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『SaaSで無料トライアルは必要か、否か』

お世話になっております。
SaaSのことならセールスのタクミ。
代表の佐藤匠でございます。

いよいよ2月!!!寒い!!!
エンタープライズ営業にとっては勝負の月です。

なぜか?

私のエンタープライズ営業勉強会に参加した方は分かるはず。
→エンタープライズ企業の最も多い決算期は3月です!!!

エンタープライズ営業勉強会より抜粋。

つまりは、
2月は最後の年度予算の決定段階という訳で
お財布が切り替わるタイミングということです。

3月、4月の商談獲得は
最も予算が潤沢にあるため大型受注が生まれやすいです。

2月後半の展示会コンサル支援は
総勢10社近くになり、大盛況でございます。
展示会出展予定の方はぜひご相談ください。

いやー、楽しみすぎます。稼ぎまくりましょう。


今日は、永遠のテーマに終止符を打つべくこのnoteを書いております。

noteというものは不思議なもので、
乗ってる時に書かないとバズらないものです。

今、私、ノっております。ということで早速いきましょう。

今回のテーマ:
『SaaSで無料トライアルは実施すべきか、否か』


これは永遠のテーマですね。

私の1時間5万円のチケミーコンサルでも最も議題に上がる議論です。
これまで80社以上のSaaSプロダクトの立ち上げに関わってきました。
実際に50以上のプロダクトを自分自身営業として現場で売ってきました。

私よりもSaaSプロダクトをたくさん立ち上げて
実際に売っている人間はこの世に存在しない自負があります。

今日は私の全ての実体験から、この論争に決着をつけます。

もし、
少しでも参考になればいいね・拡散をお願いいたします。
100いいねで続編も執筆予定です。

いつも応援いただく方は愛しています。
それでは、参りましょう。


1:結論:無料トライアルはしない理由がない。


みなさんは人生で最も大きな買い物はなんでしょうか?
多くの方は、車・家でしょう。

車を購入される方で、試乗をしない人はいないでしょう。
マイホームを買う時には実際に住むことはできませんが
住宅展示場を見たり、3Dモデリングを見たりします。

なぜ、無料トライアルをするかと言えば
実物を購入した時に感じる実態価値
購入前の推測価値の乖離を防ぐためです。

つまり、
言い換えれば無料トライアルの意味合い
とは「実態価値測定」と呼べるでしょう。

実態価値と推測価値の乖離が大きければ大きいものほど
ユーザー側はトライアルをしなければ、自分達の
課題解決をできない可能性が上がります。


SaaSというプロダクトの性質上、
基本的には局所的なワークフローを代替するのが得意なので
なんとなく、なんでもできそうというユーザー側からすると
実態価値との乖離が起きやすいです。

また、機能的にできることと、
実際に現場が理解して運用してくれる
ことにはこれもまた大きな乖離があります。

市場感としても、
「SaaSって入れたけど使えないよね。」
「結局現場で使えなければ意味ないよね。」
という認知がかなり広まっています。

エンタープライズ企業において、
SaaS導入は3周くらいしており、
何かしら失敗経験を持っている状況です。

なのでこれまで1万商談以上やってきて感じる通りに、
多くの導入担当者はトライアルをして
実態価値測定をしたいというニーズが圧倒的に強いです。

逆にしなくて、即導入!という
パターンは後述しますが、かなり稀になっています。

引用:67.4%の経営者がSaaS製品の導入失敗を経験 3割は「何度もある」
/アイティクラウド調査 https://saleszine.jp/news/detail/4198


もちろんユーザー側にメリットがあるだけでなく、
提供するベンダー側にも大きなメリットがあります。

実際にSaaSオペレーション構築の
ご支援させていただいたSaaSプロダクトでは、
初回受注金額の向上
・受注率の増加
・商談CPAの低下
・解約率の低下
・導入1ヶ月後の満足度の上昇
など全ての数値において改善をしている傾向があります。

