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探求フェスプレイベント開催レポート【専門家によるレクチャー・対話の時間編】

探求フェス運営メンバーの唯です。
5月6日に開催されたプレイベントの報告レポートも、今回が3回目。これまでの記事は下記リンクよりご覧いただけます。

開催レポート①はこちら👇

開催レポート②はこちら👇

これまでは、開会式・アイスブレイクワークショップ・ドキュメンタリー鑑賞のプログラムを中心にお届けしました。今日は、昼食を挟んで午後に行われたプログラムについてお送りして参ります。


専門家によるレクチャー(講演&質疑)

【一人目のゲスト】堀潤さん

世界各地を飛び回ってお忙しい中、この講演のために駆けつけてくださった堀潤さん

カフェテリアでの昼食を済ませた後は、ゲスト講師による講演のプログラムに。まず初めにご講演くださったのは、フリージャーナリストの堀潤さん。

1977年兵庫県生まれ。ジャーナリスト。2001年NHK入局。 「ニュースウォッチ9」リポーター、「BIZスポ」キャスター等、報道番組を担当。2012年YOUTUBEをベースにした市民ニュースサイト「8bitnews」を立ち上げ、2013年NHKを退職。2020年「わたしは分断を許さない」を出版。

堀潤さんの公式プロフィールより

午前中には、堀潤さんが監督を務めたドキュメンタリー映画「わたしは分断を許さない」が上映されたこともあり、参加者の皆さんも多くの期待と熱を持って臨まれている様子が窺えます。

講演は、堀潤さんが大学時代のエピソードからスタート。大学時代の研究にてメディアの歪みに気がついたこと、NHKの就職面接で日本のメディアを変えると意気込み、入社してからは多数の新番組に関わってこられたことなどを、時に参加者の笑いを誘いながらお話くださいました。

ご自身が手がけた映画「わたしは分断を許さない」というタイトルは、自分に向けた言葉であるというお話も。「知ってて自分で選択することと知らされないで選択することは全く違う。尊厳を傷つけられている。知る権利、行動することに意義がある」「知っていながらも真剣に考えず自分のことを優先している悪意なき無関心や、しょうがないよねの積み重ねが誰かを孤立させる。見なかったことにして生まれる分断は許さない」という、私たち観客やこの世界に生きる全ての人々、そして堀潤さんご自身に向けた想いを教えてくださいました。

堀潤さんが当事者と一緒に伝える市民メディア「8bitnews」や、自分との対話を深めるための、発信しないメディア「わたしをことばにする研究所」の活動も大変興味深いものであり、参加者の皆さんも熱心に耳を傾けます。わたしをことばにする研究所では、まずは私のことをきちんと言葉にすることに注力しており、表に出さないドキュメンタリーを制作するなどして、個人や企業をサポートしているそうです。

さらには、堀潤さんが世界を横断する中で出会った人々の紹介も。ヘラートで被災したサビルラさん、原爆乙女の笹森恵子さんなど、国や出来事として一括りにするのではなく、名前ある一人の人間の人生として、当事者たちである彼らから紡がれる言葉の紹介が続きます。これも堀潤さんが大切にされている、「主語を小さくする」ことの大切さの表れと感じるものでした。

熱心にメモを取りながら臨む参加者の皆さん

堀潤さんの講演の中で印象的だったのは、市民ひとりひとりと向き合って、ひとりひとりが持つパワーをすごく尊重されていらっしゃるということ。私たちは誰しもが当事者であり、その当事者から発せられる言葉には世界を動かすだけの力がある。「道徳的な力がある」日本で生まれ育った私たち当事者が、平和のために一体何ができるのか、何を語るべきなのか、そんなことを考えさせられる時間でした。

最後には、「力を貸してください」という堀潤さんの言葉で締めくくられたレクチャー。私たちひとりひとりが果たすべき責任を、そのお人柄故の温かさはありつつも、確固たる熱い想いとして呼びかけるメッセージでした。

【二人目のゲスト】白川優子さん

ゲストでありながらも一日を通して参加してくださった白川優子さん

続いて行われたのは、国境なき医師団の看護師である白川優子さんのレクチャー。

看護専門学校(4年制)卒業。約7年間看護師として勤務後、2006年にオーストラリアン・カソリック大学看護学部卒業。メルボルンの医療機関で約4年間勤務。2010年、MSFに参加。世界の紛争地にて手術室看護師として活動。著書に『紛争地の看護師』(小学館刊)等がある。

白川優子さんの公式プロフィールより

白川さんは、この講演だけでなく一日を通してプレイベントに参加してくださり、午前中にはアイスブレイクワークショップやドキュメンタリー鑑賞を参加者と共にし、最後の閉会式まで私たちと一緒に一日を過ごしてくださいました。

