未来を支える森づくりの技術 #03
今、失われつつある日本の原風景や豊かな自然環境。この流れを食い止めることは、国や一個人の活動のみでは難しいのが現状です。
2021年に開催されたG7サミットでは、2030年までに国土の30%以上を自然環境エリアとして保全する目標「30by30(サーティ・バイ・サーティ)」が定められました。
そこで今、重視され始めたのが企業や地域による自然保護の取り組み。
従来からある国立公園、国定公園など法令によって自然が守られる保護地域だけではなく、企業や地域がすでに持っている自然豊かな土地を守っていこうという考えです。
つまりこれからは、環境活動に積極的に取り組む企業を応援することが、健やかな自然を取り戻すことに繋がる時代となっていきます。
そんな時代に応援すべき企業の活動を紹介する、サスティナビリティレポート。今回取り上げる企業はサントリーホールディングス(以下サントリー)です。
サントリーは、日本が「環境問題」に目を向け始めた当初から、経営の軸の一つとして環境活動に取り組んできました。
そのシンボルとなってきたのは、「鳥」と「森」。
サントリーはなぜ、50年以上前から鳥を愛して活動してきたのでしょうか。
そしてサントリーが誇る「天然水の森」の活動には、どんな思いや技術が注がれているのでしょうか。その秘密をひもといていきます。
- BENEFITS OF ACTIVITIES -
1.良い水のためには良い森が必要で、良い森のバロメーターとなるのが鳥たちの存在|サントリーの愛鳥活動
オンラインで提供している「日本の鳥百科」では220種類以上の鳥を掲載。
愛鳥活動や「サントリー天然水の森」の現場で撮影した写真を中心に構成され、それぞれの鳴き声を聞くこともできます。
また、世界最大の市民参加型の野鳥観察記録データベースの日本版「eBird Japan」のメインスポンサーも努め、鳥を愛する人々に寄り添っています。
そして各地で活動を行う鳥類保護団体を資金面からも支援するため、1989年、創業90周年を記念して設立されたのが「サントリー世界愛鳥基金」。
2023年までに延べ494件、約6億円の助成を行い、全国の愛鳥活動を支え続けています。
助成する事業は絶滅危惧種であるアホウドリの研究から、小学校や中学校の野鳥観察クラブの活動までさまざま。日本の愛鳥活動といえばサントリー、といわれるほどにその存在感は大きいのです。
2015年に新設した「水辺の大型鳥類保護部門」では、水辺としての水田をコウノトリの生息地として整備する団体にも支援をしています。
サントリーの愛鳥活動は、日本の原風景を再生させていくことにも通じ、生物だけではなく、人の未来を豊かにする可能性を秘めているのです。
2.未来を支える森づくりの技術|サントリーの天然水の森
そしてサントリーが愛鳥活動とともに取り組んでいる、もう一つの大きな柱が、森づくり。
「サントリー天然水の森」は、製品の主役となる水資源を生む森林エリアでの活動です。
2024年現在、「天然水の森」の総面積は約1万2千ヘクタール。全国22カ所にあり、その森の一つひとつに、サントリーは驚くほどの手間と情熱、最新技術を投入しているのです。
まずは森の状態を詳細に知るための、航空機によるレーザー測量。
1秒間に数万〜数十万回の頻度でレーザーを発射しながら、地表の様子を数㎝単位の密度で計測する技術で、地形だけでなく樹の高さや密度まで知ることができます。
その他にも様々な調査を行い、森の現状を把握したら、50年、100年先まで見据えてそれぞれの森に最適な整備計画を立てて実行していきます。
そして植樹するときには、木の種類はもちろんのこと、なんとDNAにまでこだわっているのです。
木の種類は地方ごとに異なりますし、傾斜や日当たりなど、どんな生育環境を好むのかも種類によって違います。
さらに、同じ種類の木であっても、例えば太平洋側と日本海側では違うDNAを持っているのです。
このような徹底した森づくりは、一朝一夕には行えません。
サントリーは多くの研究者や専門家と連携し、ずっと先まで見据えた活動を続けています。
今日植えた苗木が、大きく成長し森を支えるのは何十年と先のこと。
今サントリーが行っている天然水の森づくりは、未来の環境をも支えるものなのです。
3.心に届ける、世界に広げる|サントリーの水育
「天然水の森」は、水を育むだけでなく、未来を生きる子供たちの心も育んでいます。
2004年から行われている「水育(みずいく)」では、子供たちが自然の素晴らしさを感じ、水や森の大切さに気づくことができるように、さまざまな活動を行っています。
まず、2004年に熊本県阿蘇で始まり、現在は4ヶ所の森とリモートでも開催されているのが「森と水の学校」。
小学生の親子を対象に、天然水の森を探検し、土や水、生き物と直接触れ合える自然体験プログラムです。
森や水の大切さを、五感を通して感じることのできるこのプログラムには、これまでに3万4千人以上が参加。
自然環境についての発見や問題意識が子供たちの心に生まれ、未来にも美しい水を引き継ぎたいという思いが芽生える、そんな体験を届けています。
また、各地の小学校へ講師を派遣して行う「出張授業」は2006年の開始以来、3千校以上の小学校で実施。
フカフカの土が水をきれいにする実験などを組み込み、普段の教室では体験できないようなサントリー独自のプログラムを展開しています。
「森と水の学校」「出張授業」はともにリモートも活用していますが、リモートであっても、実際に手で触れることのできる土を事前配布するなどの工夫をし、子供が実際に体験し、心で感じることができるようなプログラムとなっています。
また公式サイトでは子供たちが自由研究や自主学習に活用することのできる「水育キッズ」を展開。
この数年で小学校でも1人1台端末が拡充され、インターネットを介した学習の頻度が高まっている中、水に関わる良質なコンテンツを提供しています。
さらにこの「水育」は日本だけでなく、海外にも広がっています。
現在、世界8カ国で行っている水育活動では、各国の水事情に合わせたプログラムを展開。
例えばベトナムでは、水を通じた衛生教育、インドネシアではプラスチックゴミによる海洋汚染など、各地域の課題に対応しています。
日本の水の豊かさ、美しさは世界的にも特筆すべきもの。そんな日本で生まれた「水育」は日本の子供だけでなく世界の子供にも届き、確実に未来を変えていくはずです。
#04へ続きます。
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■参考・出典
サントリー環境活動はこちらをぜひご覧ください。
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