つまり基本的に無料トライアルをすることは
ユーザーもベンダーもWINWINの構造なはずです。

一方で、
この議論が発生するのはある特定の場合においては、
ベンダー側(プロダクト提供側)と
ユーザー側(プロダクト購入側)
で全く異なった思惑が発生し、このWINWIN構造が崩れるためです。

それぞれの思惑の前提を整理し、
例外条件を整理するとこの議論は非常に分かりやすくなります。

まずは、
それぞれの目線から改めて
無料トライアルのメリットデメリットを整理してみましょう。

2:無料トライアルのメリット・デメリット


まずは双方の目線からそれぞれの考えていること、
そこに付随したメリデメを整理しましょう。
今回は前提をSaaSにします。

SaaSとは、「安い、美味い、早い」を原則にしており、
内製化やSIerとの開発と比較しても圧倒的な
コストカット、スピードカットになります。

みなさんのSaaSへの印象は多々あると思いますが、
一旦、吉野家の牛丼だと思ってください。

吉野家の牛丼。入店5秒で出てくる。

ユーザー目線

ペルソナ
・大企業食品メーカーのDX担当者
前提
・今回初めて、現場の議事録を簡単にするSaaS導入することになった。
考えていること
・初めてだから、そもそもどんなツールがあるのか分からない。
・現場で実際に使いこなせるかも分からないから、試してみたい。
無料トライアルのメリット
・実際、自社環境でどのくらい精度で起きるのか、実態価値を計測できる。
無料トライアルデメリット
・リードタイムが伸びるので、現場にその間負荷がかかる。

ベンダー目線

ペルソナ
・議事録系のSaaS
前提
・プロダクトがかなり強く、業界では最も精度も高い。
考えていること
・無料トライアルをしてもらったら、絶対にうちが良いことがわかる。
・一方でトライアルで上手く精度が出ない場合も懸念される。
無料トライアルのメリット
・試した上で、他者との優位性が明確に分かるので受注率が安定する。
・実際に試す前よりもより良い体験が発生するのが初回TCVが増加する。
・導入後の定着率が高まる。
無料トライアルデメリット
・リードタイムが伸びるので、その分キャッシュインが遅れる。
・仮にプロダクトの優位性が担保できなかった時に失注、
 またはダウンセルの可能性が発生する。

今上記では、一般的な顧客体験のイメージを記載しました。

正直書くまでもなかったのですが、
ユーザー側からすると
トライアルするデメリットというのはリードタイムが伸びる
というただこれ1つしかなく、殆どメリットになります。

そして、
ベンダー側からすれば
初回TCVが大きくなるなど良いこと尽くしですね。

これは試食する前は
いきなりまとめ買いはしないが、
美味しくてまとめ買いをする構造に似ています。

つまりは、
順当なロジックから言えば
トライアルをしない理由がありません。

一方で、
これとはまた別議論で
トライアルをしないで受注が決まるケースや
トライアルをしないで伸ばしているプロダクト
が世の中に幾つか存在します。

SFA/CRM

この例外が存在することによって、
「あれ、トライアルってしなくてもいいんじゃない?」
「向こうのプロダクトはトライアルしなくても売れてるよ?!」
「トライアルしない方が、受注率高いんじゃないか?」

といった混乱が生じていると感じます。

なので、
次は、トライアルをしなくても受注が発生するケース。
むしろトライアルができないケースなどを整理できればと思います。

3:無料トライアルが不必要なケース


基本的にこの例外が発生する条件は、下記の2つです。
・実態価値が短期的に測定不可能な場合
・実態価値の測定よりもトライアルをしないメリットが大きい場合


無料トライアルが発生しない
ユースケースをつらつらと具体的に公開していきます。

1:ユーザーの属性軸での分岐

パターン:A(最頻出
 ⇨実際に導入するユーザーと利用ユーザーが異なる場合です。
 例)導入担当:DX推進チーム
   利用ユーザー:営業部第3部門

このケースにはトライアルしないケースが発生します。
 
全てのDX推進チームとは言いませんが、
とりあえず比較サイトから資料を10部取り寄せて
最も導入事例が多くて、有名そうなものを導入する。
 

結果的に、
全く現場では使えなく、化石と化しているSaaS。
これは大企業あるあるですね。



これはなぜ起きるのかと言えば、自分が使わないからですね。
導入にあたっては最も利便性の高いものより
導入後のレピュテーションリスクが最も低いものを入れようという
大企業のサラリーマンロジックが働くためです。

