3‐7 数え方、終わり方
「いまからシュート練習連続70本!」
「コンクールの課題曲を今から10回やります」
そこから練習やリハーサルを始めてしまうと「70本シュートが打てるように」「10回歌えるように」と脳は勝手に運動強度を計算してしまいます。
これが70本、10回をやること自体が目的ならば全く問題ないわけですが、パフォーマンス向上が目的の場合、「数をこなそう」とすると、「いい感じ」と「いまいち」が混在した上、修正が行われないまま進んでしまいますから、脳のネットワークが「いまいち」も記憶し続けてしまうことになります。
このように気づかないうちに脳が勝手に計算してしまわないように「すべてを1でカウントする」という方法があります。
1をやって、修正して、また1をやって、修正して、また1をやる。この方法だと「やる度にいい感じに近づく」記憶が保存されやすくなります。1回、1回、フレッシュな気持ちで取り組めるので、「惰性」を排除しやすいですし。
もし合計数を知りたいのであれば、誰かにカウントしてもらうか、スマホなどで動画や音声で記録し、後で確認するという方法がとれます。
そしてもうひとつ重要なのは「練習の終わり方」です。
「いい感じに動けた記憶」を脳のニューロン同士のネットワークに刻印するには、「いい感じ」で終わる必要があります。いいシュートで終われば、いいシュートの時の骨や筋、腱など運動器からの情報、心臓の鼓動や呼吸などの状態、雰囲気やシチュエーションなどの外的状況、その時の内的な会話などがセットになって記憶されます。
せっかく「いい感じ」を得たのに回数をこなすことに意識が向いてしまうと、「いい感じ」のあとに「全然よくない」が上書きされてしまう可能性があります。(ひとりに会ったなら誰に会ったか覚えていますが、立て続けに鎌倉で13人に会ったら4番目は誰だったか覚えていられないようなものです) 最後の記憶は、脳にとっては最新の記憶になりますから、
「あ、いい感じでできた! よし、ここらへんで終わろう」
のジャッジが上手くいき、それが実行できると、できる記憶が蓄積されやすくなります。
アスリートやパフォーマーの練習や稽古において、私は「練習の終わり方」には十分配慮しています。仮に動きがサイアクであっても、少しでも浮上して終われば、サイアクから浮上した時の記憶が刻まれるからです。
本番はいつもいいコンディションとは限りませんし、どんなアクシデントやハプニングが勃発するかわかりません。そのような時こそ、「サイアクからなんとかした練習の時間と記憶」が生きてくるのだと思います。
継続力、持続力を目的としたときには「70本やる、10回やる」のやり抜く意志は絶対的に大切です。
ですが、パフォーマンス向上を目的とした場合は、どこでいい感じが来るかはわかりません。ですから「70本数えるけど、いい感じで終えてOK」というようなアレンジもひとつの方法だと思います。(可能性にアクセスするパフォーマンス医学より)
みんなが原理原則を共有すれば、日本のパフォーマンスレベルがきっと上がる。
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