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夢のつづき

「おおきくなったらモーニングむすめになる」

幼稚園の卒業アルバムに書かれた、大人になったらなりたいもの。ケーキ屋さん、お花屋さんといった6歳児に人気の職業が並ぶなか、私の夢はアイドルだった。

…と、思いきや、これは私の夢ではない。母に「モーニング娘。って書こうよ」と勧められて書いたものだ。

幼稚園の年長だった2000年に、モーニング娘。がリリースしたシングル曲は「ハッピーサマーウェディング」「恋愛レボリューション21」など。4期生として石川梨華・加護亜依・辻希望(のぞみ)・吉澤ひとみが加入した年で、まさに黄金期の絶頂。

幼稚園の運動会では「LOVEマシーン」の音楽に合わせて、大きなバルーンを使ったお遊戯をした記憶がある。

とはいえ、モーニング娘。を知っていたのは、カセットテープに録音されたアルバムが車内で永遠に流れていたから。つまり、完全に親の影響。

それから14年の年月が流れ、2014年に私はモーニング娘。の沼に落ちる。

きっかけは、在籍日数最長(※当時)の道重さゆみが卒業されると知ったこと。道重は6期生としてモーニング娘。に加入した、ギリギリ黄金期と呼ばれる世代の最後のひとり。

「ああ、黄金期にいたメンバーがついにモーニング娘。から1人もいなくなってしまうんだな…。」

そんな風に思って、何の気なしに「道重さゆみ卒業コンサート」のDVDを買ってみた。

2014年のモーニング娘。は、道重以外は子どもの集団。高橋愛や田中れいなといったベテランメンバーが相次いで卒業し、入れ替わりで加入した9期10期生は最年少で11歳。グループ全体の平均年齢は15歳。中学生が集まったようなアイドルグループだった。

しかし、とてもそんな風には思えない歌唱力、ダンス力。何より伝わる熱意に一瞬で目を奪われた。そして、ひたすら過去の動画を見まくった。

  • 口パクを一切せず生にこだわった歌

  • 1mmのズレもない見事なフォーメーションダンス

生歌にこだわるあまり、時には音程がはずれたり声が裏返ったりすることもあるが、それもまた醍醐味。その1回限りでしか見られない未完成のパフォーマンスだ。15歳前後の彼女たちはまだまだ未熟な部分がありつつも、たくさんの鍛錬を重ねて成長していく。

そして、その成長を見届けることに大きな意味があるような気がした。

モーニング娘。は完全実力主義で、歌割も歌唱力によって配分される。うまいメンバーは当然たくさんのパートがもらえるし、そうでなければ出番はない。

2024年現在、グループのリーダーを務める生田衣梨奈(いくたえりな)は、50枚目のシングル曲「One・Two・Three」で1文字しか歌割をもらえなかった(しかも、その1文字は2番のサビにあるため、披露する機会はほとんどない)。

彼女たちは学校に通いながらレッスンに明け暮れ、土日はイベントやライブの日々。1日オフの日は年間で数日しかないらしい。文字どおり、青春をすべて捧げてアイドル活動をしている。

そんな彼女たちがひとつ、またひとつ階段をのぼっていく姿を見ると、おこがましい話だが、親のような気持ちになって涙があふれてくる。

なかでも、忘れられないのは2019年に開催された夏フェス、ロッキンジャパン。乃木坂46やももいろクローバーZといった、人気アイドルが東京ドームや国立競技場でコンサートを開催する中、近年ハロプロアイドルの最大の会場は日本武道館だった。

そんなモーニング娘。が、ロッキンジャパンの最も大きなステージで入場規制をかける事態に。モーニング娘。のファンだけが来場するコンサートではなく、たくさんのアーティストが同時に出演する夏フェスで、だ。

人で埋めつくされた会場を見たメンバー達の、夢を叶えた瞬間の表情が忘れられない。

エモい、なんて言葉じゃ表現できない、熱い何かが胸にこみあげた。

(ちなみに、この年のロッキンジャパンで彼女たちは、40℃寸前の炎天下でほぼMCなし50分間ぶっ続けパフォーマンスをした結果『体力おばけ』『もはやアイドルではなくアスリート』と伝説を残した)


結婚生活4年目に入った夫との出会いは、大学時代の友人と訪れていたビールイベント。グラスとウインナーを持って、座席を探していたところ、のちに夫となる男性から「ここ空いてるよ~」と声をかけられたのがきっかけだ。

夫予定の彼とはオクトーバーフェスト以降も連絡をとったり、たまに食事をしたりする仲になった。

そんなときに開催された私の推し、工藤遥の卒業コンサート。デビューしたときはランドセルを背負っていた推しの集大成を見逃すわけにはいかない。会場チケットの抽選は外れたが、ライブビューイングのほうは確保できた。

はりきって2枚購入したものの、周囲にはモーニング娘。好きどころかハロプロファンもいない。そこで、夫予定の彼に「一緒に行かない?」と声をかけてみた。

夫予定の彼は当時、モーニング娘。やアンジュルムといったハロプロアイドルの存在は知っているがメンバーは誰ひとり知らないレベル。

「今のモーニング娘。って知らないんだよね」

そんな返事がくるかと予想していたが、二つ返事で同行を決めてくれた。

「いいね!行こう行こう!」

それだけでなく、おすすめの曲を私に聞いて、コンサートまでに予習してきてくれた。

それまでLINEを返すのすら面倒だったのに、この瞬間から彼がとてつもなく輝いて見えるようになった(単純)。

そんな相手にコンサート当日、涙と鼻水でグチャグチャになった顔を披露するはめになったのは言うまでもない。

もし、モーニング娘。への興味が親からの影響で終わっていたら。
もし、私の偏愛になっていなければ。

今の私の隣に、最愛の相手はいるだろうか。

Discord名:遠藤たまこ
#Webライターラボ2405コラム企画

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