分人主義で100日断酒に成功した話 後編
前編では、僕が断酒をした経緯や、分人主義との出会いについて書きました。色々な感想をいただいたのですが、中でも心に残ったのが「僕の酒の分人は、人付き合いのコツを教えてくれたグレートティーチャーでした!」というもの。先生とは、いつかはお別れをしなければいけないですよね。泣ける。。
分人主義で断酒をする
さて、後編では、分人主義的に断酒する方法を3つのステップで考えてみます。基本的にはマインドセットなんですが、できるだけ具体的なアクションとして提案します。
1. 節酒ではなく断酒する
酒の分人との向き合い方には、大きく分けて、行動を改めてもらう(節酒)か、会わないことにする(断酒)かという二択があります。結論としては、後者一択になります。
他人の行動を外部から変えるには、説得・脅迫・懐柔・洗脳などなどありますが、とっても難しいですよね。変わったようにみえても、気づけばまた元通りになってしまったり。
そういう意味では、節酒と断酒って全く逆の行動です。節酒(介入)をしてあわよくば断酒(離別)、というのは筋が通らない。
恋人同士で「距離を置く」というものがあります。この時、最後にもう一度だけ、とかやってると泥沼化してしまいますよね。どうかスパッと別れてください。
2. 酒の分人を社会的に消す
「あいつとは、もう会わない」と決断した後にすることは、簡単です。
行きつけの飲み屋、バー、コンビニに近寄らない。
行きつけ店のインスタのフォローを外す。
会食は出来るだけランチやお茶にする。
頑張ってお酒を飲まない、と考えるのは苦しい。でも、もう酒の分人とはいないんだ、と考えれば、受け入れやすい。
酒の分人は、引っ張りだこの人気者です。でも、どんな人気者も見かけさえしなければ、すぐに記憶から薄れてしまいます。悲しいけど、そんなものです。
3. 新キャラ「酒席の分人」を生み出す
首尾よく酒の分人と別れられたら、「酒席の分人」を召喚してみてもいいと思います。あくまで酒を飲まず、酒席に向き合う自分を見つけ出すということです。
シラフでの飲み会は、想像以上に面白いです。あなたの飲み友達も、ああ、あいつ(酒の分人)の知り合いであれば、ということで仲良くしてくれるでしょう。たまにレイシストもいるので注意が必要ですが。
愚痴の言い合いみたいな会からは自然と足が遠のき、そもそも呼ばれなくなり、酒席の回数は自ずと厳選されてくるはずです。
一生、酒を飲まないべきか
現在、僕自身も、たかだか100日間の断酒をしたに過ぎないルーキーです。今夜、やっちゃうかもしれません。一方で分人が減ったぶん余白が生まれ、新しい分人、たとえば筋トレの分人などが現れたりしています。
僕の理想は、酒の分人が表出しない範囲で、たとえばときどき日本酒と料理のペアリングだけ愉しむ、本当に大切な記念でグラス一杯、といった飲み方が出来たらいいなと思っています。
だけどこれは、飢えたライオンの眠る隣でBBQパーティを始めるくらいリスキーな行為です。一度起きた酒の分人をまた再び眠らせることは、初回よりも難しい気がします。
ちなみに断酒界のヴィーナスである勝間和代さんは、2R目で仕留めたそうです。すごい。
一つ言えるのは「酒を飲まないぞ」と我慢するよりも「酒の分人とはもう別れたんだ」と考えていれば、万が一彼が帰ってきても、自分を責めたり落ち込んだりはしにくい、ということでしょうか。
それでもやめられない人へ
町田康さんの断酒エッセイ「しらふで生きる」の一節にこうあります。
これが酒飲みの心理です。酒飲みは、自分の人生の価値を高く見積もりすぎているんじゃないかと言っているんですね。
厳し目に解釈すると、自分は自分が思っているほど楽しい日々を送るに値しないのだと気づき、見積もりを下げない限りは、酒を断つことはできない。ということでしょうか。
無論、楽しく幸せに過ごす権利は誰にでもあります。でも、自分はそれをもっと得られるはずとか、他の人と比べてどうか、といった感覚を捨てないことには、本当の幸せは得られないのかもしれません。
酒をやめてもちっとも偉くない
同書ではこんな言葉が後半に添えられています。
酒を断った人に対して尊敬の念や劣等感を抱く必要はないし、酒を飲み続ける人を特別甘やかす必要もありません。
ただ、「飲まない」というスタイルが以前よりも一般化されてきているのは事実です。つまり、酒の分人の人口減少が進んでいる。あるいは、多くの人の中に、飲む自分も、飲まない自分もいる。
その前提で、飲み物や飲食店のあり方や人間関係が変化しているとすれば、時代に合う新しい体験のアイデアを考えたくなります。また、分人との別れを葬儀として実施するなど、新しい死生観の提案もできそうです。
断酒や分人については、また時間が経ったら書こうと思います。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
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