古賀弘規

古賀弘規

マガジン

  • 小説 コーチ物語

    コーチングのコーチ、羽賀純一。 彼のもとには多くのクライアントがやってくる。 この物語は、羽賀コーチによってクライアントがどのように成長し、羽ばたいていくのかをクライアントの視点から描いた物語である。 現役のコーチングのコーチが描く、人生のエッセンスが詰まった小説です。

  • 幸せな男女関係

    このマガジンでは、毎回幸せな男女関係を築くための考え方についてお届けします。 これから彼氏、彼女を作ろうと思っている方、すでにパートナーはいるけれど、もっと仲良くなりたいと思っている方におすすめの情報です。

  • Cafe Shelly

    魔法のコーヒー・シェリーブレンドを淹れてくれる喫茶店、カフェ・シェリーを舞台とした物語です。 主人公は訪れるお客様。今回はどんなお客様が訪れるのかな?

最近の記事

コーチ物語 クライアント17「届け、この想い」その5

「確か一両前に乗り込んだはずだ。どこにいるんだ、どこに」  とにかく今は石上めぐみさんを探すしかない。さっき見た姿を頭の中でもう一度思い出させる。確か白のワンピースに大きな赤いスーツケースだったな。小走りでまだごったがえしている人をかきわけ、ボクは石上めぐみさんを探すことに意識を集中させた。  この車両にはいない。もう一両前か?  車両の扉が開いた瞬間、お目当ての姿を目にすることができた。 「あの人だっ!」  ボクはすぐにそこへ掛け寄った。 「あの、石上めぐみさんですよね」

    • コーチ物語 クライアント17「届け、この想い」その4

      「トシくん、ミクの代わりに出てくれたんだね。ありがとう」  電話の主は羽賀さん。その声を聞くとなぜか気持ちが落ち着く。 「いえ、たまには恩返しできればと思いまして」 「その気持ち、ありがたく受け取るよ。ここからは呼吸にも影響するだろうからしゃべらなくていい。簡単な返事だけでいいからね」  さすが、自転車乗りの羽賀さんならではの配慮だ。正直なところ、全力ダッシュしているときに電話で話をするのは結構つらいものがある。 「クライアントさんの家のおおよその位置はつかんでいるね。山下公

      • コーチ物語 クライアント17「届け、この想い」その3

        「あらぁ、トシくん。久しぶりね」  ボクを待ち構えていたのは、ミクではなく舞衣さんだった。マイさんは羽賀さんの事務所があるビルのオーナーの娘さんで、そのビルの一階でフルールというお花屋さんを営んでいる。ボクより少し年上で一見するとおとなしそうな人だけど、芯はしっかりとしている。そしてなにより、舞衣さんの入れたお茶は天下一品。一度味わったら病みつきになってしまうほどのものがある。 「こんにちは、舞衣さん」 「あれ、今日は羽賀さんは一日出かけているけど。もしかしてそのスキを狙って

        • コーチ物語 クライアント17「届け、この想い」その2

          「あらぁ、敏博じゃない。早かったわね」  そこには笑いながらお茶をすすっている母さんの姿があった。さすがに目が点になってしまった。 「あらぁじゃないでしょうが。おい、百合、これはどういうことだっ!」  百合をギラリと睨む。すると百合が舌をペロッと出しておどけた顔で登場してきた。 「兄さん、ごめんね。だって母さんにこうしろって言われたからさ」  今度は母さんの方を睨みつけた。 「母さん、冗談にもほどがあるよ。まったく、どれだけ心配したことか」 「だってぇ、こうもしないと敏博は家

        コーチ物語 クライアント17「届け、この想い」その5

        マガジン

        • 小説 コーチ物語
          148本
        • 幸せな男女関係
          25本
        • Cafe Shelly
          1本

        記事

          コーチ物語 クライアント17「届け、この想い」その1

           サイクルショップ・サトヤマ。ここはプロショップとして、地元で自転車を趣味としている人が集まるお店。店内には所狭しと自転車のパーツが並べられている。また壁にはレース用のロードレーサーやマウンテンバイクも掲げられている。  そのお店の隅には、いくつかの写真が並べられている。このショップの常連客が出たレースで入賞した人たちのものだ。それぞれ、トロフィーや賞状を手にしたり、表彰台に上がっているものだったり。  ボクは写真の一つを手に取り、隣にいるもう一人の男性に語りかけた。 「これ

