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奥野宣之「読書は1冊のノートにまとめなさい」読書感想文

官本は古い本ばかり。
昭和に発刊された戦記モノも多い。

そのうちの1冊で、未決囚のときに読んだのだけど、題名は忘れてしまったけど、シベリア抑留の本があった。
57万余人が抑留されて6万余が死亡したというシベリア抑留の体験記。

その本では、そういう極限状態で気がしっかりしていた人とは、なにか物を作っていた人が目立ったと書いてあった。
工芸や手芸だったり。
もちろん筆記もあるし、木彫りなどもある。
要は、手先を動かす類のもの。

体が頑丈なだけだったり、気が豪快なだけでは、あるいは、どんなに崇高な理念や、深い家族愛を持っていたとしても、生き残るのとは別だという。

モノを作る、あるいは創る、また造るというのは、なにかあるのかもしれない。

そこの箇所と感想と、冬に読んだことだけは覚えている。
それから筆記をはじめてみた。

きっかけとなった本なのに、なんという題名だったか。
覚えてないのが悔やまれる。


この本を選んだ理由

受刑者となってから、8ヶ月くらいまでは雑居。
真面目にやっていると、制限区分というのが “ 2種B ” になって独居になる。

それから、読書録を書きはじめた。
書きはじめたのは、本を読めば読むほど、以前に読んだ本の記憶が、上書きされてしまうように感じていたからだった。

それに、よっぽどの印象がないと、題名だって内容だって忘れてしまう。
それか、どれがどの本だったのか、要旨がゴチャゴチャになっている。

読書録を書いて、1年が経ち、2冊目となっていた。
書いてみると、頭に残るようになったのを実感できるようにはなってはきている。
自分なりに工夫して、それなりに書き方がまとまってきたけど、なにか迷いがある。

そんなときに、官本室で見かけてタイトルで決めた本。
どこか参考になれば、と借りてみた。

ソフトカバー|2013年発刊|288ページ|ダイヤモンド社

※筆者注 ・・・ 読んだのは完全版ではないほうです。2008年12月16日発刊|211ページ|Nanaブックス|となりますが、絶版となっているのか、ネットで見あたらないのです。表紙は似ていたと記憶してます。

感想

新しい読書方法が示された思いがした。
実践できる技もある。
非常に役に立った本。

ただ発刊が2008年のため、ネットの活用については、1部にしか使えないが、それ以上にヒントに溢れているので残念には感じない。
ノートでのアナログな方法が、そもそもがネットがない環境の受刑者には多いに役に立つ。

ツールをつかった読書方法

本書はノート術ではあるが、読書に使えるツールもいくつか紹介されている。
イラストや写真も多数あるので、しっかりとメーカーと商品名まで紹介されている。

とにかくも、なによりも良かったのが耳栓。
刑務所でも耳栓は購入できる。
雑居房で、他人のいびきを防ぐために購入したものだけど、まさか読書にも役立つとは気がつかなかった。

さっそく耳栓をして読書してみると、すごくいい。
すごく集中できる。
なんで今まで気がつかなかったのだろう!

集中しすぎて、気がつけば就寝の消灯となって、慌てて木綿布団を敷くことすらあった。

あとは、キッチンタイマーを使う読書方法も紹介される。
まずは、1時間にセット。
一心不乱に斜め読みをする。

タイマーがカウントダウンしていくのを横目でみながら、ペースを考えて斜め読みしていくと、決まってタイムアップの3分前くらいに読み終えてしまうから不思議、とのこと。

ここではタイマーが使えないのが残念。
時計で試してみたのだけど、やはりタイマーのカウントダウン表示でないとピッチが上がらないようだ。
ここを出たら、斜め読みするときには実践してみたい。

そのほかのツールとしては “ 平置き本棚 ” がある。
本を立てて置くのではなくて、横にして置く本棚。
縦置き型でスタイリッシュである。
こういう本棚があるのを知らなかった。

古典を読む方法

古典は読んだほうがいいといわれる。
それはわかっているのだけど、なかなか読めない。
そういう気持ちがくすぶっている自分だった。

そこに著者は、古典を読むコツは「ズバリ、おもしろくなるまで積んでおく」ことです、と断言する。
古典は、身近に置いておくと、突然に面白く読めることがあるとも。

それで思い出した。
誰だったか忘れたけど、作家だったと記憶しているけど、1472年発刊のダンテの「神曲」を10年間机の脇に置いていて、ある日、突然に読めるようになったと読んだことある。

著者は続ける。
なぜ、こんな不思議なことが起きるのか?
それはきっと、古典が時の試練に勝った本だから。
普通の本が猫だとすると、古典は化け猫みたいなもので、もはや本の範疇を超えている、としている。

これは実践したい。
もちろん、ここを出てからだけど。
すぐに形から入ってしまう自分は、読める読めないは別にして、もう真似したくなっている。

10年間手元に置いて読めるようになった・・・なんてサラリと言ってみたい。
いかにも読書人みたいではないか!

