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肌年齢0歳の皮膚を持つ40代の女


めちゃくちゃ肌がキレイなアラフォーをイメージさせるタイトルで誘い水。

わたし今、0歳の皮膚を持っている。



持ってはいることにウソはないが悲しきかな…
それは美しき顔の話ではなく、膝こぞうの話。

とある雨の日の朝。


その日、雨が降っていることに気がつかず出勤時刻になってはじめて本日の天気を認識してしまった。

お天気の日には自転車で通勤している。

歩いても行ける距離なので当初から雨を認知していたのならば、徒歩バージョンの時間に家を出たのだけど…時すでに遅し…

時間はギリギリ自転車バージョンで迫っていた。

わたしは元々、雨の日に自転車に乗ることが出来ない人間なのだ。

雨ならば歩く。どこまでも。

雨の日には自転車のカゴまですっぽり覆うような縦長の特殊な形のレインコートを装着した人たちとよくすれ違う。

カバンや足元まで全てを覆いながら、どんな悪天候にも関わらず移動手段として自転車を外さない強者を見かけると凄い!

雨ニモマケズ…
どうか無事に行先に着きますようにと祈る。

それがまた前後にはお子さん付きならほんとに頑張れーと心で応援しかない。

普段はそんな私も悠長なことは言ってられない。

自転車まで丸ごと覆うタイプのレイコートは持ち合わせていないので、ここでは自転車傘差し片手技法を使うしかない。ついにその時がきたのだ。


出来る人には容易いこの技法。素人には中々難しい。

出がけに遅出の主人が見兼ねて、
「送ろうか?」と声をかけてくれた。

本来なら、ありがたすぎる神の一声。



が…その日、朝からしょーも無さすぎるいさかいがあった。
今となっては、何かも思い出せない。

だからきっと、とてつもなくくだらないどーでもいいことだったのだろう。



「負けだ!」

ここでお願いしたら、負けたことになる。

なんの勝負がさっぱりわからない戦いがそのとき、自分の中で始まっていた。

全然大丈夫じゃないのに…

「平気やから」プイっと言い捨てる。



雨の中、不慣れな技法を駆使しようとしたのが失敗だった。

いや、そもそも意地はって一勝負挑んでしまったのがそもそもの間違いだった。



半分ぐらい行ったところで、なんだ雨でも自転車乗れてるやん!

一瞬の心の隙が生まれたその数秒後、悲劇は起こった。

登り坂の途中の雨にぬれた点字ブロックに前タイヤがギュルンとスリップして大ごけした。



体もろともカバン、その中身、ポケットの中のiPhone、傘全てがずっとんでいった。

挙句…右ズボンの膝がかじられたように無惨に破け強打した膝からは流血。

お気に入りのズボンはもう二度と履けないパンクなやつになってしまった。

あまりの悲惨ぶりに行きずりの方々が雨にも関わらずわたしを取り囲んでやれ自転車をおこしてくれたり、荷物を拾い集めてくれたり助けてくれた。

遠くまで転がって雨に撃たれていたiPhoneまでご丁寧に拾い上げてくれた。


みんなに集まって貰いながら
「…大丈夫ですか?」と声をかけていただいた。
ハッキリ言って大人がコケる姿って目の前でみたらコワイよね。引くよね。

単純に危ないし、そして子どもと違ってすんごい、かっこ悪い。

雨の中皆さんの貴重な通勤や通学時間に足を止めてもらっての介抱に感謝を伝えて、大丈夫です。
ありがとうございましたとペコペコ頭を下げて赤い顔をしながらそそくさと自転車を走らせた。

もちろん、傘技法はこれにて封印。

後半の道のりは雨に打たれながら痛さに増すのは恥ずかしさだった。

体のダメージわたしこけちゃったの精神的ダメージ

そして、その恥ずかしさに増すのが主人の好意を自分の意地で足蹴にしてしまった後悔だった。



バチがあたったと思った。


喧嘩して腹たってる相手に優しい言葉をわたしは掛けれないちっさい人間。

すでに最初から勝負は決まっていたのだ。
主人に完敗。


そんなことを反省しつつアクシデントに見舞われながらも、ギリギリで職場に到着。遅刻は免れた。


職場についたら本当はこんな事があったのだーーと話したくなったのだけど、自分の器の小さが露見するのが気まずくて黙った。

それに春は繁忙期。無駄話なんぞする時間もなく、1日流血の膝をノールックで勤めあげた。

職場では気をはっていたので、少しジンジンするかな?ぐらいの膝が帰宅して確認してみると結構ホラーの領域まで肉が出てる。

それでもコケたことを主人に話すことが高いプライドが邪魔して言えなかった。家族にも言わなかった。


適当にマキロンで消毒して、キズパワーパッドでもはりゃー治るかと甘く考えいた。



がしかし…一向に治る気配を見せない。しだいに膝が悪臭を放つようになる。

弱気になって長女に膝臭くてやばいかもと相談。
あまりの悪臭と傷の具合に長女がドン引きしている。

あかんそれは!と強いお叱りをうけ。怖くなり急いで病院に駆け込んだ。

先生からは初期の対応がかなり悪く傷が悪化してる。
小石も奥に入り込んでいる。
これは素人に消毒も難しい状態やから通院するように言われた。

それから1週間も膝の怪我ごときで通院する羽目になってしまった。



怪我して改めて気づく。膝って、実によく使う部位なのだ。

掃除中には膝つき雑巾がけがマストなわたし。あかん…いたい。
息子に雑巾をポイッと託す。床ふきあとは頼んだ。

毎日の日課のヨガも膝を駆使する動きだらけだ。

座禅1つでも膝がの皮膚がピンとはるからこれまた痛い。


そんなこんなで1ヶ月が経過。

膝の活躍の多さに、なかなかかさぶたが定着し無かった。
やっとのことですごい大きな塊のカサブタが誕生した。

できたらできたで取りたい願望にかられる。長女に取ったらあかん!と怒られるから自制していたら、いつの間にやら気づいたらスボンの中で取れていた。

自然に取れるぐらいならいい頃合でで自分で剥きたかったとちょっぴり悔しい。

かさぶたがとれた右膝に現れたのは0歳の皮膚。

左膝は約40年私の動作を支えてくれた痕跡が刻まれている。
その差は歴然。
年齢差40..


0歳の膝はとても繊細。

デリケートなお肌なので未だに右膝に体重かける動作をするとイタタタが出てしまう。


家族にまだ傷痛いん?長すぎやろ?とつっこまれるたび、
「だって、だって0歳やから。まだ赤ちゃんやから」
をくどいぐらい何回も繰り返す。

あぁ…せめて皮膚年齢差15歳ぐらいまで分厚くなってくれないかな。

心余すことなく床ふきとヨガがしたい。

風呂に浸かるたび柔いピンクの左膝を眺めながら思う。


つまらん意地と雨の日の自転車傘差し片手技法にはくれぐれも気を付けなくてはと。

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