「日本人看護師が見た紛争地の現実」と題してのご講演でしたが、「それまでの重たい空気を感じて、少し明るいお話にしようかな」とのお気遣いでお話を進めてくださいました。

白川さんは、国境なき医師団の看護師として、これまで10か国に18回派遣されたご経験をお持ちで、外科の経験が長かったというバックグラウンドから紛争地への派遣が多かったそう。現在は、日本で後進育成に当たっています。

7歳の時にテレビで国境なき医師団を見て憧れたこと、看護師になってその仕事を大好きになったこと、26歳の時に国境なき医師団がノーベル平和賞を受賞して夢を叶えようと説明会に行くものの、英語ができないと発覚。そこから4年間英語の勉強を続けてついに切符を掴んだことなど、ご自身が夢の舞台に立つまでのストーリーを実直にお話してくださり、その柔らかいお人柄も相まって、親近感を抱かずにはいられない時間でした。

国境なき医師団は、医師とジャーナリストによって設立された民間組織で、「目の前の命に向き合うだけでは世界は変わらないし命は救えない」という理念から、緊急医療支援援助と証言活動を継続しています。どこともつながらない独立性を守ることで自由を確保し、必要な場所であればどこへでも行くというのが国境なき医師団のスタンス。白川さんご自身も、「国境なき医師団に求められたらどこにでも応じよう」という想いで活動されて来たそうです。

現地での実際の活動写真や、白川さんでしか話せない活動事例の紹介もありました。その中で仰っていたのは、「国境なき医師団の看護師として夢の舞台に立つ喜びを噛み締めながら、それでも紛争地での活動はジレンマを感じるものだ」ということ。

救っても救ってもまた血を流す人が現れて、がんばって救っても亡くなってしまって、また新たに血を流す人が現れるし、空爆の音は止まない。どれだけ命を救うことに尽力しても、紛争を止めることにはつながらないことに葛藤を感じ、一時はジャーナリストに転向しようと考えられた時期もあったそう。
しかし、医療活動を続ける中で出会った相手に対し、「ジャーナリストになっていたら、抱きしめて手を握ることができなかった。出会うこともできなかった」との気づきから、現場の看護師としてやって行くことを決めた、というお話がありました。

参加者の皆さんも真摯な態度で臨まれていました

紛争のない日本で働く私たちとはその重みが違うことは前提として承知しながらも、夢を叶えるまでの経緯や仕事をする上で感じてしまうジレンマ、そしてそれをどう乗り越えたのか、といった話には、多くの共感するポイントもあり、生き方や働き方を考える上での指針を授けてもらったようにも感じます。

白川さんからも、「紛争地でなくても、目の前の人に寄り添い手を握ることはできる。違いを知る、認め合う、寄り添うことが大切」というメッセージが。紛争地に行けずとも、看護師にならずとも、私たちにはできることがあって、そのためにできることは何かを考えることの尊さを考える時間でした。

【三人目のゲスト:今井紀明さん】

趣味がマラソンで、この日の朝も神戸まで走って来られた今井さん

最後に講演を行ってくださったのは、認定NPO法人D×Pの代表・今井紀明さん。

高校在学中に設立した医療支援NGOのため、紛争地イラクへ渡航。その際、現地の武装勢力に人質として拘束され、帰国後「自己責任」バッシングを受け対人恐怖症に。 2012年に認定NPO法人DxPを設立。経済困窮、家庭事情などで孤立しやすい10代が頼れるLINE相談「ユキサキチャット」や定時制高校授業や居場所事業を行なう。

今井紀明さんの公式プロフィールより

今井さんもドキュメンタリー鑑賞の時間からプレイベントの場に足をお運びくださり、堀潤さんや白川さんの講演にも耳を傾けてくださっていました。
共に参加者を見守っていた今井さんから、「インプットの時間が多くてアウトプットが足りていないと思うので、今から3分ほど近くの人と今思っていることをシェアしてみましょう!」という呼びかけから始まったレクチャー。参加者の皆さんも、これまでのドキュメンタリー鑑賞や講演で感じた想いを言語化する時間ができて、どっと安堵するような、肩の力が軽くなるような空気が溢れます。

今井さんが運営されている認定NPO法人D×Pは、子どもたちのセーフティーネットをオンライン上と繁華街で作る活動をされています。大阪と東京の2拠点を構えて今年で13期目。寄付型NPOとして、3,000人のサポーター、110社以上の法人など、多くの人の力によって運営を続けていらっしゃいます。

小中高の不登校者数は過去最多を更新し、虐待や自死、自傷行為、ヤングケアラーなど様々な問題が10代の子どもたちを取り巻いているという現状を、現場で長年活動されている今井さんならではの視点で伝えていきます。

