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画家にとって描写力は必須?

こんにちは、画家のTAKUYA YONEZAWAです。

本日は、絵を描いていく上での描写力って必須なの?ということをテーマでお話ししていきます。

◻️描写力ってなに?

何事にも基礎基本があるように、絵を描く上でも基礎的な力として「描写力」というものが存在します。

すごく簡単に言うと、それは
頭の中にあるイメージをキャンバスや紙の上に再現するための力です。

描写力とは具体的に
・形を正確に捉える力
・目的の色を再現する力
・構図を考える力

の3つの要素があると考えています。

作品の意味・内容や知識の話をすれば、まだありますが、今回は描写に関する力として捉えてください。

これら描写力は、自分の想像通りの絵を描く上で、とても重要な能力です。

一般的に作品を見た感想として「絵が上手い!」と言われるときは、描写力があることを指している場合が多く、とくにデッサン力は3つの中で一番ウェイトが重いと言ってもいいと思います。

◻️描写力って必須なの?

photo by pakutaso

でも「描写力って作家にとっては必須なの?アイディアさえあれば作品になるのでは?」という疑問もあるかと思います。

この疑問に対する僕の考えは「描写力は、ほぼ必須」です。

そう考える大きな理由は絵を見るときに「絵が上手い(描写力がある)」というのは、誰でも最も簡単に比較しやすい要素だからです。

展覧会などで作品を見る時、多くの人が「絵の上手さ」について評価をするのではないでしょうか。もちろん僕も、それなりに作品をつくってきた経験があるので色々な評価軸をもっているつもりですが、絵が上手いかどうかは必ず見るポイントの1つです。というか無意識に「絵うま!」とか感じませんか?それくらい、多くの方がごく自然に評価できるポイントが「描写力」なのです。

例えば描写力にレベルがあったとして、Lv30の人とLv10の人が同じテーマで絵を描いたとすると、高確率でLv30の人の絵が評価されます。「いい絵」かどうか、という評価軸ももちろんありますが、それでも多くの方から支持を集めるのはレベルが高い方になると思います。

それくらい、「絵が上手い」というのは、視覚的なインパクトが強い。

だったら、そこを鍛えない手はないじゃないですか!

◻️発想力✖️基礎力=作品の魅力

ここで、ちょっと話を変えましょう。

作品を成立させている要素として大きく「発想力」と「表現力」があります。

この表現力が描写力と大きく関わっています。
描写力が高ければそれだけ、表現する力が高いと考えるとわかりやすいと思います。

これを式で表すと

発想力✖️描写力=作品の魅力

発想力と基礎力は掛け算。どっちも同じくらい大切な要素です。

基礎力がなくても作品は作れますが、魅力的な作品を生み出すにはこれら2つのどちらの要素も鍛えていかなくてはなりません。

例えば、めちゃめちゃ面白い発想をもっていたとして、描写力が低ければそれを説得力をもって再現できないんです。すごく魅力的なアイディアをもっているのに、それを表現できる技量が足りないって超もったいないじゃないですか。

もちろん、それでも、抜け道を探して自分だけの表現を模索する!というのも面白いと思います。でも、それができる人は本当にひと握り。そうでない人は、「発想は面白いけど、それを再現する実力が伴っていないよね」という評価になりがちです。(講評とかで言われがちですが、これって結構ショックですよね…)

だから、作品に説得力をもたせるために基礎力(特に描写力)をつけよう!というのがぼくの主張です。

◻️「描かない」と「描けない」の違いは大きい

photo by pakutaso

こういう話をすると「色や形だけで描く抽象作家さんもいるじゃないか!あれは描写力が関係ないのでは?」という声もありそうですが、抽象画家さんも適当に色を乗せているわけではなくて、かなり構図や配色に気を配って描かれている方が多いと感じます。

実際にやってみるとわかりますが、段々と色を置ける場所が限られてきたりするんですよね。変なところに置くと、とたんに絵が破綻してしまう怖さもあって。だから、抽象画だからと言って適当に描いているわけでは決してなくて、むしろかなり考えながら大胆に、でも慎重に描いている印象です。抽象画をメインで描く作家さんって本当にすごいなと、僕は尊敬しています。

話は逸れましたが、抽象画家さんも「具象物が描けない」わけではなく「具象物を描かない」ことを選択したのだと思います。

「描けない」と「描かない」では大きな差があります。

できるからこそ「やらない」という選択肢が生まれるのです。

◻️「上手い絵」と「いい絵」

photo by pakutaso

そうすると、次は「描写力が高まると表現力が向上するのはわかったけど、それだと上手い絵が描けるようになるだけで、いい絵とは違うのでは?」という疑問が湧いてきそうです。

もちろん、「上手い絵」と「いい絵」は違います。
だけど、「上手い絵」と「いい絵」は両立できるんです。

だったら、高い描写力をもって、いい絵を描いた方が多くの方に楽しんでいただけると思いませんか?

めちゃめちゃ上手くて、その上で心が動かされる作品って最高じゃないですか。

僕ならそんな素敵な作品を描きたいなぁ。

◻️描写力を伸ばそう

繰り返しになりますが、描写力がつくことで、頭の中のイメージを解像度高く再現できるようになり、自信もつきます。

何より思い通りに描けて楽しい!

