トークライヴ1 ~おもちゃ箱~
「自分のペースで好きに行うボクササイズ」と、
「何月何日何時、決められた会場でボクシングで戦うための練習」が違うように。
「文章を書く」のと、「公に出る原稿を書く」のは、似ているようで全く違うと僕は思っている。衆人環視の下で然るべき結果を出さねば次は無い、そのプレッシャーは味わってみないと実感できない類のものだと思う。
文才に乏しいと自覚している僕にとって、原稿を書くのは修行でもある。(苦行と言える)
だから原稿を書いているとき
「面白すぎて、あっという間に時間が経った」ということは滅多になくて、「ほとんど書けないまま、あっという間に締め切りが近づく」経験ばかりしている気がする。
「もうこれで最後にしよう」
「出し切った、これ以上の作品は書けない」
毎回そう思う。だけど書籍が完成して、世に出る段階になると、それまでの時間が報われるような嬉しいことが起きる。
その大きなひとつが「トークライヴ」だ。
ずっと会いたかった人、話してみたかった人、話を聴いてみたかった人、同じ時間と空間を共有してみたかった人、そういう憧れの人たちと「何か新しいことができる」機会がやってくる。
これが超絶に嬉しい。
そして書を手に取ってくださった方々に実際にお会いできる。僕はもともとライヴのほうが得意なタイプで、人前で格闘技医学、ファイトロジーをずっとやってきたので、その場の空気や流れの中で何かやるのに向いている。
そういうのに比べて、書籍はちょっと一方通行なところがある(と僕は思っていて)、書いたものが「その人の中でどのような形で影響したのか」をダイレクトに知れるチャンスは案外少ない。だから、書をテーマとしたトークライヴのおかげで、何かの確信を得たり、次のヒントが見つかったり、方向性がハッキリしたりすることがある。双方向のため、オーディエンスから教えてもらうことがたくさん見つかるのだ。だからライヴの場があることは、僕にとっては凄く有り難い。
2023年12月16日。
拙書『可能性にアクセスするパフォーマンス医学』(星海社)刊行記念ということで待ちに待った機会がやってきた。
一緒に登壇してくださったのは、ひろのぶと株式会社社長にしてベストセラー『読みたいことを書けばいい。』他の著者である、田中泰延さん。新たに出版社を立ち上げ、重版ヒットを飛ばしている、出版界の風雲児。書くというテーマで市場自体を創造してる感すらある。僕もいままでもいろんな機会や場にお声かけをいただいてきた。
そしてワールドレベルの大ヒット作の数々を世に送り出しているライターの古賀史健さん。出版不況と言われて久しいが、古賀さんは出版界の救世主ではないかとさえ思う。古賀さんには折に触れ「書く」ということについてアドバイスをいただいたり、共通のヒーローであるプリンスについて語りあったりと、叡智と閃きをいただいてきた。
畏れ多くも、でも大好きなおふたりにお声かけしたら、ご快諾をいただき今回の鼎談が実現した。「嬉しい!でも、責任重大」のポジティヴなプレッシャーと共にこの日を迎えた。
終わってみての感想は「おもしろかったー」に尽きる。
いま、2日が経過してこの文章を記しているのだが、ライヴの細部まで思い出せず、「(とにかく全体として)おもしろかったー」以外の言葉が紡げないような状態。詳しい内容についてはまた映像を観てから記したい。
それにしても・・・
田中泰延さんの話術は凄まじいレベルで、「地上波で冠番組のMCがつとまるんじゃないか?」っていうくらい面白い。そして教養のレンジがビックリするほど広いので、どんな球でも拾っては、やさしく投げ返してくれる。でも、面白さのオブラートに包まれた本質論は鋭くて、カッコいい。
古賀史健さんのお話は、「この話はどこに行くんだろう?」という「?」を投げかけてくれる。でも必ず「?」は見事に「!」に帰結する。本質をいろんな角度から提示してくれる古賀さんのトークは、ワクワク感を惹起してくれる。
そんなおふたりにOKをいただき、再び会えて、一緒に何かできる。それだけでも嬉しいのに。
このプロジェクトに喜んで手を貸してくれた人が集ってくれる。それだけでも嬉しいのに。
星海社の担当・築地さんと一緒にまた新しい扉が開けられる。それだけでも嬉しいのに。
小学校からの同期、コスタリカから滞在中の親友、共に走る仲間、拙書を大切にしてくれる読者に会える。それだけでも嬉しいのに。
プロポリスの話題が出て、なぜかミニスカポリスが浮かぶ。それだけでも嬉しいのに。
それらが全部、一度に起きたトークライヴ。まるでおもちゃ箱をひっくり返したみたいに。
「いい時間」って矢のように過ぎてしまうけど、
「いい時間を過ごした記憶」はずっとずっと永く心に残る。
一緒に楽しんでくれた全ての皆様に、心からの感謝を。
PS 重版目指して日々積み上げて、担当者の想いにこたえます。
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