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アベプラの『教育困難校』についての議論をみて思うこと

こんにちは。カナダの高校で現役数学教師をしている梅木卓也です。今日は最近見かけたアベマプライムの教育困難校やインクルーシブ教育についての動画を見て思ったことについて書いてみたいと思います。カナダのインクルーシブ教育に触れて早15年以上、日本の教育関係者やメディアにかかわる人が驚くべき程無知で無教養でバイアスまみれになってるかがあまりにも見えてしまいました。以下のリンクから本編を見てください。

【教育困難校】授業が成立しない?児童生徒に合わせた教育とは?境界知能&グレーゾーンが広がる?現役教師と考える|アベプラ (youtube.com)

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バイアス1:境界知能にいること=学力の遅れを混同する

番組のタイトルに『教育困難校』とあるにもかかわらず、なぜか番組の冒頭から境界知能についての話がありました。ちなみに境界知能とは知能指数(IQ)の分布において「平均知能とされる部分」と「知的障碍とされる部分」との境界に位置することらしいです。

番組から

この話が合った後に、さもそこに因果関係があるようにIQが低い生徒が教育困難校にはやはり多いのではというバイアスをもったままアナウンサーが話し続けます。

授業についていけない、問題行動をたくさん起こす。その裏には番組冒頭から話されたIQとの関係性や発達障害を持った生徒が多いからというバイアス、もうここまで行くとはっきりとした偏見、差別です。

そもそもIQテストなどという一つの指標をもとに議論を一辺倒に話し続ける出演者の教養も疑いますが、そもそも一人一人の生徒を見ずになぜ学習に困難をきたすのか、なぜ問題行動が起こるのか、そこまでの知能は回らないようです。

バイアス2:子供達に必要なのは教育なのか支援なのかというずれた問い

これも番組冒頭から発せられた議題の一つでした。番組全体を通して、教育するということと(特別)支援することを頭の中で完全に分けて話している出演者ばかりでした。

本来生徒が学ばなければ教育ではないのです。ただ教え込むことはよくてただ覚えこむことでしかなく、そんな知識はすぐに忘れ、使い物になりません。ただ教え込むことが教育で、その枠からはずれてしまった生徒は支援するという発想がどうも固定観念としてあるようで、本来の学ぶことの根幹である「自分の頭で主体的に考える」ということができない方ばかりが集まって教育を語るという茶番を繰り広げていました。

バイアス3:教育困難校はヤンキーが多い

そんな方ばかりが集まって話していたので、アナウンサーの一人は番組全体を通して無知と自分のバイアスを俯瞰できないようで、「教育困難校はヤンキーが多いと思っていました」などと発言。

バイアス4:「勉強すること」への崇拝

また番組全体を通して勉強をする、基礎学力を身に着ける、大学に行くなどかなり狭い意味での「学ぶ」ということがいかに大事かと熱弁する朦朧アナウンサーもいました。

インクルーシブ教育について話されていたゲストの方は、本来の「好き」を探す場所が学校、狭く高い枠を設けるとそれについていけない生徒は勉強ができない、学べないと早々に勘違いをする傾向があり、またそれによって自己肯定感が下がると指摘。

生徒視点でより学びたいと思う教育を提供するか、教科内容重視で人を置いてきぼりにした教育を提供するか、どちらのほうが生涯学習者を体現できるかは明白です。

インクルーシブ教育のゲストの方は続けて、学習の環境として例えば、ADHDをもつ生徒にバランスボールや心を落ち着かせるクールダウンの部屋を提供するなどしてより学びやすい環境整備をすることが大事だとも話されていました。

このような発言に対して、やはり学力が大事だと言いながら思考が完全に停止している出演者は、このような話はあくまで支援学級や支援学校のみの話であくまで現状の教育困難校をどうするか考えていかないといけないとまた意味不明な発言。

頭の中で、どうして教育困難校も環境整備を整えることでより多くの生徒が学びやすくなるという発想が働かないのか。彼らの言う「学力」がいかに薄っぺらいものであるかは番組を通して十分に伝わりました。

それぞれの得意を伸ばして苦手を支援するが、なぜか勉強は二の次、学力は大事ではないと解釈してしまうようで、やはり社会性の乏しい、また思考力の低い人が勉強だけして大人になると聞く力や想像する力が乏しくなるのだなあと思いました。

まとめ

全体を通してちぐはぐな発言が続きました。あくまで出演者のなかで刷り込まれた学力崇拝があるようで、人をどう社会に適応させるかといった発言が相次ぎました。社会が人を許容する、人に寛容になるという方向性の転換なしには、いつまでたっても今回の出演者のように、一部の人にしか通じない狭い「勉強」という枠を無理やりはめようとすることをやめないでしょう。

だから番組後半にもあるアナウンサーは「グレーゾーンの生徒をどう教育していくべきか」といった問いを発していました。正しい問いは、社会がグレーゾーンの生徒をどうサポートしていくか。このマインドのシフトが訪れない限り、日本の迷走は続くしグレーゾーンが過去数年で10倍になったなどという本末転倒なことを言い続けるでしょう。

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