苦手な営業マンと私の303日【地元工務店で注文住宅を建てた話】
28歳で建てたマイホーム、今年の夏で築2年になる。
2年点検という節目の年に全てを書き残すことで、彼らとの思い出に区切りをつけたいと思う。
この話は
【前編】我が家の建築が始まるまでの話
【後編】完成した家の話(工事中に起きた問題、ボロが出た箇所について)
2部に分けて記していく。
今回は【前編】我が家の建築が始まるまでの話
一つ、念頭に置いて欲しいことがある。
「なぜこの工務店にしたのか」これはよく聞かれる質問だが、答えは、欲しい土地が建築条件付きだったから。「この土地を買ったら3ヶ月以内に我が社と建築請負契約を結んでくださいね」というもの。つまり、私たちが選んだわけではなく、土地を決めたら家を建てる会社まで決まってしまったということだ。
ちなみに、大手ハウスメーカーではないため工務店と呼んでいるが、私の住む地域ではテレビCMを流すほどの中堅ビルダーである。
胡散臭い彼は営業部長だった
3年前の夏、実家近くの土地が販売されていることを知った私は、土地を販売している工務店のモデルハウスを見に行くことにした。当日私たちを出迎えてくれたのが、後に苦手な営業マンとして書かれることになる彼だった。
彼の第一印象は、胡散臭いバム。(子ども向け絵本、バムとケロのバムに顔が似ていた)以降、私は彼をバム様と呼んだ。
胡散臭い心象となった原因の一つ、バム様はとても饒舌だった。そして饒舌にもかかわらず質問の答えが的を得ていないタイプだった。
こちらは数千万の借金を負って建てる家、不安なこともある。契約前には聞きたいことも沢山ある。が、バム様は「大丈夫ですから!」「大丈夫なので安心してください!」「私が嘘言ってるように見えますか?!」と、大丈夫の3文字だけで全てを乗り切っていたのである。
そして問題は、彼が営業部長だったことだ。
インスタの家づくり系アカウントの投稿で見る【担当営業NG〇選】や【こんな担当はダメ〇選】の末尾には「担当を変えてもらったよ!」とか「営業が新人だったので上長に変更になりました!」などと書いてあるのだが、なんとバム様は各支店もまとめる営業部長だった。
そのため、私たちに担当者チェンジの選択肢はない。
苦手な気持ちを抱えながら、私たちの家づくりは始まったのであった。
あの言葉を思い出させてくれた彼
営業部長のバム様は時に、デリカシーがないただのオジサンだった。
モデルハウスで真っ先に説明されるのは「ここではこんな家を作ることができます」だと思う。他社のモデルハウス見学でも、外観や間取り、採用できる住宅設備などの案内を受けた。
バム様のそれが他社と違ったのは、施工例の間取りに、施主の名前が夫婦フルネームで記載されたままだったこと。
挙句、「このご夫婦よっぽど仲良いみたいで~。子供はいらないそうで~。変わってますけど今の時代ならアリなんですかね~」などと、彼のご意見まで付け足してくる。
彼の中で、子供部屋を作らずにシアタールームを作ったそのご夫婦がよっぽど忘れられないのか、子どものいない私たち夫婦に笑いながらその発言ができるバム様はなかなかデリカシーのない男とみた。
後で気づいたのだが、彼は子どもとか女性とか、昨今の風潮を意識しすぎて空回りしていたのかもしれない。
建築業界の「女性」に何かステータスでも感じていたのだろうか。「女性」だから細やかな配慮ができるという考えは古いし、「男性」だから家事ラク間取りの提案ができないなんてことはない。私たちが女性でお願いしますと一度も言ったことはないが、バム様からのメールにはいつも「女性」が付いていた。
自分の発言がブーメランしてしまう一面もあった。
私たちの契約予定は秋だった。契約したあとすぐに着工できるハウスメーカーがあると聞いていたのでその話をバム様にしたところ「冬に基礎工事する会社なんてやめたほうがいいですよ!」「わざわざ冬に着工する会社はコンクリートに薬混ぜてますから!」と言うではないか。
「資金がカツカツだから真冬でも仕事しないと抱えてる職人を養えないんですよ!」「冬に着工するなんて施工会社の都合です!」と力説するバム様はいつになく真剣な眼差しで、こちらも(私たちの家のこと真剣に考えてくれているんだなぁ…)と胸を打たれたのであった。
が、そんな彼は契約後の2022年1月、「大工の手が空いたので今すぐ着工しましょう!」「え?冬の着工?何か心配あります?」などと平気な顔で言ってきたのである。人変わったんか。
バム様は他にも、自分の発言ブーメランに何回もブチ当たっていたり、私たちとの待ち合わせに45分遅刻してきたり。気になることは多々あったがバム様が申し訳ないなんて顔をすることは一度たりともなく、めげる様子もなかった。
私自身も不動産営業をしているので、バム様の言動でいつも思い出していた言葉がある。「営業はメンタルが強くないと続かない」