以前のnoteにも詳しく書いておりますが、

私が過去にスタートアップの初期プロダクトを販売していた時に
tier1属性の企業の方から、
かなり詳細に資本状況や、今度の事業運営の方針
などを聞かれました。
話を聞くと、「過去に発注したSaaS企業が蒸発した」とのこと。

つまり、万が一にでも発注した先のSaaSが倒産したり
情報漏洩、企業のハラスメント等が発生した時に
責任を追及されるのは検討チームというロジックになります。

だからこそエンプラ企業は
導入事例を最も重視しますし、リスクを回避する傾向にあります。

そのため、
自分達が使わない部署(別になんでもいい)
✖︎最もリスク少なそうな業界トップがある(選定に妥当なSaaSが存在する)
✖︎そこまで重要度が高くないSaaS(選択肢が複数あり、替えが効く)
 ===

この組み合わせの時は、
無料トライアルをせずに適当に
検討比較資料だけ整理して導入を進めるケースがあります。

みなさんの私生活で例えるなら、
「お母さんが自分が全く気に入らないボクサーパンツを買ってきた時。」
めっちゃ困りますよね・・・

パターン:B
 ⇨検討を進めるのが現場を知らない経営陣の場合
 例)導入は、経営陣
   利用ユーザーは、営業部門

このケースはパターンAの派生版ですが、
DXという言葉だけに踊らされている大企業ではよく発生します。

経営陣がビジョナリーにツールを選定してしまう場合です。

例えば、よく取り上げられるのがSFA/CRMの領域ですが
もちろん顧客管理ができるし、営業マンの属人化も防げて
経営陣からは現場の動きも数値で追えるという魔法なツールがあります。

これは最も現場との乖離が起きやすいツールの1つです。
こういったビジョナリーSaaSに関しては営業担当者の上手い口車か
知り合いの経営者の紹介などに乗せられて、現場の解像度がない経営陣
がトップダウンで導入してしまうケースがあります。

この場合は悲惨ですが、現場は全く必要のない運用フロー
とツールを押し付けられて無駄な業務負荷を負うことになります。
 
急に、
近所のイベントに参加してきて
健康器具を買ってくるお父さんに似ていますね。

上記2つ以外のケースに関しては、
基本的に導入担当者=ユーザー担当者
になるので自分が使いたくないものを導入する人はいないので
無料トライアルを前向きに実行してくれるケースが殆どです。

2:ユーザーの緊急度での分岐

ここまでは導入するユーザー
の属性にフォーカスしてきましたが、
緊急度というカテゴリーも別途重要な観点です。

みなさん、
LPのCVフォームには
これ絶対に入れた方が良い項目です。

導入ご検討時期
---

・1ヶ月以内🌟
・1~3ヶ月以内
・半年以内
・1年以内
・情報収集段階
---

特筆すべきは、この1ヶ月以内の部分です。

私がこれまで
80社以上のプロダクトを見てきた中で、
例えばこういったものがありました。

<市場ルールの変更>
・法的な改正があったので、すぐすぐ今期中に検討を進める必要がある。

<社内ルール、情勢の変更>
・急遽、社内ルールが変わった事によりツール導入する必要が出てきた。
・上場準備に入るので、直ぐ直ぐこのツールを導入しなければならない。

<上司の気まぐれ>
・上長が急に導入したいと命令が下って、すぐすぐ導入しなければならない
・期末予算を消化したいからとりあえず導入を進めたい。

DX担当者

こういった場合には、
もはや比較検討や、
トライアルをしている余裕がなく、
すぐすぐ導入に結びつくものがあります。

中には、
問い合わせの時点で
見積もりや契約書を要求してくるケースもあります。

直近だと、例えば
===
・上場事に従業員の勤怠情報が必要になり勤怠管理ツールを入れたり、
・セキュリティポリシーの関係上、端末管理SaaSを入れたり、
・業務委託の法改正につき、フリーランス管理SaaSを入れたり。
===

