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お月さまがついてくる。

私は月を見上げるのが好きだ。雲が少なく、月が見える日はよく形を確認する。

「きょうの月は、まんまるだね!」(息子)

「いや、左下が少し欠けてる。」(私)

「うそー!満月だよ!」(娘)

「いや、絶対欠けてる!!」(私)

そういう時間も楽しい。

そんな私には、頭の中に残っている言葉がある。それが

『お月さまがついてくる』だ。

たぶん小さい頃、母に読んでもらった絵本に出てきた言葉だと思う。でも何の本だったか忘れてしまった。大人になってからインターネットで検索もしたけど、「これだ!」という本が見つからなかった。

子どもがお母さんと歩いていると、お空のお月さまも一緒についてくる…という話だったと記憶している。その絵本のなかで子どもが月をゆびさして

『おつきさまがついてくるね』

と言うと、お母さんが

『○○ちゃんのことがすきなのよ』

と言うのだ。

私はこの話がいつも心のどこかに残っていて、ずーっと忘れられない。

私は暗い所を歩くのが怖い小心者だけど、月の出ている夜道は不思議と怖くなかった。

覚えていないけど、私も母と月を見ながら、あの絵本の言葉を言い合ったのかもしれない。

「お月さまが、ついてくる」

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数年前、娘と息子が幼稚園くらいの時。

家族で出掛けて、すっかり暗くなった道を車で走っていると

「もー、はやくかえりたいー」

「眠いー」

と子ども達が飽きてくる。

その時、ちょうど月が出ていたので試しに

「みて、お月さまがついてきてるよ!」

と車の窓から見える月をゆびさして言ってみた。子ども達は

「えーー、ついてこないよ…」

と言っていたが、月を眺めているうちに

「ほんとだ!ついてくる!なんで???!」

「曲がったらいなくなった!」

「こんどは、あっちからついてくるよ!」

「ほんとうに、ついてくる!」

不思議だ!と月を眺めている子ども達に、私は微笑ましい気持ちになって、言った。

「みんなの事が好きだから、ついてくるんだね」

自分でも、唐突にメルヘンな事を言ってしまったなと思う。ごめんなさい、言わずにはいられなかったんです。

そして末っ子が生まれてからも、月の見える夜道を帰るときは、「お月さまがついてくるね」と話した。

まだ末っ子も小さいので、夜に移動する事はあまりないし、月がキレイに見えるタイミングもそうそう無いので、たぶん回数的には年に1度くらいだったと思う。

でも、その時に見せてくれる子どもたちの楽しそうな顔に、私は幸せな気持ちにさせてもらった。

**********

先日家族で出掛けて、すっかり暗くなった時間に帰宅中、突然末っ子が言った。

「あっ!おつきさま、ついてくる!」

「末っ子のこと、好きなのかなぁ?」

私は少しびっくりした。覚えていたのか。私の趣味全開のちょっぴり恥ずかしいあの言葉を。

私が言った言葉が、子ども達の心に残っていてくれたんだとしたら嬉しい。

大人になっても、月が出ている日は、あの時楽しく話しながら帰った事を思い出してくれたら嬉しい。

お月さま、いつも幸せな気持ちをありがとう。これからもよろしく。

今までいただいたサポートを利用して水彩色鉛筆を購入させていただきました☺️優しいお心遣い、ありがとうございました🙏✨