【インタビュー】カーテンコールの重要性?アーティストのためのメンタルヘルス習慣
芸能に特化したメンタルサポートサービスTAP(ティーエーピー)。
第2弾は元劇団四季俳優・現公認心理師/臨床心理士の仙名智子さんへお話をお伺いいたしました。
最終回となる今回は、アーティスト・パフォーマーのためのメンタルヘルスついてお話しいただきました。
アーティストやパフォーマーのメンタルヘルス習慣
――仙名さんのこれまでのご経験や、心理職としての視点も含めて、アーティストやパフォーマーの方の日常的なメンタルヘルスのケアの習慣や、こんなことを心掛けた方が良いんじゃないかなと思うことってありますか?
仙名:そうですね。
自分の心と体を使ってパフォーマンスするからこそ、パフォーマンスを降りた後ちゃんと自分に切り替える時間はすごく大事なのではないかと思います。
例えばですけど、舞台だとカーテンコールってありますよね。カーテンコールって、基本的には役から降りて素の自分になって、1人のアーティストとして最後“見に来てくれてありがとう“と挨拶することですが、”今日のパフォーマンスはこれでおしまいです“ということを、自分の中で心理的にも終わらせる大事な儀式なんだと思うんです。
それはお客さんにとっても同じで、例えばものすごい悲劇の舞台を見て、カーテンコールなく終わってしまったら、お客さん達みんな心がざわざわして帰れないですよね。
その悪役の人のことは一生嫌いになって帰らなきゃいけないですし(笑)。
カーテンコールがあることで、お客さんも“これは物語だったんだ。フィクションなんだ。あの悪役の人は悪い人じゃなくてすごい素晴らしい演技をしてた人なんだ”って安心して帰ることができると思うんです。
仙名:それはお客さんだけじゃなくて、舞台に出ている俳優達も同じで。
“とても苦しい不幸を背負う役だったけれども、これで終わり。これはお芝居でした”。そういう儀式的行為がある事は、心理的にとても大切だと思います。
そんな風に舞台だとカーテンコールというものがありますが、カーテンコールがないパフォーマンスもたくさんありますよね。
その作品に関わっている間は、自分の心の中にずっとその作品がいたりするんだと思うんですけど、自分の心と体を使うという、ある意味自分自身と地続きだからこそ、“今日はこれで終わり”という儀式を持つことは、健康的にパフォーマンスを続ける上ですごく重要だと思います。
このアロマを嗅いだら終わりとか、電車に乗って大好きなYouTuberのYouTubeを見たら終わりとか。本当になんでもいいと思います。
ただそれを無意識にやるんじゃなくて、意識的に”終わりです”という風に自分で終わらせていくという工夫は必要なのかなと思います。
切り替えのルーティンにお酒はOK?より良いストレス対処法
――ありがとうございます。本当におっしゃる通りだと感じました。
思い返すとそのルーティーンを、私はお酒を飲んでオフにしていたように思うのですが、それってどうでしょう?
仙名:適切な量であれば、悪く無い方法なんじゃないでしょうか。
例えば、ストレスに対処する方法として、「コーピング」という考え方があるのですが、その行動でストレスに対処できるなら、どんな行動であってもコーピングはコーピングなんです。なので、お酒で気持ちを切り変えるのも一つの方法ではあると思います。
ただ、より良いコーピングというのがあって。
健康を害さない、人に迷惑をかけない、お金がかからない。
この3つがより良いコーピングだと言われているので、お酒を飲むことも一時的な対処として効果は発揮すると思いますが、それだけを継続的に続けるのは自分の健康を害する可能性がありますよね。
なので、日常的に気持ちを切り替える儀式は別のものにして、お酒は色々あるストレス対処法の一つとして使っていく方がより良いんじゃないかなと思います。
――たしかに。潰れるまで飲まないといられないみたいな状態になったこともあったりして。当時を思い返すと危うかったんじゃないかなと。
仙名:そうでしたか。それ以外のストレス対処法が当時はなかったのかもしれないですね。
ストレス対処のレパートリーを増やせると一つの対処法に依存せずにいられますし、ストレスがまだ小さいうちに早めにストレスに気づけると対処もやりやすかったりしますよね。
どんなことが相談できる?
――ありがとうございます。ほかにも仙名さんに相談できることってどんなことがありますか?
仙名:そうですね。もちろん幅広いご相談をお受けしたいと思っていますが、今は臨床領域として、働く人のサポートに携わる事が多いです。
うつ病とか精神障害になられて休職せざるを得なくなった方の復職支援として、再発を防止するためにどんな心理的スキルや人間関係のスキルを身につけていけば良いのか、より良く働くためにはどうしたらいいか等を、一緒に考えるお手伝いをする仕事もしてきました。
そういった部分は、働くアーティストさんにも共通する部分があると思います。その知見を使ってアーティストさんのお手伝いが出来るといいなと思っています。
仙名:あとは、発達障害をお持ちの方のサポートの経験もあります。
発達障害の診断をお持ちの方の中には、得意なこと、苦手なことのギャップ感を強く持ってらっしゃる方がいらっしゃるんです。
得意を生かしながら、どうやって苦手をカバーしていくか一緒に考えさせていただくようなお仕事をしてきました。
アーティストさんの中にも、突出した高い能力を活かしてパフォーマンスをされている方をお見受けします。
その一方で、得意なことと苦手なことの能力のギャップに困り感を持ちながらパフォーマンスをされている方も、もしかしたらいらっしゃるのではないでしょうか。
ですので、そういった時により良く生きていくための工夫を一緒に考えていけたらいいなと思っています。
――ありがとうございます。
そうですよね。おっしゃるような方は本当にたくさんいらっしゃると思うので、専門的にサポートしてくださる方と皆さん出会えたら良いのになと思います。届けられるように私も頑張っていきます。
仙名:ありがとうございます。
4回に渡って貴重なお話をありがとうございました!
これまでのインタビュー記事まとめはこちらから
▶https://note.com/tap_anchorage/m/ma169bb48bdc2
仙名さんへの相談はTAPアカウントからご予約いただけます。