緊急性が高くて、必須な場合はみなさんも選ぶ時間はありませんよね。

コロナ禍でとりあえずPCR検査が爆発的に流行ったのに似ています。
もはや選ぶ余地なしという感じです。

この場合は無料トライアルをしたくないというよりは、
時間的制約があるせいでトライアルができないに近いですね。

3:プロダクトの柔軟性での分岐

最後はプロダクトの観点からトライアルができない場合を考えましょう。

例えば、
かの有名なSalesforce・SAPなどの
業務基幹系SaaSと言われるものは
無料トライアルがありません。

それらを言語化すれば、
実態価値測定の為のトライアルが不可能に近いです。

実際にこれらのツールに関しては社内データを入れた上で
実際に営業マンに活用してもらう必要があり、
社内セキュリティ上データが入れられないや
圧倒的に実際の成果が出るまでに時間がかかる
といった制約があります。

一方で、
定常業務を削減するような
業務削減系SaaS、効率化系SaaSにおいて
は特段そういったセキュリティ上の制約や時間的制約が殆どありません。

こういった基幹系SaaSや、
ハード連動系SaaSに関しては無料トライアルが難しいため
営業マンのデモや、関係者からのヒアリング
によって決めるケースが多いです。

そのため、こういった基幹系システム(主に外資系が多い)
に関しては営業マンが決裁に与える影響度合いが極端に多く
その営業マンの印象がそのまま実態価値予測に影響を与えます。

だから、
外資系の基幹システムを売っている営業マンは
いかにも営業が強い見た目で、ビジョナリーセールスを重視されます。


外資系の営業マンは営業が強いというのは
実は無料トライアルの有無が影響しているのです。

一般的に営業は有形商材と無形商材に分かれますが、

無形商材の中でもSaaSは
トライアル可能・トライアル不可能
といった具合に営業の難易度が大きく変わります。


ここまであげたものが私が思いつく限り、
全てユーザーがトライアルをすることを
しないという意思決定が発生する構造になります。

これ以外のユースケースに関しては
全てユーザーは実態価値と推定価値の乖離による
毀損を受けるリスクを最小限に抑えられる
無料トライアルを積極的にするというロジックになります。

ここまでの議論では、
そもそもSaaSのユーザーが実体価値を毀損しない方が良いという
ことを前提に話してきましたが、なぜそう考えるのか補足していきます。

4:SaaSビジネスの本質はLTV

SaaSビジネスには多くの指標がありますが、
詰まるところ、最も重要なのはLTVに他なりません。

LTVというのは、ライフ・タイム・バリューの略称で、
その1ユーザーが生み出してくれる総合契約金額の事を指します。

前提申し上げる通り、
SaaSというのは基本的に薄利多売のビジネスモデルになります。

月額十万円が薄利かは置いておいて、その反対側の構造である
受託開発やSIerの受注金額の数千万円と比較するとそう言える
とお考えください。

具体的に計算した方がイメージが
湧きやすいので具体的な販管費ベースで考えてみましょう。

例:TCV1億円を達成するときの販管費

パターンA(LTV1年の場合)

・単価:100,000円
・TCV:1,200,000円
・受注件数:83社
 ・必要商談数:830社(CPA3万円)
・必要販管費
 ・24,900,000円+営業人件費2人分(1,000万円)
  =34,900,000円

パターンB(LTV3年の場合) 

・単価:100,000円
・TCV:3,600,000円
・受注件数:27社
 ・必要商談数:270社(CPA3万円)
・必要販管費
 ・8,100,000円+営業人件費0.3人分(150万円)
  =9,600,000

