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【書評」デヴィッド・ハーヴェイ『資本論入門』 

 よく見かける啓蒙書のひとつとして読んだ。おかげで頭の中が整理された木がいた。それらを書き並べてみる。
 まずはマルクスの考えの要所はどこかということだが、著者によればつぎのこと。
 (一)貨幣がどのように古代の共同体を解体し、自らが共同体的な存在になっていったのか。
 (二)商業の発展は必ず使用価値から交換価値へと向かうものなのか。
 そしてマルクスの考えが及ばなかったことが今日出現しているのだが、それは何かといえばつぎのこと。
 (三)水や空気までが使用価値と交換価値を持つようになった。
 (四)産業資本主義(19世紀)が金融資本主義(20世紀)に姿を変えた。
 それらの変遷から導き出される資本主義の現在の到達点はつぎのようなもの。
 (五)天然資源の商品化
 (六)労働力の商品化
 (七)人間関係の商品化
 とすれば現代という時代は、マルクスが言う「資本主義がそれ自身の内に統合できない状態」を迎えていないか?そう結論づけていいと思う。ならばただちに革命の遂行を。だがそれはこの本の結論ではない。ハーベイはあえて穏当な診断にとどまる。
 「最初に仕掛けてきたのはブルジョワだったのに、プロレタリアは正面切って反撃しなかった。だから階級闘争は方向がそれてしまった。依頼どっちも資本主義への順応の道をまっしぐら。それが現代の実相だ」
 ともに手をたずさえて地獄行き。そうかもしれないし、そうならないかもしれない。革命がどんなにくねった道筋をたどるか、それは誰にも見通せない。

〈資本論〉入門 単行本 2011/9/25
デヴィッド・ハーヴェイ (著), 森田 成也 (翻訳), 中村 好孝 (翻訳)

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