「夫婦で起業」のリアル。
⾼校現場へ最新のキャリア教育や進路指導、教育改⾰などの情報を届けるリクルートの教育専⾨誌「キャリアガイダンス」の2024年1月号に、なんとTamariBaar代表のインタビューを掲載いただきました。
今号のテーマ「余白が生む未来」の特集「キャリア編~人生の余白~」の中で、キャリアに余白を取り入れている社会人にインタビューする企画として取り上げていただきました。
私たちの考える"余白"については、よろしければ本誌(PDFでこちらから全編無料で読めます)をご覧ください。
片付けコンサルタントのこんまり先生など、他にも豪華な面々のインタビューが盛りだくさんなのでぜひ!
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ところで、TamariBaarの運営会社である株式会社オンテンバーの社員は3人で、うち2人が私たち夫婦です。
令和の時代に夫婦で会社をやっているのはわりと珍しいのか、イベントにゲストとして呼ばれたり、何かしらの媒体に紹介いただくこともあります。
そしてみなさん、やたら「美談」にしてくださいます。
「夫婦で会社をやるなんてすごいですね!素敵夫婦ですね!」という声もしばしばいただきます。
一度「ビジョナリーカップルですね」と言われた時は「ビジョナリー」の意味が分からずアンジェリーナジョリーが脳裏をよぎりましたが、なんとなく相手に聞けず、曖昧な笑顔で返しました。
なお、その裏に「うわ〜・・・夫婦で会社なんてよくやるよね〜ありえね〜私には絶対無理〜」という本音が漏れていることにも、もちろん気づいておりますよ。
ただ、家族で仕事をするのが珍しくなったのはここ1〜200年の間で、それまでは八百屋さんやら魚屋さんやら、家族経営が一般的だったはず。
なので「夫婦で会社をやるなんて珍しいね!」と言われると、困惑します。
せっかくなので、令和の時代に夫婦で起業した私たちのリアルを記載したいと思います。
先にお伝えしておきますが、美談も面白みもありません。出川さんの「リアルガチ」ってやつです。
▶︎【リアルその1】ワークとライフがバランスしない
これが、一緒に会社を始めて一番変わったことです。
ワークとライフは一切バランスしません。
例えば、日々こんな感じで過ごしています。
ワークとライフを完全に切り分けるのはどんな仕事でも難しいと思いつつ、夫婦で会社をやると、切り分けられないにも程があります。
オンとオフをしっかり分けたい方には絶対におすすめできません。
▶︎【リアルその2】一緒にいる時間が長すぎて自我を失う
同じ会社で働いているので当たり前ですが、朝から晩まで一日中一緒にいます。
「よくそんな長い間一緒にいて大丈夫だね」と言われますが、大丈夫ではありません。
大体大丈夫じゃなくなるのは夜なので、夜中に会社(築48年、小さな窓がひとつあるだけの八畳の事務所)に逃げ込みます。
深夜1時ごろに備品の引き出しにひたすらテプラを貼ったり、ファミマの麻辣花生を貪りながらラジオを聴いている時間が至極の時です。
ちなみに知人の起業家カップル(ともに別の会社を経営する経営者同士)が「六畳ワンルームに一日中一緒にいる」と聞いた時は、ただただ尊敬しました。上には上がいる。
▶︎【リアルその3】会社を作ったのに自分の会社の仕事ができない
夫婦のどちらか一方が起業した場合、もしそのパートナーが安定した会社で働いていれば、家計への影響を多少抑えることができます。
ただ、私たちの場合は一緒に会社を作ってしまったので、2人分の役員報酬を、ほぼ売上0の会社から捻出する必要がありました。(なんなら3人目も創業時から一緒にやっているので、3人分・・・)
もちろん、捻出できませんでした。
引っ越したり(正確にはもといたマンションの家賃が払えなくなり、親族が昔住んでいた空き家に転がり込んだ)、保険プランを下げたり(老後が怖い)、毎日水菜(近所の激安スーパーは水菜が異様に安い)を食べていました。
それでも捻出できないので出稼ぎをしていました。なんなら今でも少ししています。
会社を作ったのに自分の会社の仕事ができないというのは、なかなか逆説的であり、哲学的にすら感じます。
そう考えると、某ホテルを多数経営されているあの経営者ご夫婦は本当にすごい・・・私もまずは帽子を買うところから真似しようかな・・・。
▶︎【リアルその4】仕事中の夫婦ゲンカがえぐい
小さなイライラが積もり積もってパートナーに爆発するときってありませんか?
そういうときの夫婦ゲンカってなかなかえぐいですよね。
あれと同じことが、家だけでなく職場でも起きるんです。
先日も全社員(3名)で販促活動について話していた時、私が「近隣にチラシを配布しよう」と提案。パートナーは「その方法はコストパフォーマンスが悪い」と反対。
ここで普通ならどちらかが相手の意見を呑んだり、双方が歩み寄ったりしますよね。
でも、私たちはお互い一歩も譲りません。
その上、なぜかそういう時に限って「あなた、いつもリビングに入る時のドアを半開きにしたままで暖房効率を下げているよね」みたいなプライベートのプチイラ案件が思い出され、イライラが増幅されるのです。
販促活動とエアコン効率には何の関係性もないのに。
一触即発、事務所全体が緊迫した雰囲気に包まれます。
そんな時、もう一人の社員はどうしているのか。
険悪な空気を明るくさせようと話題を変えたり、どうしたらいいのかとオドオドしたり、どちらかの肩を持ったり、はたまた別の提案をしてくれるのか。
何もしてくれません。
なんなら「はい、また始まったー」みたいな顔をして無関心。
タバコをふかし、ダンマリを決め込みます。
八畳の事務所で2人がケンカ、1人が沈黙。無音。地獄。
これがリアルです。
▶︎【リアルその5】ケンカが長引かない
ケンカは激しいですが、良かったこともあります。それは、「ケンカが長引かなくなったこと」です。
かつては「ケンカをすると数日気まずい」なんてことがありましたが、一緒に会社をやってからはケンカが長引くことはありません。
なぜなら、喋らないと、仕事が一切進まないからです。
いつの間にか、どちらも自分の非を認めずに(そこは譲らない)なんとなく雰囲気をもとに戻す術を身につけたように思います。
「ケンカが長引いて困るな」というカップルの方は、一緒に事業をやってみると良いかもしれません。
ただし、ケンカの総数は圧倒的に増えます。
▶︎【まとめ】超長期的に考えると夫婦円満になる可能性がゼロではないと言えなくもない
「夫婦の危機の始まりは夫婦間の会話の減少にある」とどこかの偉い学者が言っていたのをテレビで見た、ということを知り合いから聞いたことがあります。
その観点からいくと、夫婦で起業は家族円満につながる可能性があります。
一緒に会社をすれば、夫婦間の会話がなくなることはあり得ないからです。
つまり、超長期的にみると、夫婦円満に近づく・・・のかも・・・しれません。
以上が、私たち夫婦が今感じている「夫婦で起業のリアル」です。なお、全て個人の感想です。
ご夫婦で起業されても夫婦円満な方はいらっしゃるでしょうし、最初から売上絶好調でうまくいっている方もいるでしょう。
そう、ただただ私たちがポンコツであるということを露呈するだけの時間になりました・・・。
最後に個人の感想ついでに思うのは、夫婦で起業するよりも、夫婦に囲まれながら仕事をする3人目の方がよっぽどどうかしていると思います。私たち夫婦より、彼にインタビューした方がおもしろい話が聞けると思います。(彼には心から感謝しています。)