最初は、ただ上手くなるのが楽しかったじゃないですか。それで、誰かに上手いね!って褒めてもらうのが嬉しかった。基本それって今も変わってないと思うんですよね。誰かに「いいね!」って言ってもらえることって絵を描く大きな原動力のひとつだと思います。

正直、作品アイディアなど、発想や構想力に関しては、個人の性格や人生経験によるところが大きいので、鍛え方は人それぞれ。成長の最適解がなかなか見つけにくいんです。

それに対して基礎力は鍛えた分だけ、自分の頭の中のイメージを正確にアウトプットすることができるようになります。幸いなことに、基礎力は上達方法がある程度確立されていて、学校や本、今ならyoutubeなどで学べるため再現性が高いです。

ただ、基礎って地味でハードですから継続がとにかく大変です。楽な方に逃げない強い意志が大切です。可能ならお金を払って絵画教室に通ったり、学生さんなら予備校に通うなど、絵を描かざるを得ない環境に身を投じるのも一つの手段です。美大や専門学校生なら、とにかく広い場所で制作できる環境をフル活用しましょう。(卒業したらアトリエは部屋の片隅になる可能性大です)

絵を仕事にしたいのであれば、すごくいい自己投資だと思います。

どのように取り組むにしても、ポイントは自分に厳しく、根気強く時間をかけて取り組むこと。そうすれば上達できるはずです。

◻️描写力上達の目安は?

では描写力は具体的にどれくらい上達すればいいのでしょう?

これに対する僕の回答は
自分の中で違和感がなくなるくらい
です。

曖昧でわかりにくくてすみません。解説します。
まず、作品を鑑賞した時、描写力が足りないと「ん?なんか変だな?」と思ってしまうのです。これは経験したことがある方が多いのではないでしょうか。この「なんか変だな」が頭に浮かぶと、それがトリガーとなって、作品世界から現実世界に引き戻されてしまうんです。

展覧会に来場されたお客さんが、せっかく作品世界を楽しんでくれていたのに、自分の技術不足のために現実に引き戻してしまうなんて、とってももったいないと僕は思います。ここは、作家として、少しでも作品に浸っていただく時間を長くすべきだと思います。

そこで極力少なくすべきなのが、違和感です。

人間の感覚は優れているので、自分の作品を見て「なんか変だなぁ」と思った時には、どこかに修正すべき点が潜んでいるものです。自分では判断が難しければ、身近な誰かに聞いてみるとか、先生がいれば先生に意見を求めるのが違和感の原因を特定する近道だと思います。

あと、めちゃめちゃ上手くなる必要もないと思っています。

高い描写力を目指すのは大切ですが、それだけが全てでは決してない世界だし、上を見ればキリがないからです。(ぼくも、描写力があるかと言われたら、数ある画家さんの中では決して高い方ではないと思っています。)

だからこそ目安が「自分の中で違和感がなくなるくらい」なのです。
自分の作品に自分自身が没入できることが、第一目標かなと思います。

◻️おわりに

いかがでしたか、今回は「描写力」の必要性について考えてみました。

意外と疎かにしがちな基礎ですが、やっぱり基本ができている人の作品は見ていて安心感があります。長年絵を描いている人が見れば「この人は基礎がしっかりしているな」とすぐにわかるものです。

今制作を頑張っている方で、それでもなかなか思ったような成果や評価を得られない方は、もしかしたら基礎力が足りないために、自分の頭の中のイメージを再現しきれていないのかもしれません。そんな時は、一度自分の作品を振り返ってみて、基礎力を高める練習をしてみるのも大切かもしれません。

ぜひ、高い表現力で、かつ魅力的な「いい絵」が描けるように、お互いに創作活動を頑張っていきましょう!

本日も、お読みいただきありがとうございました✨


学びを深める📚

【書籍】 絵画の教科書 

基礎力を高めるために、もちろんがむしゃらにデッサンをしたり、作品を描くことも大切ですが、作品を作る上で必要な知識について学んでおくことも大切です。今回紹介する本「絵画の教科書」は、ぼくが大学時代にかなり読み込んだ1冊。絵画をはじめ、作品制作に関する技術や考え方など、さまざまな内容が見開き2ページに収められていて、パラパラめくっているだけで勉強になります。見開き2ページといっても、そこまで浅い内容ではなく、その分野の専門家がわかりやすく文章にしてくれている印象で読みやすく勉強になりました。ただ、中身は文字ばっかりなので、活字が苦手な方には向かないかもしれません。辞書くらい分厚いですが、軽い素材で作られているのも気に入っているポイントです。

クロッキー帳(ホルベイン)

ぼくが愛用しているクロッキー帳。マルマンのクロッキー帳も好きですが、紙質がザラザラしていて鉛筆のノリはこっちの方が好き。なので、ペンではなく鉛筆でクロッキーをゴリゴリ描きたいのであれば個人的にはこっちの方がお勧めです。ペンはちょっと滲みます。紙の色はクリーム色です。サイズはカバンにも入れやすいSサイズをよく持ち歩いています。

ハイユニの鉛筆

鉛筆はハイユニを好んで使います。しっかりした黒色で、芯の引っ掛かりもほとんどないです。10Hから10Bまであって黒の幅が広いのが特徴。鉛筆もメーカーによって個性が違いますから、これは僕の好みです。


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