          コーチ物語 クライアント17「届け、この想い」その1

          コーチ物語 クライアント16「落日のあとに」その8

          「あらやだ、もうこんな時間。そろそろ家に帰らないと。子どもたちが待っているわ」  しずえは突然そんなことを言い出した。そして思い出した。私がしずえに最初にあった日も、全く同じセリフを言ったことを。  そのときは、しずえの友達が上手くフォローしてくれた。二人とももう子どもじゃないし、たまには親のわがままで遅くなってもいいんじゃないかって。そのおかげで私はしずえともう一軒はしごをすることができ、さらに関係を深めることができた。  けれど今日はそんなフォローをしてくれる人がいない。

          コーチ物語 クライアント16「落日のあとに」その8

          コーチ物語 クライアント16「落日のあとに」その7

           それからは羽賀さんの協力のもと、計画づくりを進行させた。  まず、しずえはいま自力で歩くことがほとんどできない。そのため車椅子を使っての移動となる。そうなると車の手配やお店の対応が心配となる。  まず車については羽賀さんの友達である唐沢さんが協力してくれる人のこと。大変申し訳ないと思い恐縮していたのだが、唐沢さんはこう言ってくれた。 「いやぁ、こっちこそお礼をしなきゃと思っていたんですよ。先日の神島さんのおかげで、コンサルの仕事が一本とれそうなんです。いやぁ、やっぱ情報って

          コーチ物語 クライアント16「落日のあとに」その7

          幸せな男女関係「「ハイ」とすぐに返事をする これが仲良くやる秘訣です」

           あなたは、パートナーから呼ばれたときにすぐに「ハイ」と返事をしていますか?  または、何か頼まれごとなどをしたときに、すぐに「ハイ」と返事が できていますか? 「ハイ、なんて返事をしたら、相手に服従をしているみたいじゃない」  そう思ってしまう人もいると思います。しかし、この「ハイ」という返事ができていないからこそ、男女間の仲というのはギクシャクしてしまうものなのです。 「でも、そんなふうに返事をしちゃったら、相手の言いなりになっちゃうじゃない。そんなのはイヤですよ」

          有料
          100〜
          割引あり

          幸せな男女関係「「ハイ」とすぐに返事をする これが仲良…

          コーチ物語 クライアント16「落日のあとに」その6

           翌日の朝、羽賀さんから病院へ同行してくれるという電話があった。私もまだ足の捻挫があるため、一度医者に診せなければと思っていたのでありがたかった。  羽賀さんは今度はタクシーで登場。昨日、ミクさんから羽賀さんが以前事故に遭い、それ以降車は運転していないことを聞いていた。この人も辛い思いをしたんだな。 「神島さん、おはようございます。早速病院に行きましょう」  羽賀さんはニッコリと笑って私に手を差し伸べてくれる。その手がとても頼もしく感じる。  病院へ向かう道中、タクシーの中で

          コーチ物語 クライアント16「落日のあとに」その6

          コーチ物語 クライアント16「落日のあとに」その5

          「そっか、神島さんってすごく奥さん思いなんですね。あ〜あ、私もそんなふうに思ってくれる彼氏が欲しいなぁ〜」  食事が済んだ後、ミクさんはデザートのりんごを剥きながらそんな話をしてきた。 「ミクさんだったらすぐに彼氏できるんじゃないですか。かわいらしいし、私はそんな女性大好きですよ」 「うふふ、ありがと。まぁ自転車バカの仲の良い友達はいるんだけど。でもいざとなったら私より自転車をとりそうな気がするしなぁ」 「へぇ、ミクさんにもちゃんとそんな人いるんじゃないですか」 「えへっ、ま

