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日常ブログ #27メモ



私は、昔から記憶力は結構いい方だと自負している。
一度聴いた曲の歌詞は簡単におぼえてしまうし、小中高校時代は暗記科目系が得意で成績も良く、奇怪な単語の羅列を難なく暗記出来ていた。
当時は今よりもずっと頭が柔らかく勉強熱心だったこともあり記憶力も一層研ぎ澄まされていて、何度も繰り返し見たお気に入りの映画やアニメ、漫画のセリフを全部おぼえて暗誦するという謎の遊びにハマっていた時期もあった。
我ながら意味不明な遊びすぎて理解できない。
遊ぶ相手がいないとこういった類の薄気味悪い一人遊びを発明しがち、これが友達いないあるあるの一つである。

しかし、二十歳をすぎた今では、かつて優秀だった輝かしい頭脳の残り火をなんとか保っている程度の能力しかない。
著しい記憶力の衰えを感じている。
いつかどこかで会った誰かにばったりでくわした先で声をかけられても、顔も名前も関係性も簡単な挨拶の言葉も思い出せず、ひたすら挙動不審になることがここ数年頻発している。
最近では、相手は私のことを知っているらしいが私はなんとなく心当たりがあるだけで何も思い出せない状況に慣れすぎて、焦ることも無くなってしまった。
かといって正面きって「どなたでしたっけ?」と尋ねられる勇気はもちろんないので、私はただ黙って微笑しているだけでその場をやり過ごそうとする。
気まずい空気の打開策はない。
ただひたすらに流れに身を任せ、一切の抵抗を放棄する。
これが私が経験から得た技だ。
むしろ不審である。

さて、過去の栄光に囚われ己の力を過信しているというわけでもないのだが、私の予想に反し猛スピードでやってきた衰えに対し、正直未だに慣れないでいる。
これまで特に意識せず、何となくできていたことがいつの間にかできなくなっていた。
それに気づいた時に感じるのは、悲しみではなく、戸惑いなのである。
自分の記憶力の良さにかまけて、何かをメモしたり丁寧にノートを取るなどといった行為を怠け続けて大人に成長した私には、忘れないように書き留めておく、という習慣がない。
学校に私用に家事にアルバイトにと、やることも考えることもたくさんある現在の状況において、メモを取っておかないと困ることなんて山ほどあるにも関わらず、私にはメモを取るという習慣が全くないのである。
だってメモしなくても何とかなってきたから。
大学入学当初はオンライン授業が主流で資料も講義の動画も全てオンラインで配布されたことも、アルバイト先ではメモは取らなくていいから分からないことがあったらその都度声をかけてね、という心優しい方針だったことも、私の悪癖を助長させる要因になってしまったのかもしれない。
幸いなことに、まだ他人様に迷惑をかけるような大失態は犯していない。
おぼえている限りでは。
ただ私が一人で困ってイライラしているだけで済んでいる。

では一体何にイラついているのか。
これである。
たった今している、これ。
皆さんも読んでいらっしゃる、これ。
そう、ブログである。
次回更新する時のネタがメモされていないのである。
こういう事態は今日が初めてではないが、さすがに頭にきた。
誰にって、自分に対してである。
何でメモしてないんだよ。
メモしとけよ。
別にこうしてブログ書くのだって片手間でチャチャっとやってるわけじゃないからね、書く前に頭の中で構成だって考えるし、書くの自体時間がかかるし、そもそも休日に数時間机に向かってパソコン作業するのだって楽じゃないんだよ!
他にやらなきゃいけないこともやりたいこともいっぱいあるんだよ!
分かってるのか私!
ええ、全部分かっています。
メモをとっておかないと後々大変なのは私自身だということは十分過ぎるくらい理解しています。
だって迷惑してるのも迷惑かけてるのも私だから。
加害者でもあり被害者でもあるというわけ。
先週はスケジュール管理能力不足のせいで予定がぎゅうぎゅうに詰まってしまい、ブログを更新する気力も体力もなく、今日ようやくの休日に昼までゆっくり過ごしていざブログ書こうと思ったら記事のネタがメモされていなかった時の絶望感といったら洒落にならない程だったが、如何せんメモする習慣がないのだから仕方がない。
中途半端に記憶力がよかったせいで怠け癖がついてしまったのだから仕方がない。
行き当たりばったりでブログを運営しているんだから仕方がない。
だから私が私に対して猛烈に腹が立ってても仕方がない。
なのでキレます。
ふざけるな私この野郎!


