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【書評】白川静『字統』の理念

 白川静とは何者だったのか、中国人がなし得なかった感じの体系的な成り立ちを明らかにした人だ。
 甲骨文字から現代に到るまで、感じは3500年の歴史を持つ。象形がいまに生きている。そのなりたちから現在と未来の姿を展望すると、何が見えるか。
 「象形文字は世界の模型だ」と白川は言った。「文化の上からは世界は、印欧系、アラブ系、東アジア系に三分され、うち東アジアだけが最も原始的な文字を持つ。そして宗教を武器とせず、古いアミニズム的新興を生き続けている」それが彼の世界像だった。
 過去を掘り下げることは未来を掘り出すこと。彼がとった方法はそれ。甲骨文のたんねんなトレース。そして解明。「看護の難解さは克服されるべきだ。それを体系的に理解できれば、東洋の回復が果たせるし、ひいては新しい世界概念を作り上げることもできる」
 そして白川は辞典を作った。漢字文化の承継者である日本人が、自らを見つける指標となるように。彼は言う。「日本人は自分の素性を知らない。いまの日本は過去を切断している」と。
 現代の日本では、漢字はもう借りものではない。それは音訓アレンジで国字となっている。しかし劣悪な改変も行われてきた。彼の辞典はそれを正す。
 『字統』には7千字近くが収録されている。白川いわくそれは「字源の解明を試みた書」である。甲骨・金文などの資料をもとに構成された大著だ。「方法的な処理を語ることがなければ、彼らは十分にその生い立ちを語ってくれるはず」という信念にもとづき、彼は「三十年近い間、その世界に沈潜した」のだ。孔子は革命家だった。「狂者は進み手取る」と齢六十で宣した。白川静もまた。 

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