          コーチ物語 クライアント16「落日のあとに」その5

          コーチ物語 クライアント16「落日のあとに」その4

           そのあとは一度家に帰った。そして唐沢さんに私が前にいた会社の事を説明。説明というよりは、半分は愚痴で終わっていたような気がする。だが、残された部下たちの事を思うと、何とかしてあげたいという気持ちも強かったのは確かだ。 「なるほどね、そりゃやりがいのありそうな会社だな。羽賀よぉ、この話、堀さんもかませていいかな?」 「堀さんというのは?」 「堀さんはファシリテーターといって、会議や話し合いを上手にまとめる技術を持った人なんです。ボクも今の神島さんの話を聞いて、まずは上と下との

          コーチ物語 クライアント16「落日のあとに」その4

          コーチ物語 クライアント16「落日のあとに」その3

          「あら、おはようございます」  息を切らして、足を引きずりながらしずえの病室に駆け込むと、そこにはにこりと微笑む彼女の姿があった。私を見て何事もなかったようにあいさつをする。どうやらまだ私のことがわかっているみたいだ。 「あぁ、おはよう」  私はあらためてしずえにあいさつをした。 「あら、今日はお早いんですね」  隣のベッドの患者さん、年齢はしずえと同じくらいだろうか、その女性が私にそう声をかけてくれた。 「あ、はい」 「あれ、足はどうかされたのですか?」  女性は私の足に包

          コーチ物語 クライアント16「落日のあとに」その3

          コーチ物語 クライアント16「落日のあとに」その2

           それから病院の談話室で二人と食事をとった。近くのお弁当屋のものではあったが、いつも食べる食事よりもなんだか美味しく感じた。 「そうですか。こちらのミクさんは羽賀さんのお弟子さんなんですか。お若いのにすばらしいですね」 「いやぁ、すばらしいだって。なんだか照れちゃうな。でも専門学校に通いながらなんで、まだまだ中途半端な弟子ですけど」  ミクさんは自分のことを謙遜してそう言う。が、私から見ればそれはすごいことだ。そしてなにより、この若いミクさんを弟子につけて学ばせている羽賀さん

          コーチ物語 クライアント16「落日のあとに」その2

          コーチ物語 クライアント16「落日のあとに」その1

          <作者より> 今回のシリーズは、再編集をして読み直したときに、思わず涙してしまった。そんな作品です。その8まであるのでぜひ続けてお読み下さい 「はい、そうなんですか。ありがとうございます」  私は深々とお礼をしてその部屋を出て行った。消毒臭い、あまり長くはいたくないその部屋を出ると、目の前には白衣を着た男女がなにやら話をしていた。  もう何度この病院に足を運んだだろう。それもあと僅かであることを今日先生から告げられたのだ。これは喜んでいいことなのか、それとも落胆すべきことな

          コーチ物語 クライアント16「落日のあとに」その1

          コーチ物語 クライアントファイル15「弟子入り志願」その8

          「ボクがどうなれば……」  そうだ、ボクが一人前としてオヤジから認められればいいんだ。でも、コーチングで一人前だなんて、まだまだ遠い道のりだ。しかし別のことなら人よりも自慢できることがある。それは…… 「羽賀さん、今はコーチングでは一人前どころか半人前にも満たない状況です。でも、プログラムの腕ならば間違いなく自信を持って一人前、いや他の人には負けないものを持っていると思っています。これを見せればオヤジも安心するんじゃないかと思うんです」 「なるほど、いい考えだね。今自分が出来

          コーチ物語 クライアントファイル15「弟子入り志願」その8

          幸せな男女関係「イエスと言わなかったらそれはノー、ではありません

           ちょっとお聞きします。「イエス」の反対は何でしょうか?  おそらく多くの人は「ノー」と答えるでしょう。これは正解で間違いないと私も思います。  では「イエス」と言わなかったから、相手の答えは「ノー」なのでしょうか? 「そんなの、イエスじゃないんだからノーに決まってるじゃない」  もしそう思うのであれば、考え方を改める必要があります。どうしてなのか? 「今度の休みに、一緒に旅行に行こうよ」  そうあなたが誘ったとしましょう。しかし、相手の返事はいまいちあいまい。は

          有料
          100〜
          割引あり

          幸せな男女関係「イエスと言わなかったらそれはノー、では…