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アイデアを集める仕掛け

 新規事業には、まずアイデアの「数」が欠かせない。例えば、日本を代表するある超大手企業は社員数約50,000人から約2,000件のアイデアを集め、そして厳選して5件の新規事業の開発プロセスに乗せることに。

 まだ成功前の段階でアイデアは0.25%まで絞り込まれており、「千のアイデアからわずか3つの事業を生み出す」という言葉を体現している状況。

 ちなみに今回はアイデアを発想する方法論をお伝えするのではなく、この大手企業がどのようにして2,000件のアイデアを集めたのかを整理して共有したい。

 一つ目の収集方法はアイデアボックス。社内のフロアに設置された意見を集める箱。ポイントは「匿名性」と「A4一枚に収めること」の二点。

 まず匿名であるからこそ、気軽に思い付いたものを提案することができる。実名になってしまうと本気で考え抜いていないと出してはダメではないか、こんな些細なアイデアはダメではないかと、マイナス方向に思考が傾いてしまうものの、匿名だからこそ思い付きレベルを投げ込むことができる。

 次にA4一枚の制限は、提案者にアイデアの要点を明確にさせる効果がある。「そもそも誰に対するものか?」「どんな課題を解決するのか?(どんな願望を叶えてあげるのか?)」「どんな新しい製品やサービスなのか?」「これまでのモノ(もしくは競合のモノ)と何が違うのか?」「どうやってお金をいただくのか?」と骨子部分だけが整理されてくる。もちろん、フォントサイズを小さくして相当に事業計画書を書き込んでくる方もいらっしゃるようなのだけれども、それは稀とのこと。

 二つ目の収集方法はアイデアコンテスト。アイデアの優劣を社内で競うもの。ポイントは実名で勝負ができるところ。加え、採用に至った場合には今の部署を離れて新規事業開発室の専任になること。

 こちらの実名の背景は、「なんとなくこんなことができたら面白そうじゃない?」といったアイデアではなく、「自分はこんな製品やサービスを作ってみたい!」という本気度の高いものを集めるため。

 ポイントは、アイデアが受かるか落ちるかにかかわらず、評価は変わらないため、やりたいことがあれば積極的にチャレンジをしてほしいという点。将来的に事業作りに関わりたい、新商品企画に行きたい、と考えている方々にとっての登竜門。

 やらされになってしまうとモチベーションが落ち、また本職にも悪影響が出てしまうことから、あくまで本職に影響がないように調整して提案をしてください、とのこと。また社内の事務局や上司からフィードバックがあると忖度があったんじゃないか、部署異動を妨げようとしているんじゃないか、と思われるリスクがあることから、メンタリングや審査は外部のプロを入れて行うようにしているとのこと。

 企業によってアイデアを集める方法論は様々。今回は実名と匿名の二つの観点で区切ってアイデア収集の方法論をお伝えさせていただいたけれども、大事なことは方法論以上に「数」の追求を重視すること。

 CTOとして会社を二社上場させ、更には三社目を起業してスタートアップに挑戦中の代表は「1,000個考えて1,000個捨てる。それが始まりですよ」と口にしており、その言葉には心の底から共感せずにはいられない。アイデアの量が質に転化することを忘れず、成功に向けて多くのアイデアを出していこう。

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