バム様に出会って、昔教わった言葉の意味をやっと理解できた気がした。彼ほどメンタルが強くないと、住宅営業の営業部長は務まらなかったのかもしれない。
バム様とその仲間たち
バム様の話からは逸れるが、インテリアコーディネーターは苦手という域を超えていた。
インテリアコーディネーターといっても、インスタで見かけるような大手ハウスメーカーのインテリアコーディネーターとは違う。なんと言えばいいか…何かアイデアがあるわけでもなくいつもこちら側の喋ったことを復唱する、ただカタログを持ってくる担当になった人だと私たちは認識していた。
性格のいいオバチャンではあったが、私たちのアパートの部屋番号を間違えて他人の家にクロスのサンプルが届いたり、メールの読み違いをしたり、こちらの希望を早とちりしたり、見積書の金額が間違っていたり。
インターネット上にセンスのいい素人が溢れている現在、正直ダントツで担当チェンジしたかったのはこの人だった。
しかし私たちは我慢した。性格のいいオバチャンに酷なことは言えない。じゃあ誰に言えばいいのか?担当営業であるバム様に相談できる雰囲気はない。
担当の営業マンが苦手というのは、こんなところにまでしわ寄せが及ぶのだった。
我慢に我慢を重ね、楽しいはずの家づくりは段々インスタに工務店の小話を載せるためのネタ探しになっていった。
しかし私はこう見えて(?)、口コミサイトや工務店のGoogle等に悪評を書いたことは一度もない。そのワケは、設計士の存在だ。
バム様が散々アピールしていた「女性の一級建築士」とは一度も会うことはなかったが(話が長くなるので割愛するが作られた間取りは散々だった)、私たちの家づくりに実際に携わってくれた「男性の二級建築士」がとても信頼できる人だったのだ。
※一級建築士と二級建築士の違いは主に、設計できる建築物の規模の違いなので、2階建ての一般住宅を建てる施主にとっては何も問題ない。
契約後に登場したこの設計士は私にとって唯一頼れる人となり(この話は後編で詳しく書こうと思う)、彼が対応してくれるうちはやめておくか…という自制になったので私が口コミ爆書き女になることはなかった。
担当営業マンが苦手でも
バム様との打ち合わせは思っていたよりもあっというまだった。彼も彼で「大丈夫」だけでは納得しない施主の私が苦手だっただろうし、早く終われと思っていたのはお互い様だったかもしれない。
ある日突然モデルハウスに行って営業部長のバム様を引き当てた私たちは、アタリだったのかハズレだったのか。
「営業ガチャ」という言葉のように、誰だって数千万円のガチャガチャはしたくない。庶民には人生で一度しかやってくることのないマイホームの打ち合わせ、なぜ苦手なオジサンと我慢して過ごさなければいけないのか。
しかし私は、家づくりの知識を深め施主力を上げておけば担当営業が苦手くらいはどうにでもなると伝えたい。(3500文字も苦手な営業マンについて書いたくせに)
逆に「この人の性格が良かったから!」と、営業マンの人柄だけで契約を決めるのは安易だとも思う。営業マンが家を建てるわけではないし、営業マンが好きでも苦手でも家の性能は変わらないからである。
インスタでよく見る「優秀な営業マンを紹介します」とか「我が家の担当営業に繋ぎます」といったサービスを利用できる人は良いが、我が家を建てた工務店のような大手ハウスメーカーではない会社はその界隈の選択肢にすら入っていない。そうは言っても、大手ハウスメーカーを選ばない施主は沢山いるだろう。
では担当営業が苦手な人だった場合、どうしたらいいか。
乗り切るのだ。根性で。
そして設計士でも、インテリアコーディネーターでも、工務店の中で自分たちの味方になってくれそうな人を探す。
施主と施工会社の関係性で味方というのはあまりしっくりこない言葉だが、こちら側の話を客観的に聞いて判断してくれる人のことを指す。
これは私自身が一番分かっていることだが、いくらSNSで晒そうと、フォローが集まろうと、現実では施主一人が足掻いたところで何の力にもならないからだ。
そして忘れてはいけないのが、家に直接影響を及ぼすのは誰か。現場監督である。現場監督がどういう人か、現場管理は出来ているのか、見極められる施主が最終的には強いと思っている。
次回、我が家の現場監督がついに登場。
こちらもまたクセが強かった。バム様との関わりは一旦終了となりめでたく着工したのだが、私たちにとってここからが本当に怒涛の家づくりとなる。
後編では、我が家の施工写真付きで現場管理を見るポイントやボロが出た箇所を記していこうと思う。
地鎮祭には、私の父と母も来てくれた。
現地に来た父(上着はユニクロのフリースに下はただのジーパン)を見てバム様が一言。
「えぇ~ッ!お父様オシャレですね!アパレルのお仕事してるんですか?!なんつってアッハッハ~」
やはり苦手だ。
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