのが、進むべき方向、いい感じに生きる方法としては、それがいいと思っている。

宇宙船の操縦に人の技術が必要だった時代。腕利きの操縦士は「ロボットなんかに、操縦任せられるかよ」と自動操縦に疑問を持つ、宇宙飛行士もいたかもしれないけれど。大切なのは操縦することではなく、宇宙に飛び立つことだと考える人は、それを歓迎する。

操縦は手放したとしても、宇宙からの景色に感動して、そのワクワクした気持ちを誰かと分かち合うことはできる。大切なのは、操縦することではなく、宇宙に行くことだ。

(料理は、どこかに行くための手段かもしれないし、たどり着きたい「宇宙そのもの」でもあるから、それが面白いところだ。)

好奇心は、語尾に「心」がつくように、心のはたらきのひとつで。「心のはたらき」ということは、物質として「これが、好奇心の材料です」という特定の物質を、人間の身体の中に見つけることはできないということでもある。

神経細胞、タンパク質、電荷、ホルモン、言語、思考、記憶、関係性。いろいろな複雑系の作用の結果によって「好奇心」が構成されている。

同じ人が同じ行動をとっても、好奇心が発動する時もあるし、しない時もある。気まぐれでとらえどころがなく、しかしそれは、もっとも大切な心のはたらきの一つでもある。

The more you know, the more amazing the world seems. And it's the crazy possibilities, the unanswered questions, that pull us forward. So stay curious.
あなたが知れば知るほど 世界は驚きに満ちてきます 突拍子もない可能性や 答えられていない疑問は 私たちを前進させるのです だから好奇心を持ち続けましょう 

と好奇心の大切さを説いている。  

(この12分のスピーチ、めちゃくちゃ面白い)

あるいは、仮に死が近づいていたとしても、その時、何が起きるのか。という好奇心は、死に対する、恐怖や悲しみ、苦しみが和らぐことがあるかもしれない。

(孤独や寂しさ、死ぬことについて。その辺の、死と好奇心について考えていたらー西の魔女が死んだーを思い出した。超、おすすめ!)


いろいろなことは、概して好奇心のおかげで、それ以上の大きな意味をもたらす。例えば、「一貫のおすし」は、誰かにとっては一貫のおすし以上の心のはたらきによって、何者でもない若者を、鮨職人としての道に突き動かすかもしれない。

あるいは、毎日沈む夕日、そして、夜がやってきて輝く星の現象に不思議を見つけ、いつか、月に触ってみたいと、本当に宇宙にたどりつくことがあるかもしれない。

ロボットが好奇心を持つのが先か、あるいは「好奇心を持つ生き物」を合成生物学の延長としてつくるのが先か。あるいは、領域を超えた研究で、それが完成するのか。あるいは、完成しないのか。

仮に、そういうことがやってくる時に。
「その不思議さと美しさ」を少しでも感じられるように。何億年も、生命を生命たらしてめているものとしての「タンパク質」について。理解を深めて行きたいなぁと思うのだった。






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