チャーンレートを考慮すると分かりにくいので、
シンプルに販管費をベースに計算してみました。

LTVが1/3倍になると、
1億達成のためには
顧客獲得数は3倍必要な訳で
3.6倍のS&M費用
が掛かってしまいます。

対象マーケット顧客のパイも考えるのであれば、
圧倒的にLTVを伸ばす方が事業的には難易度が低い訳です。

毎年年間契約で解約されるような状況では、
販管費が膨れ上がり営業利益率を圧迫します。

引用:https://www.salesforce.com/jp/resources/articles/marketing/ltv/

それだけではなく、
・現場ではクレーム処理
・解約に次ぐ解約

で悲惨な空気感になっていることでしょう。

過去の経験上、少ないリソースの中での
クレーム処理はスタートアップにおいてかなりメンタルに来ます。

LTVを上げる方法は複数ありますが、
最もインパクトが大きいのはプロダクトの質を磨くに他なりません。

結局は食べて美味しいお店にすれば、
顧客は自動的にリピートしてくれるので、
毎回無駄な販促費用をかけなくて済む訳です。

営業努力、CS努力、契約で縛るなどは頑張って
契約期間1年間が限界です。

だからこそ本質的にはプロダクトで価値を感じてもらうことを
最も最優先に置かなければSaaSの恒久的な反映は難しいです。

もし上記の場合は
むしろ、売り切りで高単価な
受託開発のビジネスモデルをお勧めします。

ユーザーが求める仮説価値とユーザーが感じる実質価値の
マイナス乖離が少ないほどLTVは伸びますし、可能であれば
プラスの乖離で期待値を超え続けるほど自動的にLTVは伸びるでしょう。

これは単純な計算ですが、
更にSaaSから受託開発に転換してアップセルが発生したり
いい口コミが広まって、LTVが伸びる状態というのは
全ての費用が落ちて営業利益に良い影響がある状態
と言えるでしょう。

なので、
SaaSに取り組む全ての企業は
素晴らしく、感動的なプロダクトを目指す必要がある
と考えています。

UXがLTVを決めると言っても過言ではありません。
なのでプロダクトデザイナーの存在はかなり重要です。

正々堂々と無料トライアルをした方が
顧客のLTVは長く取れる傾向にあるに決まっています。

そうはいっても、
これを読んでいる皆様は
無料トライアルを実施するか迷っているに違いありません。

なぜかといえば、それはプロダクトクオリティが完璧ではないからです。

これまでは理想像のみを書いてきましたが、
実際のスタートアップではこのようなロジックは夢物語です。

では、そんな中でどういったトライアル戦略を設けるのが良いでしょうか?

5:プロダクトが未完成の場合にスタートアップのとるべき戦略


私は、これまで80社という膨大な数の
スタートアップSaaSの立ち上げに関わってきました。

その関わり方も、
実際に商品設計から、
営業業務まで踏み込むことが多く
国内でも私よりPMFの場数を現場で
踏んでいる人間はいないと自負しています。

そんな私がスタートアップにいて最もよく面するのは

「プロダクトが未完成なために、トライアルをすると受注率が落ちる」

この現実です。
私がこれまで4章まで述べてきたのは、事実に違いないです。

一方で、現実問題スタートアップ企業の前提を考えると

・プロダクトはガタガタ
・機能も最低限。
・エラーも多数。
・権限周りの設定もない。
・UI、UXもこれから作り込む。
・セキュリティ部分も担保できていない。


このような状況が殆どというか、全てなのではないでしょうか?

ラーメン屋で言えば、
まだ完全にメニューも店舗も商品も完成して
いない状態でお店をOPENするようなものです。

この議論に近いところで、
プロダクトの完成・未完成に関わらずトライアルをすると
単純に温度感が下がって、受注率が下がるのではないか?
という人もいますが、私はそれは間違いだと考えます。

どちらかというと、その場合はプロダクトではなく
トライアルのオンボーディングフローに課題があります。

例えば、
・トライアルがやりっぱなしになっている
・そもそもオンボーディングしていない
・adminで顧客の利用率を可視化する方法がない
etc…

一旦、
本論に戻りますが、
殆どのこのテーマに関して悩む経営者の方は自社の
プロダクトにまだ自信が持てていない状態かと思います。

この場合の受注戦略に関しては
大きく2種類のパターンがあると考えます。

A:キャッシュフローギリギリ!炎上より売上!攻めの経営スタイル!

