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静かな時間

 海鳴りが聞こえてくる。

 はじめは何の音なのかわからなかった。

 轟々と遠くから、地鳴りのように、空耳みたいに聞こえていた。

 その音に気づくこともできないくらい疲れていたし忙しかった。
 とにかく余裕とゆとりがなかった。


 轟々、轟々、轟々、...。




 海鳴りが聞こえる家はまわりに灯りが何にも無くて夜はいつでも真っ暗だった。

 晴れた夜空を見上げると、書き割りや映像ではわかりにくい立体的な宇宙が見えて、地球は宇宙に浮かんでいる船みたいだと素直に思えた。

 運ばれているのだ。

 日常から切り離されたような気分は、私に不思議な感覚を自然に持たせてくれたから、その家で暮らすようになってから、私の心は静かに変わった。

 海鳴りが聞こえてくる。

 星の海の中にいたのだということを目の当たりにしながら、私は黙ってそこにいた。

 銀河はいつもそこにあるのに、みんな忘れているだけなのだ。


 海鳴りが聞こえる。

 時間は静かに流れてゆく。


ありがとうございます。 嬉しいです。 みなさまにもいいことがたくさんたくさんありますように。