コロナウイルスによる緊急事態宣言下で子どもたちの経済困窮は加速。親に頼れない、親にお金を送っている、社会制度があっても知らない、知っていても拒否感から窓口に相談しに行かない、というのが若者が置かれている状況だそうです。

さまざまな事情から親を頼れない子ども達に対し、「ユキサキチャット」などのオンライン事業と街中アウトリーチなどのリアルの事業の双方で支援を続けるD×P。

大阪のトー横と言われる「グリ下(グリコの看板下)」は、虐待を受けている、家出している、多人数で暮らしている、パパ活でその日暮らしをしているといった少年少女が集まっていて、薬物やオーバードーズが蔓延したり犯罪に巻き込まれたりする可能性が高い場所。そんなグリ下近くにカフェを設置し、個別の面談を行うなどして、行き場のない18歳~25歳のユース世代を支えています。

また、繁華街近くに拠点を構えるユースセンターは、衣食住が整っていなかったり相談できる場がなかったりする若者たちの受け皿として開かれ、エネルギーを溜めて自立に向けて一緒に考える場として、多くの若者が集っています。ご飯を作って提供したり、イベントを一緒に作ったりする他、医療支援や就職支援、福祉制度を頼ることをサポートするなど、人の手を使った援助にも尽力されています。「ユキサキ支援パック」という取り組みでは、現金給付や食糧支援も行っています。

イラクでの人質事件で受けたバッシングからひきこもりの経験があり、「まずは日本の課題から向き合って行こう」という想いでD×Pを立ち上げた今井さん。
日本には5万を超えるNPOがありながらも、そこで従事する人に給与を支払えるような団体は全体の2割であり、寄付で回しているNPOは本当に少ないのだとか。そんな中でD×Pは、月額寄付サポーターを募って回していること、キャッシュフローを明確にして一定額の利益があると明確に伝えることで先行投資に協力してもらっていることなども解説してくださいました。

インプットでパツパツになった頭をアウトプットの時間で少し和らげる皆さん

プレイベントの参加者の中には、「社会のためにアクションを取りたい!」「こんなことをやってみたい!」という熱い想いや志がありながらも、それを事業として形にする術がないという方も多いはず。そんな方にとって今井さんのお話は、想いをどう形にできるのかという視点でも多くの学びを得られるものだったのではないかと感じます。

家はあるけど生活が苦しくて、だけれど助けてと言えない。一人で閉じこもってしんどい状況にあるユース世代は、100万人以上いるそうです。そこに何とかリーチしてリソースを割くことがこれからの展望であり課題であると語る今井さん。今井さんの熱のこもった語り口に参加者の皆さんも心動かされる様子が伝わってくる時間となりました。

D×Pでは、月額寄付サポーターとして10代の孤立を解決する仲間を募集しています。現在、月額寄付サポーターは3,000人を超え、1万人を目指していらっしゃるとのこと。下記リンクよりサポーターについての詳細が確認できますので、ぜひご覧ください。


対話の時間

テーマに沿って自由に想いを言葉にするために用意した模造紙

3名のゲストによる熱いレクチャーが行われている裏で、同時に設けられていたのが「対話の時間」。自由に対話ができる部屋として一室を開放していました。

これはプレイベント全体を通して設置していたものではありますが、対話の部屋に置かれたのは、「今、感じていること」「今日の学び」「気になるテーマ」など、いくつかのテーマが書かれた模造紙。さまざまなプログラムや他者あるいは自己との対話を通して感じたことや考えたことを、思い思いに付箋に書いて貼ってもらいました。

対話の時間で繰り広げられた堀潤さんとのフリートーク

また、対話の時間ではゲスト講師との交流も活発に行われ、堀潤さんと参加者が円になって自由に対話をするという夢のような時間もありました…!講演を聞いて感じたこと、質問したいこと、一緒になって考えたいことを、ゲスト講師とリアルに対話できる貴重な機会に、運営メンバーも大興奮のひとときでした。

(次回へ続く)


【参加者募集中のイベント】

*探求フェス交流会*
日時:5月26日(日)18:00-21:00
場所:MIX BAR VOX
〒160-0022 
東京都新宿区新宿2-11-7 第33宮廷ビルB1F
新宿三丁目駅C5出口徒歩1分またはJR新宿駅東口徒歩10分
参加費:3,500円(飲み放題付)
定員:22名
※お酒を出すお店ですので、未成年の方のご参加につきまして不安な方はご相談ください。

*オンライン説明会*
6月3日(月)・7月10日(水)19:00~20:30

*探求フェスメインイベント*
日時:8月25日(日)~8月26日(月)
会場:長瀞げんきプラザ
埼玉県秩父郡長瀞町井戸367
各SNSのDMまたはメール(pcptankyu@gmail.com)にてお申込みください。

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