→トライアルをしないで販売する。
実際にこれで伸ばしているSaaSも市場に多く存在します。

もちろん満足はしていないが、
一度入れたSaaSを解約するというのも
実はあまり発生しにくいというのがSaaSの凄まじい特性になります。

もちろん月額が30万円を超えるようなラインになると
経費削減等のラインに入りますが、

例えば5〜10万円のSaaSだとそもそも忘れられていて
お金が払い続けられているといった構造もよく耳にします。

このケースは最近SaaS導入を可視化するSaaSが
出てきたことによってもしかすると少なくなっていくかもしれません。

とはいえ、
ビジョナリーにマーケや営業だけを作り込んで
受注を作っていくということも可能です。

実際に顧客がプロダクトを触るのはトライアルの期間を除けば
受注した後のみになるので、仮にUXがガタガタでも
受注率には影響しません。

一方で明確に、
チャーンレートの高まりや、クレームの発生など
カスタマーサクセス、サポートチームにストレスが集中して
チームが病んでいくのはよく見る光景であります。

この異様なストレスに耐えながら、
事業を継続するのはかなりストレス負荷の高い事業運営になります。

日本のエンタープライズマーケットのリテラシーは限りなく低いので
ツールを導入するのでも精一杯ですが、そのツールを使いこなそう
という気力は殆どないです。

だから明らかなUXの悪いプロダクトでも営業力で売れてしまうのが
悲しくも起きているSaaSビジネスの事実ではあります。
だが、こちらは修羅の道です。

B:理想的な安定した経営スタイル

トライアルをβ版として提供しつつ、プロダクト改善を行う。

私のおすすめは、もちろんこちらの方です。
顧客を裏切るような売り方では、遅かれ早かれ、
LTVが伸びずに全てのコストが上がっていくでしょう。

そもそもプロダクトの質が全てなのを前提に考えれば
トライアルをしながら顧客FBを最速でプロダクトに反映していく
方が長期的に見れば収益の観点からも、組織的にも健全に他なりません。

一方でこの場合は必ず、
β版として、エラーや、何かしらの不足が
あることを前提に顧客に提供することをお勧めします。

いわゆる、訳あり商品に近い形ですが、
トレードオフとして、値段を安くしたり、無料期間を長くするなどの
方法があります。顧客側としてもエラーを隠されて、
仮説価値と実態価値の乖離が発生させることなく取引ができます。

これは寧ろ、信頼につながると言えるでしょう。
いち早くβ版として顧客FBを反映しながら、

本質的にはトライアルを行った方が受注率も単価も上がる
プロダクトに仕上げましょう。

6、トライアルを設ける以外にも大きいメリット

「マーケティングフローの簡略化」

これまで記載してきたのは、
金銭的なメリットを多く書いてきました。

実はそれ以外にも無料トライアル
を設けることは莫大なメリット
があります。

それが、
マーケティングフローの圧倒的な作りやすさにあります。
基本的に無料トライアルありと、無料トライアルなしの場合に
何が最も差が出るかといえば、商談CPAになります。

最終的にはCACに反映されますが、
私の実感値で大体3~5倍くらいの差が出ます。

圧倒的に人間というのは無料という言葉に弱いです。
「タダより、高いものはない」と昔の人はいったのはまさにその通りです。

また、商談CPA以外にも
営業フローが圧倒的に作りやすくなるというメリットがあります。
大前提SaaSの営業フローというのは基本的には工場モデルに近いです。

THE MODELの通りに、分業して、各転換率や、
コストを最適化していくという、機械的な改善が必要になります。

そういった中で、
商談1件1件に対して頑張って営業力で提案をする
モデルというのはかなり組織負荷が高すぎます。

営業経験者で無ければ、構築が難しいです。
一方で無料トライアルを中間CVに置くことによって、
圧倒的な営業スキルの基準を下げることができます。

これに関しては、
いきなり検討を前に進めてもらうには
外資系の営業マンレベルのビジョナリーな提案や
かなりの上手い口頭営業術が必要です。

一方で、「無料でまずはトライアルしてみてください。」
話はその後で・・・という営業であれば、
営業未経験社でも1週間もあれば
簡単にオンボーディングさせることができます。

