【書評】ロバート・パットナム『われらの子ども』
著者は言う。
「私は『孤独なボウリング』で米国人のコミュニティが確実に衰退していることを明らかにする証拠を積み上げていった。棟上げ会、アップルカッティングパーティ、草の根運動、パブ、選挙投票率、宗教団体、どれも減少の一途である」
そしてこう指摘する。
「リベラル民主主義の成功と思われたものが実は社会制度の解体であり、社会的、文化的前提が風化してきたと疑うに足りる現象が起こっている」
著者が子どもだった1950年代のアメリカは、経済と教育が拡大し、所得平等性は比較的高く、居住地域や学校における階級分離は低く、市民参加や社会的連帯の程度は高く、低階層に生まれた子どもが、社会経済的なはしごをよじ登るための機会は豊富だったという。
だが現在、持てる子どもと持たざる子どもを隔てる社会格差は大きくなった。今日のアメリカ人は他者との関わりを減らし、社会的孤立へとひきこもっている。
インターネットについてはどうか。それは富める子どもと貧しい子どもの間にあるネットワーク形成の格差を縮める助けにならないか?
「誰もがこのメディアの恩恵を受けているわけでもない」というのが研究者たちの意見だ。かたや教育的、社会的利用、かたや娯楽とレクリエーション。
「鍵は教育」それが著者の持論だ。かつて公教育を協力に推し進めた主体は全米の地域コミュニティだった。著者は言う。「我が国の歴史の中d、え社会経済的格差の拡大によってわれらの価値観が脅かされたのは初めてではない。それは克服できる。その根底には、他人の子もわが子と同じという感覚がある」
著者は愛国者だ。そう強く感じた。
われらの子ども:米国における機会格差の拡大 単行本 2017/3/27
われらの子ども:米国における機会格差の拡大 | ロバート・D・パットナム, 柴内 康文 |本 | 通販 | Amazon
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?