肴は揺らめく炎でいい

お掃除系の会社で働いている。仕事は毎日変わらない動きをするルーチンワークだ。無口で喋らない奴である僕にとっては天職である。

けれどもプライベートな僕は草野球部に所属している。ポジションはベンチだがキャプテンだ。幹事という名の雑用係でもあり、20数名の選手を束ねるボスなのだ。

業務は多岐にわたる。旅行やアクティビティの企画立案も兼ねている。もちろん夏にはBBQ大会も開催する。

一番に苦労するのは日時の決定だろう。とりあえず適当な日にちを投げて反応を見るのだ。ありがたいことに大半の選手は参加に前向きなので、すこし無理してでも当日は空けてくれる。全体の8割も参加可能ならその日に決定だ。

数名には個別で連絡をしておく。肉の調達に長けている者には良いものをお願いしておくのだ。お酒が飲めない者には当日の車の運転もお願いしておく。キャンプ道具を持っている者にもだ。

稼ぎの少ない者には会費を低く設定しておく。その代わりゴミのお土産付きをお願いする。

あとは数人で当日の段取りを共有しておけば大丈夫。何事も準備が必要。仕事ではなく遊びだからこそ本気にならなくてはいけないのだ。

当日の買い出しは楽しい。財布係の僕は必ずその班に入る。スーパーで飲物、食物、おやつを買物。ほとんど値札は見ない。量だけはチェックしておく。

リスク管理は最悪を想定するのが定石。この場合の最悪は食べ物が足りなくなること。すこし余るくらいの量を買い出し、あとは余った食材の利用方法を考えておくのだ。大概は貧乏で独り暮らしの者に引き取ってもらう。彼も喜びwin-winだ。

他店で花火も買っておく。最後に吉野家で白米をゲットし、買い出しは終了だ。

会場にはすでに先遣隊がいるはず。準備を終えて、買い出し班が来るのを待ちわびてることが多い。人が多く集まれば優秀な人もいるわけだ。買い出し班の到着がBBQのスタートの合図なのである。

僕がキャプテンなためかパリピ的なBBQにはならない。どちらかというとしっぽり話し込むタイプの会となる。究極的にはBBQも要らなかったりもする。ただただ外でお酒が飲めればいいだけの会。それがうちの特色だ。

その理由は僕のキャラだけではない。強力な焼肉奉行がいるのも原因のひとつだと思っている。食べたいけど怖いのだ。だからそこそこ食べ終わると皆鉄板から離れる。花火をしながら喋ったり、ローソクの炎を見ながら呑んだりする時間が訪れるのだ。

これは幹事として申し訳ないと思う一方で、これも恒例の行事ということで放置させてもらっている。きっとそこに居心地の良さを感じてる者は僕だけではないはずだ。

『肴は揺らめく炎でいい』。けれどもそれだけを目的にしても面白くない。予定を立てて、買い出しをし、焼肉奉行が大暴れするというくだりが必要なのである。

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