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顧客に惑わされる自分たち

 アイデアをカタチにする際、誰しも失敗を避けたいと思うもの。そこで潜在顧客に対してアンケートやインタビューを行うものの、その回答に簡単に惑わされてしまうことが多々ある。

 アンケートで「買います!」と答えたのに、実際に商品が出た後に買わなかったり、インタビューで「こんな機能が欲しい!」と言ったのに、リリース後にその機能を必要としなかったりと、誤解が生じることは数えきれない。

 こんな誤解が生じる背後には、主に大きな三つの理由がある。それを今から簡潔に解説していこう。

 一つ目は状況理解の不足。「アンケートにご記入ください」「インタビューにお答えください」と迫られたとき、回答者は提示されたアイデアを本気でイメージしていないことが多々ある。そのため、販売後に結果がずれることに繋がっていく。

 例えば、猛暑の日に「体温を下げる効果の高いアイスが1個1,000円で、塩も入っていて熱中症予防にも効くよ!」と言われると、(良いね!)と思って「買います!」と勢いで答えてしまうように。

 しかしながら、熱波に襲われる猛暑日だったとしても、クーラーが効いたコンビニやスーパーの中で買い物をしてみると、そもそもアイスで体温を下げる必要があるのか疑い始め、購入対象からは外れていく。

 二つ目は競合に関する認識不足。アンケートやインタビューの際、回答者は他の製品やサービスを十分に考えていないことが多いため、販売後に結果がずれることが多々ある。

 例えば、コンビニやスーパーに入ると、100円のアイスや熱中症予防のための塩キャンディ、さらには塩サイダーなどが売られており、「どうして1,000円の塩入りアイスを買わなければならないのか」と疑問に思ってしまうように。

 三つ目は自尊心。アンケートやインタビューの際、回答者は自分自身を良い存在として見せたい気持ちが生じるため、販売後に結果がずれることが多々ある。

 例えば、「自分ほど稼いでいる人間なら1,000円のアイスくらい余裕で買える。実際はそこまで稼いでいないけれど、ここで『買えます!』と言わないと貧乏人と思われて恥ずかしい」と余計な思考が邪魔をしてしまうように。

 そんな風にして、アンケートやインタビューを行う際には、回答者の状況が実際の購買シーンと大きく異なり、異なる結果に至る可能性が高いこと、実際の購買シーンでは選択肢が無数に存在し、競合に負ける可能性があること、さらに自尊心が回答に影響を与えることを考慮する必要がある。

 だからこそ、アンケートやインタビューを設計する際には、どのような順番で、何を、どのように聞くのか、最新の注意を払う必要がある。最後にそれを遵守できず悲しい事例となった、あるマッチングサービスの仮説検証の失敗を紹介したい。

「○○な属性同士、会って話してみたいと思いますよね?」「こんなアプリがあったら、メッセージ送ってみたいと思いませんか?」という誘導尋問的なインタビューを行い、それを基に開発を進めた結果、ローンチから半年も経たないうちに消滅することに。準備期間からローンチ後までの人件費と開発費をざっくりと見積もっても、数千万円の損失となったことは言うまでもない。

 アイデアをカタチにする過程では、失敗を避けたい一心で容易に顧客の言葉に惑わされがち。このことを忘れず、アンケートやインタビューを通じて仮説検証のプロセスに真摯に取り組んでいこう。No Talk, All Action!!!


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