こうなると、
年収800~1,200万クラスの経験者の必要がなくなり
インターン生でも商談を回すことが実際にできるようになっています。

私のクライアント様では基本的に
この無料トライアルモデルを採用することによって
圧倒的な採用単価の低下、学生でも商談化率や、
受注率を一定に保つことに成功しています。

プロダクトドリブン経営 にすることによって、
人材のスキルレベルの影響を限りなく受けにくくすることができます。

「カスタマーサクセスコストの低下」

これは当然ですが、既にトライアルを実行しており、
アカウント環境にもログインしているため、殆どCSコストがかかりません。

営業からCSへの引き継ぎも主に握りの部分のみで、
アカウント発行やオンボーディングなどは既に
終わっている状況になります。

圧倒的なCSの省力化ができますし、
もちろん期待値の乖離が少ないのでクレームも発生しません。

導入期での満足度が高いと明確に解約率の低下にも繋がります。
本当にリソースの限られるスタートアップではいいこと尽くしですね。

7、補足(事前FBであった質問)

・有償PoCと無料トライアルどちらがおすすめか?
 →基本的にお金を払ったから、使ってくれると考えている人がいますが
  そんなことはないです。結局使える使えないは食べれば分かります。
  有償にすれば必ずリードタイムが伸びるので、基本は無料トライアル
  でまずは実施、もう少し試したい場合はPoCを案内するのが
  最もおすすめです。
SaaSの安い単価でPoCの費用もらったところで
  収益インパクトが少ないので、本導入をゴールにするならば
  即無料トライアルが最も効率的なのです!!


・無料トライアルを担当者が真面目に取り組まない問題
 →これは無料だから、有料だからという議論ではなくて
  そもそも前提課題感があるかという観点が需要ですね。
  どれだけ美味しいフレンチでもお腹が減ってない人に
  食べさせるのは難しいです。 
  ターゲットリストを見直す方が本質的ですね。


ということで、いかがでしたでしょうか?
結論は無料トライアルは必ず実施した方が良いのですが、
例外として、
実施できないケース・プロダクトや
しなくても決まるケースがあります。

またプロダクトのクオリティが低い場合は、
無料トライアルをした方が受注率が下がってしまうため
スタートアップ企業に関しては何を優先するかを考える必要があります。

私の考えとしては、
絶対的に無料トライアル
運用を圧倒的に推します。

ということで、
このnoteが100いいねを超えたら

次回、続きの具体的にどのように運用していくべきかの
noteを書こうと思います。
ぜひ色々とご意見いただけると嬉しいです。

次回のあらすじ

8、理想的なトライアルからの転換率
9、無料トライアルの理想的な設計
10、よく陥る無料トライアルの失敗と対策
11、無料トライアルの契約書は巻くべき?
12、無料トライアルのセキュリティチェック
13、adminで開発すべきトライアルの管理機能と営業回避の方法
14、トライアルを使ったCPAを圧倒的に下げるマーケの方法

最後に、告知

私が開催するエンタープライズ勉強会が来週開催されます。

累計80名の方が参加されたコンテンツになり

今回で最終回とさせていただきます。

残り限定4枠なので、ぜひ体系的に学びたい方はご参加ください。


次回、
佐藤コンサルチケットは3月に発売予定です。
急ぎでご相談がある方はHPよりお問い合わせくださいませ。


今回もご拝読ありがとうございました!
ぜひ、シェア・感想・いいねをよろしくお願いします!


・過去作品はこちらから。


いつもご拝読ありがとうございます。 皆様のいいねと、Twitterでの拡散が最も重要です。 私の時間を削っても皆さんに 貴重な情報が届けられればと思いますので 何卒、拡散のご協力をお願いいたします。