インストール・リーディングとは?

「本の内容が思い出せない」という人は、着実に記憶に残るようになる、という “ インストール・リーディング ” を著者は紹介している。

1番目は探すこと

読んだのに残らない。
それは読んでないのと同じ、と著者はいう。
読みっぱなしにしない、というのが趣旨である。

まずは “ 探す ” こと。
作家別、テーマ別に「探書リスト」を作成する。
時系列に書いていき、日付、タイトル、作家、キーワードと一覧にする、という方法だ。

「あのくだりをもう1度読み返したい」と困っている人は簡単に参照できるようになる、ともある。

「探書リスト」は参考にした。
真似するように「読書リスト」というノートを1冊つくった。
探すもなにも、元となる知識がないからだった。
まずは、作家名と代表作のタイトルだけでも、広範囲に覚えることが先だった。

「読書リスト」の左半分には、五十音順に作家名をインデックスして、右半分には代表作を1つか2つ。
回覧の読売新聞にある『名著60』は、すべて記入した。

刑務所は得れる情報が少ないので、どんな小さなことでも、関連することは追加して書き留める。
手書きだから、自由に書き足せるのがいい。

3年目には、日本人作家と外国人作家を分けて2冊にした。
気になっている本の情報や内容を、いつでも自由に引っ張り出せるのがいい。

2番目には読むこと

次には “ 読む ” こと。
だけど目的を変える、と著者の言。

目的を「読了する」から「読書ノートを作る」に変える。
そうすることで、自然と読書のアプローチが変化してくる。

「読んだから読書ノートを作る」のではなくて「読書ノートを作るから読む」にする。

目的を明確にした、主体的な読書ができるようになる。
本で読んだ情報を確実に自分のものにできる。

抜き書きからはじめる

著者は “ 抜き書き ” を奨める。
概要は以下である。

まずは自分の感想を意識して読む。
そして読書ノートには、抜き書きをしてみる。

「要約でもいいのではないか?」という声もある。
けれど、要約は難しい。
実際にやると、抜き書きよりも、要約のほうが頭を使うのでやめたほうがいい。

抜き書きを奨める他の理由として、あとになってから、本文からの引用なのか、自分の要約なのかもわかる。

抜き書きするのは、自分が「おお!」と思った箇所がいい。
これが、結果的に再読につながる。

大事なのは、あくまで「自分の」心が動いたところ。
とことん主観で読めるのは、研究者でも編集者でもない読者の特権なので全力で享受したほうがいい、と著者がいう内容は具体的だ。

この箇所も真似して、新たな「読書録」のノートは、全力で主観で書くようにした。
たしかに要約は難しいが、時間をかければできるものなので、抜き書きはしなくなっていった。

自分の知見が覆された箇所こそ重要

著者は「繰り返しになりますが」と “ 抜き書き ” を奨める。
概要は以下である。

もうひとつ、抜き書きするのは「なるほど」ではなくて「言われてみればそうだ」という箇所にしておくべき。

読んでいて「そうそう」とか「わかるわかる」というのは気持ちがいいけど、その実、あまり新しい知見にはならない。

自分の考えが覆されたり、認識が揺さぶられた箇所こそが重要で、抜き書きしがいのある箇所となる。

この箇所も参考にして、読書の選本は「そうそう」となるだろう本と「言われてみればそうだ」となるだろう本をバランスよく交互にするようにした。

「知る」ことについて

主観的に本を読む。
で、抜き書き。
自分の感じたことを添える。
それらが「知る」ことに繋がる。

まとめるとそういうことである。
当たり前のことかもしれない。
勉強するのにノートは基本かもしれない。
が、学校教育をまともに受けてない自分は、すごくためになった1冊だった。

なんにしても、読書録を書いてよかった。
もっと「知る」ことができるかもしれないと希望が湧く。
惜しむべきは、この知識欲を、あと10年、いや20年くらい前には持ちたかった。

そして、さらにそこからは、自分なりに考えてアウトプットすることを著者はお奨めしている。
概要は以下である。

物事をよく知っている人だから、講演したり、本を書いたりできるのではない。
できなくても講演してみたり、無理でも文章を書いたりしているうちに、より高度に「知る」ことができる。

潜水艦には “ アクティブ ” と “ パッシブ ” の二つのソナーがある。
アクティブソナーのほうは、自分で出した音波が跳ね返ってくるのを計測する。
パッシブソナーは、対象の船や潜水艦が発する音をキャッチする。

※ 筆者註 ・・・ ここまで読書録をキーボードしておきながら、そのあとが書いてないのに気がつきました。おそらく就寝時間がきて、あとで書こうとして、そのことを忘れているのです。インプットとアウトプットの関係を、潜水艦のソナーに例えていた気がします。尻切れトンボな感想文にはなりましたが、アウトプットのコツとして「締め切りを設定して書くこと」も感じてるのもありまして、このまま note の【公開設定】をクリックする次第です。


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