このままだと人格分裂の危機なので、早急に対処したい。
どうやってメモを取る習慣を身につけるか。
とにかく忘れないうちにメモを取れとしか言いようがないのは確かなのだが、それを習慣づけるためにはどのようにメモを取るかということを考える必要がある。
メモをとる手段として、パターンはおおきく2つ考えられる。
一つはスマホにメモするパターン、もう一つは紙のメモを使うパターンである。
今のところは、スマホのメモ機能に文字でネタを書き留めているのだが、この手法は消去法で採択したのである。
正直、スマホでのメモはあまり使いたくない。
なぜならスマートフォンなるものが持つ魔力によって、メモしようと思ってスマホを開いても3秒後には全く別のアプリを開いているからである。
これは多くの人が経験したことがあるであろう、恐ろしいスマホの怪奇「思考吸い取られ現象」である。
なぜこの現象が発生するかというと、そもそもスマホをメモとして使うには、スマホ自体が持っている情報が多過ぎるからである。
故に、スマホを開いた瞬間に色んな情報が目に入ってきてしまい、元々の目的がかき消され、思考を吸い取られてしまうのだ。
ある意味、これはアイデアを生み出すきっかけにもなり得るのだが、アイデアを思いついたからメモしたいと思った矢先に別の新しいアイデアが浮かんだり、メモしようと思ったその数秒前まで考えていた全く別のことを思い出したりしても、本来の目的は失われ既に思考を吸い取られているから、本末転倒なことには変わりない。
それは、既に大量の書き込みがなされているものの上に新しく書き込みをするような感覚に近い。
できれば、浮かんできたアイデアを邪魔しないような、まっさらな媒体に書き留めておきたい。
最も手軽でどんな場面でも素早くメモできる点は大きな利点なのだが、書くまでが大変で、ちゃんとメモができる成功確率は五割と言ったところだろう。
今回のブログ用のメモが記入されていなかったのもそのせいである。
何だメモ成功確率って。
スマホってそんな悪魔のツールなのか。
でも否定できない。確かに悪魔のツールなのかもしれない。
スマホ憎し。
やっぱりスマホにメモはしたくない。

では紙のメモを使うか、と考えてはみるのだが、これはイマイチ現実的ではない。
メモ帳のような紙のメモを使うにしても、そこに書き込む筆記用具が必要だし、またそれを常に持ち歩いていないといけない。
いつアイデアが降ってくるかは分からないからである。
いかなる時もポケットに忍ばせておくか?
いや、私の普段の生活スタイルから見てもやはり現実的とはいえない。
持ち運びの件についてもそうだが、私は文字を書くのがすごく遅いのだ。
私の三大コンプレックスの一角、文字を書くスピードと汚さ。
金銭的に余裕のなる暮らしができるようになったら必ずボールペンの通信講座を受講すると決めているくらい、字を書くのが遅いし、急いで書くと字が汚すぎて解読不能になるのである。
それを考慮すると、フリック入力やタイピング入力といったデジタル機器の力を借りた方がよっぽど良いという結論に至る。
メモ成功率十割保証という利点も捨て難いが、メモを取れる体勢が整った場面でしかその利便性が発揮されないのは惜しいポイントである。

やはりスマホを使うしかないのか。
以前、ボイスメモの機能をおすすめされたことがあった。
ボイスメモの機能なんて、滅多に使わなすぎて他のアプリに思考を吸い取られることなくスマホを開いたら即起動できそうな感じがする。
メモ成功率はスマホ以上紙以下で、およそ七割と言ったところだろう。
だが、これは一度試してみたものの録音された自分の声を聞くのが嫌すぎて2度と使わなかった。
いざ記事を書こうと思っても自分の声の録音聞かなきゃならないとしたら、テンションがだだざがりになると思う。
テンション下げ率十割確定だ。
それはいただけない。
私は楽しくブログを書きたい。
これは却下である。

なんだかんだ言ってスマホが一番便利なことも、メモ成功率が低く思考が吸い取られるのは己の心が弱いせいだということも、全部分かっているのだ。
だからこんな堂々巡りの思案は時間の無駄だ。
それでも、わがままは言いたい。
理想は突き詰めたいし、夢も追いたい。
できればメモする準備を整えて降ってくるアイデアを完璧に受け止められるタイミングで思いついて欲しい。
寝る前とかお風呂場とか移動中とか授業中に思い浮かばないでほしい。
余裕のある時とか、いいよって言った時に限り来て欲しい。
そういう、難儀なタイミングにぽっとネタが浮かぶせいで、ただでさえメモ無精気味のところをより厄介な問題にさせているのだ。
たかがメモを取るという行為が、である。
ちょっとは浮かんでくるアイデア側にも責任があるんじゃないだろうか。
ないですか?そうですか。すみませんでした。

とはいえ、淡い期待を裏切られた怒りによって激情のままに文章を綴るのはもうこれっきりにしたい。
今後メモの怒りパート2、パート3とシリーズ化していく可能性はなくもないが、そうならないよう努力はするつもりだ。
確変を起こすような手段が思いつかない以上、私は今後も成功確率五割の悪魔ツールと、思考とメモを巡る戦いをしていかなければならない。
終わりのない戦い、傷つき傷つけるだけの無益な争い。
考えるだけでうげぇ、という気分だが、当ブログのより良い運営のためという大義の下、己の精神を鍛え、いつか怪奇現象をも打ち負かしてみせよう。
そして、忙しい時でもサッとネタを吟味してパパッとブログを書いてチャキチャキとブログを更新して見せよう。
どうか来るべきその時をお待ちください。
私もこの努力義務を忘れることがないよう、しっかりとスマホのメモにしたためておきます。


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