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【書評】デヴィッド・グレーバー『万物の黎明』

 「現代の社会的不平等の起源はどこに?」

 それを解き明かそうとしたのがこの本だ。著作者の立脚点は人類学。

 「人類史のなかで、なにかがひどくまちがっているとしたら――そして現在の世界の状況を考えるならば――そうでないと見なすのは難しいのだが――おそらくそのまちがいは、人びとが異なる諸形態の社会のありようを想像したり実現したりする自由を失いはじめた時から始まったのではないか。おそるべき想像力の欠落、貧しさ。人類はもっと豊かな社会像を持つことができるはず。現代のヒエラルキー、支配、国家のビジョンそれらは悪夢である」

 そう。現代は悪夢の時代だ。なにかがひどくまちがっている。過去に正解が隠されていないか?彼はそれを調べ、こう述べる。

 「もしわたしたちが正しくて、人類は、過去四万年ほどをかけて、さまざまな社会組織のあいだを往復し、ヒエラルキーを築いては解体してきたとするならば――それは金で買われたことのない学者たちの見解の正しさを裏づけている。かつて国家なき社会があり、そこに属した人びとは、政治的意識にかけて、現代人より劣っていたどころが、現代人よりはるかに高かった」
 
この解は有力ではないだろうか。著者は例証を試みている。

 「ある社会の究極のカチ意識を知りたければ、その社会が最悪の行動と考えているものを見るにこしたことはない。それが人類学のセオリー。人に命令を下すことは人肉を食べるのと同じほど深刻な暴挙だと、今に残る少数部族は教える」

 わたしたちはどこで間違ったのか?「移動する自由」や「命令に従わない自由」そして「新しい社会を作る自由」を取り戻そう。

万物の黎明 人類史を根本からくつがえす (翻訳) 単行本(ソフトカバー) – 2023/9/21

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