そろそろ選挙ハックは止めないか?

お掃除系の会社で働いている。与えられた職務はブルーワークなお仕事だ。単純作業を毎日。今日も明日も明後日も。とても安定した生活を送らせてもらっている。

給料は良くはないが、悪くもない。平々凡々を求める僕にとっては最高な仕事だと思っている。けれども人気はない。いつも人材不足。この話を聞くたびに給料の大幅アップに期待してしまうが、一向にその気配はやってこない。

本社のデスクワーク組はこう言う。「この仕事は誰にでもできるものではない。頭も使うしやり甲斐のある仕事だ。その魅力をアピールすれば人は必ず集まるはずだ」と。いろいろとツッコミどころ満載である。

この仕事は誰にでもできる仕事だ。パート社員さんも多く、皆活躍されてる。即戦力になる方も珍しくない。頭を使うかもしれないが、圧倒的に体の方を使う。そもそもそこにやり甲斐うんぬんは関係ない。どう思うかは個人によりけりだ。

本社のデスクワーク組は現場仕事から逃げた者が多いと聞く。その彼ら彼女らが現場仕事の魅力について語っていることが一番のツッコミどころなのである。案の定、先のニュース報道にも噛みついていた。

某県の知事さんがやらかした。公の場面で職業差別とも取れる発言をしたらしい。それはブルーワークを下に見てると思われても仕方のない発言だった。

各業界から批難の声があがる。私達は頭を使っていると。僕はその声に違和感を覚えた。ツッコミどころはそこでない。

ここは資本主義国だ。百歩譲って職業に優劣があるとしたら、それは社会に対する貢献度で決まるだろう。頭を使うかどうかは関係ない。頭を使わない仕事をしてても胸を張っていいのだ。

そう考えれば企業と役所は戦っている場所が違う。同じ舞台に並べること自体がおかしいのだ。

それならば職業差別と思わても仕方ない言葉にツッコめばいいのかと言えば、それもまた違う。よくよく考えてみてほしい。なぜあの問題発言をする前にこうなることが想像できなかったのか。

それは人間だもの、仕方ない部分はある。けれども政治家さんは危機管理能力も問われる仕事なはず。言ってみればその道のエキスパートだ。

そんな方の政治生命を掛けたボケに対しては、的確なツッコミを入れるのが礼儀だと思う。「思っとけ」。スマホのニュース画面につぶやいた。それが僕の礼節である。

今回の騒動の根本的な原因はなんだろう。そう問うたとき、被害者には有権者と彼の支持者も入ると思う。

もちろん彼の言葉で傷つけられた人が一番の被害者なのだが、彼に票を入れた人たちや、彼が取り組んでいた問題の解決を待ちわびてる人たちにも、とばっちりがおよぶ恐れは大いにある。

だがしかしだ、彼を過度に擁護するつもりはないが、ある程度は仕方ないことだとも思う。いわゆる構造的な問題がそこにはありそうだからだ。

理想の政治家さんの姿を想像すると、僕だけかもしれないが、そこには冷徹と穏やかを合わせ持った人物が浮かび上がる。

政治とは決断の連続だ。ときには冷たい人と思われることもあるだろう。その逆も然り。最適と思われる決断をしたとき、周りの反応はそんなもんだ。決して評価は偏らない。角度が変われば冷徹に見えたり穏やかにも見える。理想の政治家とはそのような姿だろう。

つまりはミクロとマクロの視点を同時に持ち合わせることが求められる。それを可能にするのは経験だ。だが経験とは実体験の経歴だけではない。思考の経歴も経験に入ると思う。どれだけ広く深く考え込んだかが問われるのだ。

現場へ行かなくても、当事者と話さなくても、世代が違くても、相手の気持ちを鮮明に想像できる人が理想の政治家だと思う。

もしも限りなく優秀な政治家が複数人いたら、彼ら彼女らの決断は似たようなものになるだろう。けれども最後の最後で違った決断になるのは、その政治家の主観まみれの理屈無き直感によるものだと思う。選挙で選ぶポイントもそこでありたい。

だから絶対に争いは起こらないはずなのである。「私はそっちを我慢してこっちを優先させたけど、あなたはこっちを我慢してそっちを優先させるのですね。その気持ちわかります。だって私もそこで悩んだのだから。」と、なるだろう。

あくまでも限りなく優秀な政治家が複数人いたらの例え話ではあるが、その状態も理想の政治だと思う。

だが、そのような理想の政治家を選び出すことは難しい。仮にすべての有権者が優秀だとしても無理だと思う。人は合理的な自分に惹かれてしまうからだ。どうしてもミクロ視点での合理性で選びたくなってしまうだろう。

けれども今の選挙の仕組みはそれを可能にしてくれている節があると思う。選挙は金だ。資金力が当選に直結する。一見すると社会の闇のようにも見えるが、これはこれでベストではないにしろ、ベターな方法にも見えてくる。

お金とは信用だ。信用あるものにお金は集まってくる。集めるためには知識と経験、行動力が必要だ。それを満たした人がお金持ちと言っていいだろう。そんなお金持ちは理想の政治家になれる素質を持っていると思う。

自由と平等を基に誰でも政治家になれる仕組みではあるが、選挙とお金の関係が一種のフィルターになっているので、自然と理想の政治家に近い者が選ばれる仕組みになっているのだ。

過去はそれでよかった。だが今はその仕組みも崩壊しかけてるとも思える。

お金の稼ぎ方もそうだが、選挙に勝つためのハック技術が向上しているからだ。おそらく「お金持ち≒理想の政治家」の図式も成り立たなくなっているのだろう。某県知事さんの問題発言の背景にはそのような事情があったのかもしれない。

なにもハック技術が悪いわけではない。むしろ有効に使った方が良いとさえ思っている。名も無い者が挑戦するときには希望の武器となるだろう。ただハック技術はハック技術だと認識したうえで使って頂きたい。

知ってて使うのと知らなくて使うのではわけが違う。知ってて使うのであればそこには迷いと葛藤もあるだろう。そこに倫理は生まれるのだ。最近読んだ漫画が教えてくれたことだが、それこそがルールを作る政治家にとって一番大切なことだと思う。

そして僕ら有権者も候補者の使うハック技術はハック技術だと認識しておいた方がいいだろう。

「あなたに寄り添います」は誰かには寄り添わないことだ。「若い人の味方です」は老人を敵に回すことだけではなく、全体を眺める視点は捨ててるということ。「分かりやすい政策」ではなくプロにしか分からない結果が最良となるような複雑で難解な政策を実行してほしい。

優しい言葉には裏がある。それでも候補者が優しい言葉を使うのは、そこに当選の道筋があると思われる。

街中で名前を多く表示させれば、無意識にその名前を投票用紙に書かせられる。音声で名前を連呼するのも効果的だ。実際に会って握手するのも良い。すべては心理学で裏付けされた方法と言われている。

政策や信念を伝えるよりも成果に繋がりやすいだろう。有権者の心をコントロールするのではなく、行動をコントロールするのだ。選挙で勝つためのハック技術とはそういうものと思っている。

とはいえ僕にできることはなんだろう。とりあえずリニア新幹線には乗ってみたい。そのとき乗車賃がすこしくらい値上がりしてても文句は言わないでおこうと思います。

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